話は戻り、注目は敵のほうに。
「ふむ――そう粋がるでないぞ。
そもそも貴様からは魔力というものをほとんど感じられぬ、
たとえ僅かな寿命とはいえ、あえて自ら縮めるような真似をすることもなかろうに――」
と、敵はイールアーズに向かって言った、なんだかどこかで聞いたようなセリフだった。
あのドメイナスと同じく人型のようではあるがあいつとは異なり、魔法使いのような風貌をしていた。
するとイールアーズが何かを言い返そうとするところを遮ってクラフォードが言った。
「なんでもいいが、貴様もインフェリア・デザイアとかいうやつなのか?」
それには敵も反応した。
「なんで貴様がその言葉を知っているのか?
貴様らには無用の言葉、覚えておく必要はなかろうに……」
すると敵は考えながら言った。
「ふむ――そうだった、貴様らは既にゼロ・ブレンダルとドメイナスを破ったのだったな、
貴様らのようなイミテーションごときに何故そのような真似ができたのかが不思議だが――」
すると敵はリファリウスとアリエーラさんのいるほうへと目をやった。
「なんだお前たちは? 貴様らはここにいるイミテーションどもとはまったく違うものを感じる、どういうことだ?」
それに対してガルヴィスが言った。
「んだよ、俺もイミテーションか?」
敵は反応した。
「何っ!? これはどうなっているというのだ!?
何故だ!? 何故、このイミテーションの中に本物が混ざっているのだ!?」
今度はリファリウスが立ちはだかった。
「ふっ、どうやら理解が早いようで安心したよ。
僅かな寿命の間に一つでも多くのことを学ぶことができたんだ、
まさに生涯をまっとうしたと言えるね!」
そう、これが本物である。
「なるほど、確かにこの世界を復旧しようというだけのことはある、
いいだろう、そういうことならこちらもそれ相応の礼節を以て相手をしてやろう!」
すると、敵はいきなりトランス・フォームをし、まさに異形の存在へと変化した!
「我が名はゼドラス! この忌まわしきイミテーションを粛清せし者!
我が魔力に挑まんとする愚かなる者どもよ! 命を賭してかかってくるのだ!」
ゼドラスは闇に染まったその身体にとてつもない魔力を集中させ、襲い掛かってきた!
ゼドラスの魔力に対して一行は応戦中!
「ただでさえそのインなんたら空間でエーテル強化が働いているのに、
この魔力を凌いでの戦いってのはかなりつらいな――」
ティレックスはエーテルバリアを盾にしながらそう言った。
そのバリアを張っているのはカイトである。
「確かにつらいな、エンブリアで戦った相手の中でも相当の部類だな、これは。
ティレックス君、キミはとにかく例の技をぶっぱなすように力を集中するんだ」
しかしティレックスは――
「やりたいのは山々だけど、残念ながらまだ実用には至らないんだ。
というかカイトこそ”ネームレス”だろ? 高名な賢者様の妙案に期待したいところだ」
そう答えるとカイトは言った。
「うーん、やりたいのは山々だけど相手が強すぎる。
だけど攻撃パターンとしては一瞬のスキが突ける、それしかないね」
それがわかっているんだったらやればいいだろ! ティレックスはそう言うと、
「残念だけどそれを突くのは私ではない、ほかの誰かだ。
とりあえず期待して待っているしかないね」
なんなんだこいつは。まったく。
ゼドラスの魔力は衰えることを知らなかった。
「どうだ、どうした? エンブリアを復旧していくのではなかったのか?
この程度の攻撃に耐えられぬようなら貴様らの命もこれまでのようだな!」
ゼドラスは黒い気を結集し、前方に向けて再び爆散!
「ぐわぁっ! くそっ、好き放題魔法ばかり打ちやがって!」
イールアーズは虫の息だった。
「どう考えても好き放題魔法ばかり打つに決まっているだろ、さっきの話聞いてなかったのかあいつ……」
クラフォードは膝をつきながらも呆れたようにそう言い捨てた。
「でも、このままだとジリ貧ですね、魔法バリアを張りなおしましょうか――」
ディスティア様はそう訊くとクラフォードは悩んでいた。
「まあ、それしかないよな。
ただ……張りなおすにしても全然持たないようだが、あいつの魔法威力のせいか?」
するとディスティア様はゼドラスの行動を見つつ、そしてとある行動をした時に指をさして言った。
「あれですね――」
「ん? なんだ?」
ゼドラスは黒い気を結集し、今度はそれを膨張させるとそれを解放させた!
「うぐっ! また力が奪われていく、なんなんだこれは――」
ディスティア様は言った。
「あの魔法は火力こそ控えめですが、解呪効果が含まれていますね、
先ほどの爆散魔法を直撃させるためにちょくちょく打ってきます、これは流石につらいですね――」
「解呪……面倒なことをしてくるやつだな――」
さらにゼドラスの魔法攻撃は続く。
「アリエーラさん、大丈夫?」
リファリウスも膝をつきながら言った。
「さすがにつらいです、これほどの使い手、エンブリアにはいません――。
私もリファリウスさんも魔法に強いはずですがちょっと油断していましたね――」
リファリウスは悩んでいた。
「定期的に解呪も打ってくるけど、私らの魔力だとそう簡単には剥がされないようだ。
と言ってもあの威力では向こうのほうが圧倒的に分がある、
おそらく魔法専従なんだろう――この空間の効果も合わさって厄介なことこの上ない。
このままだと例え私らだけ無事だとしても他が全滅してしまう、
そうなると――今度は私らを排除するために全力でトドメを刺しに来るハズだ、ジリ貧だね――。
だからできればスキをついて相手の力をドローする術でもあればいいんだけど、ここまで攻撃が激しいと付け入るスキもないな――」
アリエーラさんは頷いた。
「あくまで一時的に奪うだけの技ですからね、恒久的ではない以上、対策にはならないことでしょうし、
この空間では結局何をしても向こうに分があります、厳しいですね――」
するとリファリウスは考えていた。
「ん、待てよ? そうか、解呪呪文打ってくるのか――」
アリエーラさんは訊いた。
「何か妙案でも?」
リファリウスは悩みながら答えた。
「もしかしたら以前に開発した例の魔法がここで大活躍してくれるかもしれない。
それを踏まえてやろうとしている手段はこういうものを考えている。
そのうえでアリエーラさんにはやってもらいたいことがあるんだけど、頼めるかな?」
アリエーラさんはリファリウスの意識をくみ取っていた、すると――
「なるほどです、確かにその試みに賭けてみるのがいいかもしれませんね。
それなら、やってみましょうか――」
何をする気だろうか。