エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第2部 果てしなき旅へと連なる試練 第4章 脅威たちの襲来

第78節 策士の計略、復活の策

 翌日、ラシルは騎士たちを連れてリファリウスと共に臨時倉庫の物品を確認していた。
「そういえばほぼ全部にタグが付いていますが、全部うちで付けたものですか?」
 リファリウスは頷いた。
「そう、うちはすべてに識別番号をつけて管理をしている、そのためのタグだよ。 簡単なエンチャント加工を施すことで直接ブツに番号が付けられるのが便利なんだ。 それができない物については物理的にタグをつけて管理している。」
 で、見落としがないのかとリファリウスはラシルに協力を仰ぎ、改めて確認をしているそうだ。すると――
「あっ、これ! タグがついていません!」
 一人がそう言うとリファリウスが慌てて駆け寄った。
「ごめん、これはもう完全にうちで引き取って使い切ることを予定しているものだからつけなかったんだ、 こんなところにあったのか、そうと決まったら置く場所を変えないといけないね。」
 とまあ、中にはそういうのもあったようだ。

 そして5階のテラスに上がってくると、そこにはヒュウガが端末を操作している姿があった。
「お疲れさん、臨時倉庫のリストが上がってきたぞ。 全部で586点とかとんでもない数だな――」
 リファリウスは頷いた。
「とりあえず、そのうちの項番若い順からいくつか見繕って頼むよ」
 ヒュウガはリストを品定めしつつ、操作をしていた。
「はいよ、とりあえず64点ほどはいつも通りガレアに回しといたぞ。 あっちにも相応にブツが送られてくるけれども、肝心のブツが来ないからな」
 リファリウスは頷いた。
「エンチャント素材系ね。これからたくさん使うから、ないとどうしても困る。 それこそ余るほどあってもいいぐらいだ、そろそろテストも必要だしね。」
 するとヒュウガは再び端末を操作した。
「確かにもうじき最終フェーズだったな。 それならエンチャント素材は全部あっちに回しとくか?」
 リファリウスは考えた。
「いや――そういえばプリズム族のおねーさんたちが新しくエンチャント加工の店を出すとか言ってたっけ。 だから念のために……そうだね、逆にその64個を取っておくほうにしよう。 あと、ついでに先日来た”アリヴァール・メタル”を半分にしたやつ、それも片方あっちに送ってしまおう。」
 するとヒュウガは端末から手を放し、伸びをしつつ言った。
「ふあーあ、つまりはこの管理方法がエンブリアのスタンダードケースになるってわけだ。 紙ベースでもいいから当たり前レベルでやっているものだと思ったのだが、違うんだな」
「それな。私もびっくりだよ。 セキュリティとか、そういうのが根付いていない情勢みたいだからそれも致し方なしかなと思うけど。 でも、そのせいでウォンター帝国の残党とか、ついこの間まで勢力を伸ばそうとしていたディスタード帝国なんていうのが現れるんだ。」
 ヒュウガは頷いた。
「それな。 でも今後はこれで資源管理されて、不正流用・不正使用が発覚すると同時に悪の芽もしらみつぶしに暴かれていくわけだ。 そして、それと同時にクラウディアスの経済はますます儲かるばかり――よくできているな」
 言われたリファリウスは得意げだった。
「そんな人聞きの悪いこと言うのは辞めろよ、あくまでエンブリアの発展と安寧と秩序を守るためだよ。 確かに資源関係の調査会社や管理会社、アドバイス専門の会社とかを作れって指示を出したのは私だけどさ、 非営利団体じゃないんだしさ、労働者がいる以上は賃金を出さないといけないわけだから儲けが必要なことは至極当然なことだろ?」
「とはいえ、その会社は今はクラウディアスにしかないことは確実。 つまりはまだ無知で手さぐりに始めている国については必然的にクラウディアス様のその企業に頼らざるを得ない、と。 そして国がその企業から税金を巻き上げることで特別執行官様の懐も潤うってなもんだ」
「いやいやいや、巻き上げるなんて言い方辞めろよ、あくまで徴収するだけ。 それに懐に入れたって仕方がない、宵越しの銭はげん玉として持たない主義なもんでね。 あくまでクラウディアスの発展と安寧と秩序を守るために……」
 リファリウスのやつ、うまいところを突いてくるな。 無論、この手の犯行については初めてではない、常習犯である。 こいつからの連合国内で何かしらの提案をしているケースは多々あると思うが、この手の犯行が実行されていることが多い。 なんてやつだ。いや、それがどういうわけか不正はなかった。 その結果、ここ最近クラウディアスが新しい建物を建てたり新しい機材などを導入したりなどで発展している原因は主にこいつのこういった行動によるもの、 やっぱりこいつ、相当の策士である。 だが、その使い方と言えば御覧の通りだが、その狙いはただのこいつの自己満足である。 リリアリスも当人が以前に言っていたとおりゲーム感覚である。なんてやつだ。
「ティルエーテル株はもうないのか、手を引いたんだな?」
 ヒュウガが行くとリファリウスは頷いた。
「最大の取引国であるイングスティアが倒れたからね。 それにティルエーテルはそこまで質が良くない。だから遅かれ早かれ手を引くことは予定していた。 水質で言えばバルナルドのほうが優秀だ、こないだ現地視察に行っただろ?  エンチャント水製造にも向いているみたいだし、それを提案したら早速着手し始めてくれて早々に事業に転換していた、だからすぐに買ったよ。 それにディスタード需要もほとんどなくなった今はセラフ・リスタート計画だろ? つまり今はセラフ需要が投機の対象さ。 そう思ってディスタード需要で設けた分を全部セラフ需要に回したんだ。 そしたらあとはセラフィック・ランドが復活するたびに値段も吊り上がるってワケさ。」
「……違法ギリギリのところを突いてくるな、 ってか、セラフ系外資ほとんど買い占めてるし……株トレーダーでも勝てなさそうだ」