そして、いよいよセラフ・リスタート計画も大詰めを迎えることになる。
次のターゲットは何と言ってもセラフィック・ランドの中心都市であるあの町だからである。
「次はセラフィック・ランドの第3都市にしてセラフィック・ランドの中枢ともいえる経済都市スクエア!
つまり、この町を解放するということはセラフィック・ランドの機能が復活するということ!
やることは今までと何も変わらないとはいってもエンブリアにとってはとても重要なミッションだ!
だからみんな、心してかかるように!」
と、リファリウスが宣言した。
というのはやはりというべきか、セラフィック・ランドのお偉いさんたちが直接クラウディアスに来ており、
さらにはほかの国の一部のお偉いさんもリモートで参加しているため、
リファリウス主導で会議が決起集会みたいな感じになっていたのである。
そんな様子に誰しもがビビっていた。
「これは――やばいな……」
「大変なことになったな――」
「ああ、まさにエンブリアの中心地だからな、そうなるとお偉いさんだけでなく、世界中の誰しもが注目することになる」
「責任重大だぜ――」
ティレックス、ガルヴィス、クラフォード、そしてシャディアスがそう言っていた。
大袈裟かもしれないが、状況が状況なだけに仕方がないだろう。
そして――その夜。
「いよいよですね、リファリウスさん、フィリスさん――」
いつものテラスにて、アリエーラさんが2人の背中に向かってそう言った。
2人はテラスから見下ろしていた。
「アリエーラさん……ついにこの日が来たようだ。
やっと、やっと、あの日に忘れていったものを取り返す時が来たんだ――」
取り返す? その時、ちょうどティレックスが居合わせていた、聞きたいことがあったからである。
だが、なんだかそういう雰囲気でもなさそうである、ティレックスはじっと様子を見ていた。
「そうだね、やったこの時がきたんだよね、私も迂闊だったな――」
と、フィリスも言う。
そういえば思い出した、スクエアと言えばリリアリスが何やら大事なものを忘れていったということだ。
具体的にはマダム・ダルジャン号の構成ユニットのひとつ、
”リビング・ルーム・ユニット”というのがあり、そのユニットごとスクエアに忘れてきたのだということである。
意思がリリアリスとリファリウスとでシンクロしているがゆえに、この件で悩んでいることも共通なんだろう、ティレックスはそう思った。
だけど、フィリスも同じことで思い悩んでいるのか、相当の問題らしいな。
ティレックスは意を決してリファリウスの元へとやってきた。
「ん、どうしたの?」
リファリウスはなんだか晴れやかな顔で訊いた。
「これなんだけど――」
ティレックスは例の資源の取り扱いについて、リファリウスに訊きに来たのである。
その中でも――
「わざわざこんな時間に訊きに来るとは――なるほど、不正流出の可能性があったから直接伝えに来たというわけか」
フィリスがそう言うとティレックスは難しい顔で答えた。
「今じゃあアルディアス側でも緊急招集がかかっている事案で、向こうでは関係各所で大パニックだ。
とりあえず、どうすべきかは大体わかっているつもりだがクラウディアス特別執行官様にもお話を伺いたいということだそうだ。
時間的にも遅いから無理なら後日でもいいとか言ってたが、
明日はスクエア編が控えているし、リリアさんは部品が足りなくて素材を集めに行ってて連絡が取れないみたいだしな、
だから今のうちに訊いておこうと思って――」
するとリファリウスは悩んでいた。
「なるほど、アルディアスもか――」
”も”ってまさか――ティレックスは嫌な予感がしていた。
「まあ、そういうことだよ。
とりあえず、この件はグラト氏にも状況を話していて、今は彼に取りまとめをしてもらっているところだ。
それに、残念なことに言い出しっぺのうちでも同じ問題が起きているし――」
おいおいおい、そんなんで大丈夫か? ティレックスは訊いた。
「うちから出る分には問題はなかったんだけど、
結局、そこから先の国での管理がきちんとなっていないから問題が起きたんだ。
複数の国でそうだったからわざわざ何処の国かは特定しないけど、みんな無茶苦茶頭を下げてきたよ。
んなことされたってどうにもなるわけじゃないから、
可能な限りの流出先の特定と、再発防止策を考えてもらうようにしたんだ。」
うげっ、つまりはうちの国もその原因の一部か、ティレックスは冷や汗をかいていた。
「つ、つまり、1つの国でやっても仕方がなく、取引相手も含めて連携して対応しないとダメなことってわけか――」
リファリウスは頷いた。
「それはともかく、クラウディアス様から頂いた資源に関して同じことが起きている場合、
今言った通り、可能な限りの流出先の特定と再発防止策を考えてもらうようにすればいいからね。」
ティレックスは訊いた。
「でも、流出先の特定ができないものもあるらしいんだが、クラウディアス様から頂いた資源かどうかは別にしても。その場合は?」
「だから、そこは可能な限りでいいよ、重要なのはずばり何に使われているのかだ。
それがわかればある程度の対策もできるからね。
それすらもわからない場合は――まあ、そうなったらそうなったで仕方がない、問題が発生次第叩いていくことにするよ。」
すると、その場に慌ててオルザードがやってきたが、
「噂をすればなんとやらだね、謝罪したいのなら日を改めて請け合うよ。あと、話はティレックス君から聞いてくれると助かる。
さて、私は先に休ませてもらうから、あとはアルディアス勢で何とかしてくれると助かるよ、それじゃあお休み――」
と、リファリウスはそう言ってアリエーラさんとフィリスと共に部屋のほうへと入って行った。
するとティレックスも――
「そうだな、明日は俺らも早いから――申し訳ないけど、
後日改めてグラト氏から指示を仰いでくれないかな、状況も併せて話してもらえると助かる。
多分リファリウスのことだから、グラト氏に対応方針を伝えているハズだ」
オルザードは頷くと、そのまま慌てて大使館のほうへと戻っていった。
「やれやれ、ますます嫌な予感しかしないな」
ティレックスはため息をつきつつ、自分の部屋へと戻った。