リファリウスは仕事を終えた。あまりに数が多いため、至極適当だそうだが。
「適当ってなんだよ、ちゃんと仕事しろよ」
ガルヴィスをはじめ、アーシェリスやティレックスなどがクレームをつけてきた。
メンツを見ての通りで、”アリヴァール・メタル”製の武器の作成の話である。
それに対してリファリウスは――
「仕方がないだろう、注文数が多いうえに納期を迫られているんだ。
クオリティはみんなで合わせないと差別が生まれるし、
そのうえクラウディアスの公務と合わせて不眠不休での作業なんだ、
これ以上を求めること自体が野暮ってもんだよ。」
だが、それ以上に差別と言わしめる要素の代物をリファリウスは取り出すと――
「おい! それはなんなんだ! きちんといいやつ作れているじゃねえか!」
ティレックスがそうもんくを言うと、リファリウスは呆れながら言った。
「差別? どこが? これはそもそもオーダーが違う。
キミらは一から作れというオーダーだけど、一から作るのって案外大変なんだ、普通に時間がかかる。
素材は原石を精錬するところから始めないといけないからね。」
するとクラフォードがやってきて、リファリウスが持っている剣を受け取った。
「おう、出来たようだな。ところでどうしたんだ? 何か問題でも?」
リファリウスは話を続けた。
「でも、クラちゃんは自分の剣を改造してくれってオーダーだった。
完成品からの改造だったら話は早い、私オリジナルにがっつりと改造させてもらったよ。
無論、それでも時間がないからちょっと微妙だけど、
クラちゃんは後は自分の技で補うからいいって言って了承ももらえている、
だから私も安心して予定通りに完成させることにしたってワケだ。」
それに対してクラフォードが言った。
「ああ――その話か。
まあ、数が多いからな、だから俺はそれを懸念して作るのは今度また頼むから、
今回はコイツに手を入れてくれって頼むことにしたわけだ」
そういうこと……クレームをつけていた面々は少しがっかりしていた。
「といっても、このメタルで作られた代物がすごいことは保証されているようなもんなんだし、
忙しい中で作ってもらえただけでもありがたいと思ってほしいもんだよね。
それに、完成品を買えって言っているわけではない以上は既製品なんかに比べれば明らかにいいものであることは保証するほどの代物なんだから、
きちんと自分の手でどれほどのものなのかをちゃんと確認してからものを言ってほしいもんだ。」
ついでにリファリウスの愚痴、そこまで言われたらぐうの音も出ない。
だが、その中で異質なオーダーをしたものが1人だけいた、それは――
「おっ! できているのか! ちょうどよかったぜ!」
現れたのは大男、ロッカクである。これまでガーデン法という計画により、町の復興の手伝いをやっていたのである。
”ネームレス”の中でも重症組と呼ばれるほうの存在で、記憶がない以上にとにかく自分というのをわかっていない状態だったが、
復興の手伝いをする過程で自分の力を確かめ、自分のことをある程度思い出していたのである。
それこそ少し前からアルディアスでティレックスと共にルダトーラに在籍していたはずだし、
同じ”ネームレス”であるカイトやシエーナとの邂逅もあったハズだが、
自分自身を思い出す要素としてはそれだけでは足りなかったようで、
ほかに復興の手伝いに行った”ネームレス”らと行動を共にすることにしていたのである。
そしてこの度戻ってきており、都合よくリファリウスに武器の作成を依頼していたのである。
「はい。キミのが一番楽だったから助かるよ。」
一番楽って!? それもそのはず、こいつの得物は違っていた、
もはや手抜きなんじゃないかっていうレベルの代物で、切れ味なんていうのが一切ない刀身である。
「むしろ悪いな、こういうのを作るのはむしろ不本意じゃねえのか?」
「いやいや、そんなことはないよ。
依頼主のオーダーに答えるのが使命みたいなもんだし、この状況的に作る側としては楽で、
使い手のコンセプトもはっきりとしている、だからそれに向かってゴールに突き進むだけなんだから、むしろ大助かりだよ。」
って、いくらなんでも手を抜きすぎでは? アーシェリスはそう言うとロッカクが言った。
「確かに刃の鋭い武器ってのもそれはそれで作ってもらいてぇけど、
今回は敵を切り倒すより殴り倒すための武器を作ってくれって頼んだからな。
だから別に切れ味は求めてねぇんだ」
するとロッカクは剣の柄を握りしめると――
「おおっ! こいつはすげえな! 無茶苦茶”入っていく”ぜ!
すげぇな! なんか特別な改造でもしてんのか?」
”入っていく”ってなんだ?
「いやいや、特に何もしていないよ。
まあ、キミが使う技的に入れるべきものは入れたつもりだけど、
最初に説明した通りこのメタルは特殊だからね、そのせいだと思うよ。
だから一気に”入って”いって、一気に発揮できるような感じになるんだと思うよ。」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたな! そいつはちょっと楽しみだぜ!」
いや、だから何の話なんだ、そう訊くとロッカクが言った。
「へへっ、そいつはその時のお楽しみってやつだぜ!」
まあ、楽しみにしておこうか、ある程度この大男の見た目通りだとは思うが。
でも、”入っていく”って言い方――