一行は中へと入ると、そこは黒く闇に閉ざされた空間だった。
「ふーん、これは……また面倒な空間に放り込まれたもんだね――」
リファリウスはそう言った。
「ただのこけおどし、さっさと倒してさっさと行くぞ」
ガルヴィスはそう言うとリファリウスは呆れていた。だが、ヒュウガも何やら違和感を覚えていた。
「どうしたんだ?」
シャディアスが訊くとカイトが答えた。
「これは厄介だね、特に矢面になっているあの2人については心配そのものだ」
えっ、どういうことだよ? そう言っていると奥から何かが現れた、黒い影のようなよくわからない物体が――
「おっと、おいでなすったようだな」
クラフォードはそう言って剣を構えると、リファリウスは注意を促した。
「や、待った! あれは本体じゃない!」
すると、同じような黒い影が続々と現れた――
「雑魚がいくら来たって同じこと! 一度にやってやるぜ!」
ガルヴィスは調子良さそうにそう言って剣を構えていた。
「へっ、遊び相手がいないもんでちょうどムシャクシャところだ、苦しまないように一度にたたんでやるぜ!」
イールアーズも調子良さそうにそう言って剣を構えていた。
戦いが始まった、無数の敵相手に一行は衝突した。だが――
「くっ! 硬ぇっ! 何がどうなっているんだこいつら!」
と、ガルヴィス――全く歯が立たなかった。
「ちっ! なんなんだこいつらは! ふざけやがって!」
イールアーズはキレ気味にそう言った。
「リファリウス、やれ!」
ガルヴィスはそう促すがリファリウスも――
「いや、残念だがこれは相当にキツイな、なんといっても攻撃がうまく決まらない。
まあ、つまりはそれ相応の理由があるわけだけど――」
「理由ってなんだ!」
ロッカクが叫びながら言うとシエーナが答えた。
「これは”イン・スピリチュアル・フィールド”ですね。
こんな高尚なフィールドの使い手、なかなかいませんよ」
いや、でなくてそれが何なんだ、ガルヴィスらはそう訊くとリファリウスがロッカクの肩を叩いて言った。
「やっぱりそうか、そうだと思った。
ということはつまりはそう言うこと、私の力を使うのもいいけどせっかくの機会だし、
試運転がてらその剣でキミの真の力を開放してみてはどうだろう?」
そう言われてロッカクはピンと来た。
「なるほど! そう言う空間か! だったら話は早いぜ!」
何が始まるのだろうか? するとロッカクはその大きな剣を改めて両手で構えると、力をため始めた。
「はあああああ!」
強烈な闘気が、ロッカクを包み込む! そして――
「いくぜ! くらえ!」
ロッカクは敵に襲い掛かった! 剣は鈍く、うまく刺さらなかったが――
「おおおお!」
しかし、ロッカクはそのまま敵めがけて乱舞を放った! 結果は変わらないのだが――
「ん、なんだ? ロッカクの剣から何かが――」
ロッカクの剣には何やらものすごいパワーが集中していた。
「遠心力で魔力を絞り出しているようだな。
普通にそのまま剣に魔力を込めるのもいいがあのガタイであの得物だからな、
力任せに放出したほうがより効率よくダメージも与えられるようだな」
魔力だって!? でも、魔力と言っても――
「あいつ、魔法を使うのはヘタクソだぞ? それで魔力って――
第一、魔法を使っているようなイメージも全然ないし――」
ティレックスはそう言った。確かにこれで魔法使いとかイメージに反する。
それに対してリファリウスは答えた。
「確かに、彼はそれを魔法として行使するのが苦手なようだね。
しかし彼自身はそれに対して高い魔力を備えている、つまりはただの魔力タンクでしかないと言いたいところだけれども――」
ヒュウガは頷いた。
「あいつ、わざわざエンチャント素材が組まれた武器を使っていたけれどもそういう意図だったんだな。
普通の重剣士だったらそんなことしなくたって普通の剣を持ってりゃいいと思うんだが自分の魔力を利用するためにあえてそういう武器を選んでいるんだな」
今回、リファリウスに新たに武器の作成を依頼していた、アリヴァール製の大剣である。
しかし、今回は切れ味を求めず、まるで鈍器のような切れ味のない代物としてオーダーしていた。
別に切れ味があったってかまわないわけだが、今回はリファリウスの事情を考えてのことだった。
だが、彼の腕力からすればそんな鈍器でも十分な破壊力が出る、それが得物で殴る際のコンセプトである。
が、それとは別に、内部に500mlペットボトルほどのエンチャント素材が芯の中に内蔵されており、
それに加えてアリヴァール・メタルという元々エンチャント素材が含まれる鉱石を使用したことにより、
より彼の魔力が”入っていく”のである。
すると次の瞬間! ロッカクの剣から無数の魔力があふれ出てきた!
「行くぜ!」
その剣を勢いよく振り切ると魔力は無数に飛び出し、周囲の敵をまとめて脅かしていった!
「どんなもんだ!」
「こっ、これがロッカクの真の能力か――」
敵は一度に滅び去っていた、一同、愕然としていたのである。
「ロッカクの力はわかったが、その――イン……なんだ?」
クラフォードはそう言うとガルヴィスが言った。
「要は物理攻撃減衰フィールドだろ、魔法しか有効じゃないってあれだろ、面倒なところに放り込まれたもんだ」
リファリウスは首を振った。
「”イン・スピリチュアル・フィールド”ね、
それに、正確には物理攻撃減衰”兼”エーテル攻撃増大フィールドだ。」
そう言われてクラフォードが驚いていた。
「エーテル増大!? 魔法の力が強化されるのか!?」
リファリウスは頷いた。
「”イン・スピリチュアル・フィールド”というのはそういうものだからね。
そのせいか見ての通り、今のロッカクの攻撃のせいでほとんどの敵が消え失せた、
エーテル攻撃がその分だけ刺さったことを意味している。
いずれにせよ、今回は魔法の使い手でないとちょっと厳しい戦いになりそうだね。」
「てか、魔法が使えなければ役立たずってことになりそうだ――」
ヒュウガはぼそっとそう言った。すると――
「これは面白い。
エンブリスの手の者にこれほどのエーテルの使い手がいるとは実に驚きだ」
……この空間の主らしき者が奥から現れた。
「ほう、テメーがここの主ってわけか、んなくだらねぇことしてないでさっさときやがれよ」
イールアーズはニヤっとしながらそう言った。それに対してクラフォードは考えながら話した。
「あのさ、それこそイールはまったく魔法を使っている光景を見ないんだが。あいつ、大丈夫か?」
ディスティア様は頭を抱えながら言った。
「大丈夫も何も、あいつはたとえどのような状況であろうとも、自分の力一本で倒すことしか考えていません。
当然、魔法なんてのは彼にとってはガラクタ程度の存在でしかなく、
魔法しかダメと言われても知ったこっちゃない、そういう人間だから何を言ってもムダです――」
クラフォードも頭を抱えていた。
「あいつ……よくそんなんで今の今まで生きてこれたもんだ」
「まあ、周囲に優秀な人がいるのでね、例えば私とか。」
「……優秀な人か、そう言えば俺もいたな」
2人はリファリウスの影響をもろにうけていた。