復活したフェアリシアの地にて――
「や、カースミん♪ アリヴァールはどうだった?」
樹海の入り口付近にて、リファリウスと彼女は出くわし、リファリウスはそう訊いた。
「最高。メタル良質。でも鍛冶師はこの剣の業にはかなわない」
カスミは自分の刀を指して言った。無論、その刀はリファリウスやリリアリスの傑作である。
「やっぱりそうか! いやー、私も作った甲斐があるってもんだね。
それにしても、わざわざ来てくれたんだね」
カスミは嬉しそうな顔で頷いた。
「シオラ何処?」
そう言われてリファリウスは頷いた。
「そういうカスミんの面倒見のいいところは私も見習うべきところだね。
シオりんさんは”黄昏の丘”だよ、案内いる?」
カスミは首を振った。
「大丈夫、ひとりで行ける。
それに……面倒見のいいとこ、私、リファリウスお兄ちゃんリリアリスお姉ちゃん見習ったこと」
彼女はそう言うと、そのままトボトボと樹海の中へと一人で入って行った。
「参ったね、自分でやってて気が付かないとは――私もまだまだだね。」
リファリウスは頭を押さえながらそう言った。いや、気づくだろ普通……すみません、この人たち普通じゃないんです。
カスミは単身樹海の中を進んでいくと、そのうちクラフォードとウィーニアと遭遇した。
「あれ? カスミちゃん? どうしたの1人で?」
ウィーニアは気にしてそう声をかけた。
「シオラのとこ行く」
それに対してクラフォードが言った。
「彼女か、しばらく1人にしておいてやった方がいいぞ」
それに対してウィーニアが言った。
「いや、むしろカスミちゃんだからこそ、彼女のそばにいてあげたほうがいいんじゃないかな?
”黄昏の丘”ならもう少しだよ!」
そういうものなのか、クラフォードは言った。
そしてカスミはそのままトボトボと歩き始め、去り際に言い残していった。
「……デート中、邪魔者はさっさと消える」
そう言われてクラフォードは顔を真っ赤にしていたが、ウィーニアは嬉しそうだった。
「だってさ♪ 行きましょ、クラフォード♪」
ウィーニアは嬉しそうに言うが、クラフォードは悩んでいた。
そして、今度はローナフィオルとディアナリスの2人と遭遇。
「あっ、カスミちゃんじゃん! シオりんのとこに行くの?」
ローナフィオルはそう言うとカスミは小刻みに何度も頷いた。それに対してディアナリスが言った。
「あー確かに……カスミちゃんが付いていてあげるのは効果大かもですね!
カスミちゃん、シオラのこと、よろしくお願いしますね!」
カスミは右手でグーを突き出し、リリアリスばりに得意げに言った。
「私に任せなさい」
黄昏の丘――1人佇むいい女、シオラはその丘から見える夕日をじっと眺めていた。
「ごめんねティランド、来るのが遅くなっちゃった――」
風が吹くとシオラの自慢の長い髪がはためいていた。
「本当に素敵な場所よねここ、あなたがここに連れてきてくれたのよ。
この森に入るのは私の能力の賜物だったみたいだけど、こんな場所があるって教えてくれたのはあなただったのよ――」
再び風が吹くと、またしても彼女の髪が――
「それからというもの、みんなでここでよく来ていたっけ。
でも、あなたは――私のことばかり見てくれていた。
私もそんなあなたばかり見るようになっていたわ――」
そして、そっと風が収まった。
「でも……あなたの命は沈んでしまった、フェアリシアと共に――」
しばらく無風の状態が続き、夕焼けは水平線の下へと徐々に隠れようとしていた。
「でも見て! 私たちはフェアリシアを復活させたのよ! 信じられる!? すごいでしょう!
私も話を聞いてびっくり! まさか本当にこうなるなんて思わなかったわ!」
そして……シオラは力なく言った。
「だけど……あなたは戻ってこなかった――」
その時、そんな寂しそうな背中のほうからカスミがトボトボと、ゆっくりと彼女の元へ接近してきた。
その気配に気が付いたシオラ、思わず振り向いた。
「あっ、カスミちゃん――」
彼女のその目には涙が……
「お姉ちゃ……」
すると、シオラはカスミの背丈に合わせて屈み、思いっきりカスミを抱きしめていた。そして、泣きじゃくっていた――。
カスミはそんなシオラの頭を優しくなでていた。