エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第2部 果てしなき旅へと連なる試練 第4章 脅威たちの襲来

第81節 疑念、そして謎を呼ぶ謎

 テラスにて、フェリオースはそのまま何やらブツブツと言っていた。
「てか、よくわからんやつだな、リファリウスって。 女関係は一見派手で女性陣からちやほやされている。 なのに、そのクセやっていること考えていることが妙に女子っぽい。 今のもあえて”イケメン”賢者様とか食いつくところが何か変だ。 まさかリファリウスって”そっち”の趣味とかじゃねえだろうな?」
 フェリオースはそう言いながらなんだか悩んでいた。するとその後ろから――
「リファリウスさんがどうかしましたか?」
 と、何やら麗しい声が! アリエーラさんだ! フェリオースは至極驚き、慌てて後ろを振り向いた。
「あっ、すみません、そういうつもりではなかったのですが――」
 アリエーラさんは申し訳なさそうにしていた。 アリエーラさんになんてこと言わせるんだこの男っ! というのは冗談で……
「あっ、いや、その……リファリウスってなんか女性的な感じがするなぁと思って――」
 フェリオースは当たり障りのない言い方で訊いた。するとアリエーラさんが言った。
「そう思います? まあ、そうかもしれませんね。 それこそ私とリリアさんともシンクロしているので、少し影響を与えているのかもしれません。」
 言われてみれば確かに。でも――シンクロしているだけでそうなるものなのだろうか、フェリオースの疑問は尽きなかった。 だが、やつのとある性質がそれをある程度物語っていた、それは――
「確かにプリズム族の誘惑魔法というのもあんまり効いてないというか、ほぼ効いていないような感じだ。 誘惑魔法の有効具合というか、具体的な効果がどんななのかがわからないんだけど、 その、なんていうか、リファリウスってますますわからないよなと思って――」
 それこそどう訊いたものかわからなくなったフェリオース。 それについてアリエーラさんは丁寧に答えた。流石はアリエーラさん素敵すぎる。
「彼女らの用いる誘惑魔法は幻術の一種で、魔法の使い手の意思によって効果が決まるところはほかの魔法と同じですが、 具体的にどのような効果になるかは受けた側の意思にも左右されるのです。 もちろん、実際にはもっと複雑な感じにはなると思いますが、基本的な性質で言えばそんな感じですね。」
 つまりは使い手が相手を虜にする目的で使用した場合、 効果を受ける側は虜になってしまうわけだが、具体的にどんな方法でなってしまったのかについては人それぞれということか。 まさにあのイングスティア編での例のルルーナの悪戯の例がそのままあてはまるだろう、 ルルーナの悪戯にかかった3名は確かに夢の中で何らかの妄想による行為で楽しんでいるようだが各々その内容が異なるようだ。 まあ、それ自身は各々が墓場まで持っていくつもりの出来事のためフェリオースが知る由もないわけだが、 つまりはそう言うことである。
 とはいえ、なんとなく効果については理解したフェリオース、そのうえで考えていた。
「魔法だからそもそもかかる・かからないの話になるとは思うんだけど、そこは?」
「もちろん、あると思います。 しかし、プリズム族の誘惑魔法については異性には比較的かかりやすくなるようになっていますね、 そうでなければ彼女らは既に滅びているハズですからね。」
 そう考えると彼女らにとっては死活問題か。 ただ、そういえばリファリウスって案外魔法が効きづらいとも言っていたような。 だから、案外本当に聞いていない可能性もあるな、フェリオースはそう思った。
 とはいえ、リファリウスへの疑念はぬぐえない、実際のところどうなんだろうか、フェリオースは恐る恐る訊いた。
「可能性はゼロではないと思うし、 特にあのララーナさん――プリズム・ロードってたいそうな存在みたいなことを言っていたような気がするから、 だから――例えば彼女の魔法がリファリウスに効いたとして、あいつはどうなるんだろうか……?」
 だが、アリエーラさんは臆することなくはっきりと答えた。
「どうなるって、見たままですよ?  かかるとすぐにぐっすりと寝てしまうではないですか?  それにいつもいつも”お母様”と言って慕っているところも彼女の魔法を受けたことによる効果ですよ。 もちろん私だって! ララーナ様は偉大な人だと思います! だからこそ彼女はプリズム・ロードなんですよ。」
 予想外の回答が。そうだ、相手はララーナさんとなるとまた別の話になってしまうってわけか――。 となると後は――仕方がない、本人相手に言うことになるがフェリオースは意を決して訊いた。
「アリエーラさんもプリズム族の血が含まれているんだよな?  そんなアリエーラさんにリファリウスが好意を寄せているって話を聞くんだが、それは?」
 そう言われたが、アリエーラさんはどういうわけかやはり臆せず答えた。
「リファリウスさんが私にだなんて嬉しいですね! そんな、私のほうこそですよ!  リファリウスさんのお嫁さんになるなんて嬉しいなぁ――」
 と、アリエーラさんは何故か楽しそうに答えた。いや、どうなっているんだ!?  初めて聞いた話でもないのだが、改めてそれを聞かされるとやっぱりよくわからない。 それこそリファリウスはむしろ女性陣を逆に引き付ける”何か”を持っている。 そして、それにより多くの女性陣はこのアリエーラさんみたくリファリウスと一緒にいると嬉しいなどとはっきり言っているパターンが多いのが特徴だ。 男性陣としては羨ましい限りだが、最初に話したリファリウスへの疑念と合わせて考えると、さっぱりわからないのである。 うーん、リファリウスはなんだか完全に常人離れした思考・感覚の持ち主なのだろう、そう思った。 恐らく、今はこれ以上考えてもわかるまい。