エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第2部 果てしなき旅へと連なる試練 第4章 脅威たちの襲来

第76節 匠の悩み、有名人の辛さ

 ということである日のこと、クラウディアスのお城のいつもの場所にて――
「おい! リファリウスだろ、あれ! なんか大掛かりなものがあるぞ!」
 それはフェラントから何か大きなものが運ばれている光景を見てアーシェリスがもんくを垂れていた。
「なんだよ、私だと確定しているのかソレ。まあ、心当たりはばっちりあるんだけれども。」
 あるんじゃねえか、アーシェリスはそう言うとリファリウスは笑いながら答えた。
「まあまあまあ。だいたい悪いこと企んでいるとか、別にそんなことじゃあないんだから勘弁してくれよ。」
 こいつのことだからそれはそうだと思うのだが、それでもアーシェリスはこいつのことがどうしても嫌いだった。
「どれどれ――」
 リファリウスはテラスから見下ろすと――
「ったく、よくもまあこのクラウディアスに自動車なんて通したもんだ」
 と、アーシェリスは言った。 そう、大掛かりなものというのは自動車――いや、すでに運用は始まっており、 彼らが確認した光景というのは大きなコンテナを運ぶトレーラートラックである。
 それを見てリファリウスは焦っていた。
「ちょ、ちょっと、本当にもう来たの!? いくらなんでも早くない!?  それに……頼んだ大きさとは明らかに違う……思いのほか多すぎる気が――」
 その場に一緒にいたヒュウガが言った。
「あれだろ、ぜひともクラウディアス様お使いくださいって意図じゃないの?」
 またクラウディアス様か……リファリウスは呆れていた。
「そういうのやめようって言ったのに。 そう思ってこっそりと買い付けたのに――」
 するとヒュウガがノート端末をリファリウスに向けて言った。
「どうやらこっそりというのは難しいらしいな、有名人の辛いところだ」
 ディスプレイにはセラフィック・ランド自治区のお偉いさんからのメールが映し出されていた。
「はあ、話は聞いたから少しとは言わずにぜひともたくさんお使いくださいか、それは今じゃないって言うのにさ――」
 というか何の話なのだろうか、アーシェリスは訊いた。 すると早速というか、何名かの刀剣の使い手がやってきた。
「リファリウスさん! いよいよ来ましたね! さっそくお願いします!」
「ほら、材料来たんだろ? さっさと作ってイーガネスってやつをさっさと倒しに行くぞ」
「リファ様♪ 楽しみ楽しみ♪」
「本物の鍛冶師の出番。異論は認めない」
 どっ、どうなっているんだ、アーシェリスはあっけにとられていた。すると――
「もう、みんな気が早すぎ! まずは精錬しないとちゃんとしたものが作れないでしょ! だからゆっくり待っててよ。」
 リファリウスはたしなめるようにそう言った。
「ん、セラフィック・ランドで買い付け? 材料? 精錬? 鍛冶師? おい、まさかあれって――」
 アーシェリスは気が付いた。
「ああそうさ。皆さん待望の”アリヴァール・メタル”だよ。」
 それは確かに楽しみだ!

 リファリウスお手製の”兵器”とは言わないまでも、それでもこいつが作るブツに関しては正真正銘の本物の業であり、 まさに大業物と呼ばれる代物で、多くの者からエンブリア鍛冶では最高峰と呼ばれるほどの腕とも言われる。 それは確かに、性格が多少ひん曲がっていても致し方ないという向きもあるかもしれない――まあ、多少ではないのが困りものなのだが。 だが、その分だけ鍛冶以外のあらゆる技術にも精通しているため、そういう意味ではバランスが取れていると言えるのかもしれない、 鬼才と変人は紙一重と、こいつの存在をまさにそれを体現しているようである。 無論、リリアリスもしかりである――何故同じようで性別だけ違う2人のキャラがいるんだ。
「おい、こんなに買い付けたのか――」
 荷台を開けてメタルの大きさを確認すると、イールアーズはそう漏らした。 メタルはまさに家5棟分と言わんばかりの大きさで、全員で呆然と立ち尽くしていた。 それに対してガルヴィスが皮肉たっぷりに答えた。
「有名人の辛いところってやつだ、クラウディアス様好きなようにお使いくださいってことさ」
「でも、それにしてはやたら優遇されているような――」
 フィリスがそう言うとリファリウスが言った。
「それはそうだよ、昔からクラウディアス様様ありきの状態が続いていて、 今の世も私ら”ネームレス”が力を使いすぎた結果にこうなっている――主に私のせいなんだけど。だからここは期待を裏切らず前進的に行動するしかないよ。 それこそわざわざ突き返すのも申し訳ない、クラウディアス様が機嫌を損ねたとか言って後でいろいろと面倒なことになるからね……」
「それはすごい面倒くさっ……」
 フィリスは呆れ気味にそう言った。
「さて、お偉いさんも加減せずに送ってくるもんだからいろいろと大変だ。 とりあえず一旦臨時倉庫に保管しておこう、話はそれからだ」
 ん? 臨時倉庫? するとラシルが慌てて言った。
「もう無理です! 臨時倉庫ももう満杯でこれ以上はいりません!」
 えっ、リファリウスは唖然としていた。 臨時倉庫は今回のメタルのように、想定以上のものをもらった場合に臨時に保管しておくスペースだった。 だが、それももはやキャパシティオーバー……
「ったく、どの国の人もクラウディアス様のためにって躍起になりすぎなんだよ。 くれる分には全然いいけれども、できれば加減して持ってきてくんないかな。」
 リファリウスは呆れていた。