スクエアの祠もやはり5つの某シンボルをそろえて行けばどこぞの精霊様の守りが得られそうな感じの島だった。
いや、島というよりは突如として海のど真ん中に現れた地下への階段、異様な光景でしかないのだが。
「こんな地下への階段、よくもまあ海の水が中に入らないもんだとは思うが、
やっぱり魔法で作られた空間ってところがそうさせているってわけか」
クラフォードはそう言うとアリエーラさんが答えた。
「そのようですね、アリヴァールの時にお話させていただいた通りということです。
ですが……この祠、一体スクエアのどのあたりなのでしょう?」
それについては今回同行しているデュシアが答えた。
「随分前にスクエアでお化け屋敷の仕事をしたのを覚えている?」
アリエーラさんは覚えていた、あれは幻獣エステリトスの件だった。
しかも、あの仕事こそがまさにデュシアと一緒にやったハンターの仕事で一番最初の仕事でもあった。
デュシアは話を続けた。
「入り口はその近くだが、もしかしてこの場所っていうのは実際のスクエアのその場所とリンクしているのかい?」
リファリウスは頷いた。
「どうやらそうみたいですね。
でも、そのおかげかはわからないけど、これまで不明だったアリヴァールの場所もフェアリシアの場所も特定できた、
入り口から出てきてわかったとか不思議な感じでしかないけれども。」
確かに本来なら場所を特定してから入るものである。リファリウスは続けた。
「フェアリシアはやっぱり迷いの森の中で、アリヴァールはそもそも特殊な土地柄というだけあってか、
普通なら見つけられないような仕組みになっていた。」
デュシアは頷いた。
「精霊族ね、エンブリアじゃあ珍しいよね。
精霊族由来の種族っていうのはそれなりにいるけれども、それでもごく少数さ」
精霊族由来の種族? シャディアスは訊いた。
「精霊族とは違うのか?」
ヒュウガが答えた。
「全然違う。
精霊族由来っていうだけで精霊族の血は含まれてはいるものの、あくまで人間族とかいった感じだ。
あのシャナンとかがそうだな、精霊族の血が濃いが、実際には人間の血のほうが濃いから人間族、
つまりは精霊族由来の人間族ってところだ。
そう言ったことで、人一人とっても先祖にいろんな種族が絡んでいる場合もあるからな、この世界は。
だから混血の場合はシャナンの例のように、基本的には一番血が濃いものを代表にして何族というのかを決めるわけだが、
いくら精霊の血が濃いと言ってもシャナンは人間族の性質のほうが濃い――という感じで間違いなさそうだから、
その人の種族の決め方自体もそのやり方で定着しているってわけだ」
反対に、リファリウスやアリエーラさんは精霊族って呼び方をしているが、これはつまり――
「まあ、そういうことさ。
私らは精霊族の血統約77%だから大半が精霊族の血、つまりは精霊族に分類される種族というわけだ。
はて? これっていつ調べたんだっけ? 思い出せないから多分こっちに来る前だと思うけれども、
どうやらそう言うことらしい。」
またずいぶんと濃い精霊の血が流れているんだな、それこそ珍しいかもしれない。
「俺らバラトール人は人間族43%で精霊族22%、残りは魔族って分布なのが特徴なんだが、
精霊だけで50%を割るとは――結構珍しい存在なんだな」
エンブリアでは横並び気味なのがほとんどか、もしくは人間族の血が突出しているのいずれかの例しかないみたいで、
リファリウスやアリエーラさんなんかは珍しいタイプなんだそうだ。
リファリウスは頷いた。
「らしいね。
あのアリヴァールの件だけれども、結局精霊族の血統50%超ぐらいの人でないとあの現象は起こらなかった。
それだけあって、つまりはやっぱりあの土地はそれだけに特殊な土地だったということだね。」
そろそろ飽きてきた人もいるので本題に戻ろうか。
「ふぅむ、ただの洞窟の入り口だ。
スクエアは重要視されている土地だけど、祠に関しては他と一緒ということか」
カイトはそう言うとガルヴィスが言った。
「面倒なのはアリヴァールだけでいい、
あそこは寄り道するハメになったからな、行けるんだったらさっさと行くに越したことはない」
確かにその通りだが。
さらに一行は洞窟の中へと進むと――
「なんか異様な空気が漂ってきたな、まさか、インフェリア・デザイアってのが待ち構えているのだろうか」
イールアーズはそう言った。それに対してガルヴィスが言った。
「フェアリシアではドメイナスってのがいたって訊いたな、
向こうも俺らが巻き返してきているから焦っているんじゃねえのか」
リファリウスは頷いた。
「多分そうだろうね。
言ってしまえば私らがしようとしている行為は間違いないことの裏付けになっている、
最終的にイーガネスのもとにたどり着くのも時間の問題ってワケだ。」
時間の問題か、確かに既に第3都市の祠、残すは第2都市と第1都市、ゴールも近い。
「その前にいろいろと課題はあるが、それを差し置いてもってわけだな。
でも、その分試練もより厳しいものになってくるから気を引き締めて行けってことか、そのイーガネスってやつが刺客を差し向けてきているわけだからな」
クラフォードがそう言って話題を一旦締めた。
だがそのまま進んでいると、途中で何やら黒い霧のようなものが通路いっぱいに広がっており、行く手を阻んでいた。
「なんだこれは? 試練か?」
イールアーズが言うとリファリウスがそれを調べた。
「いや、これは恐らくだけど、イーガネスの刺客の仕業だ。」
「けっ、面倒なことをしやがる。おいリファリウス、その光の玉で薙ぎ払っちまえよ」
灯りとして発動しているその玉、ガルヴィスはそう言うとリファリウスは首を振った。
「いや、どうやらこの中で決着をつけたいらしい。
この中は亜空間、やつはこの中にいる――斃さないことには先に進めそうにないな。」
ガルヴィスは背中の剣に手をかけて言った。
「ほう、そういうことか、上等だ。
だったらすぐにでも決着をつけてやる」
そう言うとガルヴィスはさっさとその黒い霧の中へと入って行った。
それに続きイールアーズも入って行った。
「インフェリア・デザイア、俺の出番がきたようだな――」
それに対してクラフォードが頭を抱えながら言った。
「お前なあ、それを言って勝てたためしがないだろ――」
そう言えばそうだった。