そういったことで――
「頼りにしたい気持ちもよくわかるし、だからもらえるものならもらいたいというのも正直なところだ。
だけど、いくら何でももらいすぎな気がしてさ――」
リファリウスはそう言った、それは例によって連合国オンライン会議の席である。
「いえいえ、そんな遠慮されずとも問題ございません!
クラウディアス様に置かれましては、ぜひ当国の鉄鉱石を使ってもらおうと思いまして――」
と、調子良さそうに言うアルディアスだが、ルシルメアが苦言を呈した。
「確かにルシルメアとしてもそれには賛同します。
しかし――今の話のポイントはクラウディアス様においては材料を保管しておくためのスペースがないということです。
いくら土地の広いクラウディアス様とはいえ、流石に生活領域を侵してまでのそれは避けたいところでしょう。
そこは気にしたほうがいいと思いますが、いかがでしょう?」
アルディアス勢は悩んでいた。するとヴェラルドが――
「キラルディアです。
確かにクラウディアス様に置かれましては臨時の倉庫というものを設け、何とか保管をしているようです。
ですがそれも満杯であり、スペースの確保に大変苦慮されているところを拝見しております」
彼はそう言うとさらに続けた。
「無論、どの国の方も気持ちはアルディアス様と同じ気持ちかと思います、もちろんそれは我々とて同じこと。
クラウディアス様ありき、クラウディアス様に何とかやってもらいたい、
だからこそクラウディアス様は優遇されるべき、と。
そこで提案なんですがこういうのはどうでしょうか?
それならいずれの国も方針を変える必要なく事を運べると思いますが?」
するとヴェラルドは画面をホワイトボードに切り替え、自分が書いた内容を見せていた。すると――
「なるほど、簡単に言えばクラウディアス様に使い道を決めてもらうということですね。
要・援助国に出す分についてはだいたい決まっておりますが、そのうえでの支援というわけですか」
「否、これはクラウディアス連合国内でさらに結束を強めるための提案とお見受けしました。
確かにこれはいいですね、クラウディアス連合国内の各国というよりは、まさに連合国が一体となっているような連携です!」
「クラウディアス様、いかがでしょうか!? 我が国はこの提案、とてもいいものだとお見受けいたしますが!?」
それに対してリファリウスは得意げに言った。
「ああ、気に入ったよ。
というのも実は、数日前にヴェラルド氏から直接私に先んじて教えてくれた内容だよ。
私はいいねって言ったんだけどみんながどんな顔するのかと思ってさ、気になっていたんだよね。
でもみんな賛同してくれたみたいだから、取り越し苦労だったみたいだね。」
するとアルディアスが言った。
「いえいえそんな! そう言うことならご自由にお使いください! わざわざ許可など要りませんよ!」
だがしかし、リファリウスは言った。
「いやいや、そう言うわけにはいかないな。
どんな状況でも必ず不穏分子というのは存在するもの、つまりはセキュリティ対策は確実にしておかないといけないってわけだ。
例えば――アルディアスさんは鉄鉱石をうちに送ってくださる、
じゃあ自由に使っていいからと言ってよその国を発展させるために使うのはいいことなのかというと、それは違う。
何故か? もしその国が発展を遂げた後、今度はその鉄鉱石を悪用しようという動きになった場合、最悪戦争になる。
それこそ金儲けのためにこっそりロサピアーナに流出しようという輩が出たらさあ大変だ。
つまり、気が付いたらアルディアスの鉄鉱石がクラウディアスの助けのせいで戦争の道具として使われてしまうんだ、それだけは避けなければならない。」
それに対してあのシューテルが反応した。
「ほう、つまりは国際ルールの制定が急がれる、ということですな」
リファリウスはその上でさらに説明した。
「そう――だけど、それは国際ルールだけでは不十分だ、何故か?
国際ルールを踏まえたうえで各国がどう対応するのかという国単位のルールが必要になってくるからだよ。
ということはつまり、資源の取り扱いに関してどうするかを国単位――いや、個別の自治区単位で決めてないといけないってわけだ。
無論、採掘量を決めている国とかは聞いているからわかるし、貿易に関してもある程度は訊いているけど、
こちらで独自に調査したところ、商談相手などの取り決めはないのか、資源の管理はどうなっているのか、
個人単位での取り決めは? 不正流出はないのか? 資源流通の流れまで見えているのか?
つまり、言うようにいちいち許可を求めなくたっていいというのは実にその通りなんだけど、
少なくとも自分のところから出てきた大切な資源をどう扱われているかぐらいは気にしてほしいんだ。
調べた結果、そういうところが意外となってない国が多いみたいだから、
今回はそれを考えるいい機会と思って取り組んでもらいたいな。」
な、なるほど、これは……クラウディアス様のその斬新な発言にはやはり目を見張るものがあった。
「と、いきなり言っても困るだろうから一応参考情報を後で渡しておくよ。
例はクラウディアスのケースとガレアのケースの2つを用意している。
ただし、ガレアの場合はティレフ・ガーデンのケースも個別に用意しているから実質的に3つとなる。
それぞれで全然違う背景を抱えているところというだけあって、取り決めに関するルールが割と違っているのが特徴だ。
特にティレフ・ガーデンは資源が乏しい管轄だからそういう国でも参考にできる個所があるだろう。
ただ、クラウディアスのケースについては少々古い情報だから、今はちょっと違っている点には注意して。
あと、ガレアとティレフ・ガーデンに至っては少々大雑把なところもあるけれども成り立ちの都合上、そこは大目に見てほしい。
ただ、基本的なところはだいたい抑えているつもりだからそこはしっかりと確認してほしいな。」
それにしてもこいつの頭、相当にヤバイな。