何を奪っているのか? 答えはそう、こいつを取り巻くマナの力を奪っているのである。
だが、それというのはつまり、あくまで取り巻く力ということであって、こいつの力自体を奪っているわけではない。
相手の能力を奪うことよりも、その周囲に散在している力であればとりやすいらしい。
この能力については主に魔法の使い手などが力を使う際にやっていることなのだが、
リファリウスのこれは、その性質のほうを拡張することで大量に力を獲得することを目的にしている。
それこそマナを奪うことで、相手が使おうとしているマナを横取りすることもできる。
魔法剣士が自らの得物に魔法の力を付加して戦うが、
つまりはそれすらも横取りして自らの力にするという、まさに魔法剣士泣かせの能力でもあるのだ、
これのせいでスレアなんかはいつもリファリウスにコケにされていることでも有名である。
無論、相手がそれこそ能力が高く、激しい力の持ち主とあれば、まとわりつくマナの量も増え、奪える量も相応に増える。
だが、いずれも共通しているのは相手本体から直接能力を奪っているわけではないことであるが――
「きっ、貴様! 何をしたっ――!」
重戦士はそう言うとリファリウスはややキレ気味に答えた。
「だから言っただろ、私はお前のマナを奪っているんだってば。いい加減覚えろ。
それに今まで余裕ぶっていたくせに負け濃厚になるとすぐに態度が豹変する……。
ったく、簡単にキャラ崩壊させるぐらいだったら最初からエラソーにしてなきゃいいのにさ。」
リファリウスは右手を出して力を継続していた。毒も強い。するとシオラは言った。
「マナの枯渇ですね――つまり、疑似的にマナの恩恵を消し去ってしまっています。
それにより、相手が自らの体重にかかる重力に反発する力を減衰させてしまうのですね!」
リファリウスは体勢を変えずに得意げに言った。
「流石はシオラさん、可愛くて美人なだけのことはあるね、要するにそう言うこと。
この世界はすべてマナによって成り立っている。
その恩恵がなくなると、生物は真っ先に自らの体重にかかる重力に抗うためのエネルギーを失ってしまう。
無論、僅かなマナでもあればそんなことにはならないけれども、私のこの能力はそんなものでも見逃さないよ。
つまりはお前は自らの体重を支えることが困難になっているということだね。
名付けて”パリッシュメント・ドロー”――”パリッシュ・ドロー”としておこうか。
ということで、手始めにまずはエンブリアを脅かそうというその代償として、地面への貼り付けの刑を執行することにしたんだよ、理解したかなー?」
そうと分かれば話は簡単、シオラはその重戦士めがけて魔法剣を放った――
「エンブリアを脅かそうというのであれば私だって容赦はしません! さあ、喰らいなさい!」
「つまりは純粋にマナを奪う量を増やしたと、そう言うことだな?」
クラフォードは何とか立ち上がりながらそう訊いた。
「まあ、平たく言うとそういうことになるね。ていうか、必然的に増えるわけだけど。」
聞けば聞くほどますますヤバイ能力を行使するなあ、何人かはそう思った。
気にすべきはやはり、アリエーラさんのほうもやはりこのレベルの使い手なのだろうということ、
こんな使い手が何人もいるなんて世の中どうかしてる。
「さて、まだ息はあるようだけどどうする?」
ティレックスは言った、重戦士はその場で大の字になって横たわっており、
もはや虫の息だが何とかまだ生きているようだ。
すると、リファリウスはそいつの前に立ちはだかった。
「キミもイーガネス一派というやつなんだね?」
重戦士は答えた。
「ドメイナス、だ。
まさか本当にゼロ・ブレンダルを破ったやつだったとは――
それにそこの女の力――この”イミテーション”において”フェドライナ・ソーサー”の使い手に出くわすとは、
何がどうなっているのだ……」
するとリファリウスは訊いた。
「あのさ、それよりも訊きたいことがあるんだけど、”アナ・メサイア”について何か知らない?」
ドメイナスは答えた。
「”アナ・メサイア”――もちろん知っている。あの女は厄介だ、とてつもなく……な。
そもそもオリジナルの存在がとても厄介で、我々にしてみれば避けては通れない存在だからな――
ふっ、これ以上は何も言うまい――」
なんでそこまでしか言わないんだ、死ぬ前に教えろ、クラフォードは訊くとドメイナスは答えた。
「……言いたくないわけではない、純粋に知らんだけだ。
私を倒したのだ、そのまま突き進むがよろしかろう。
だが、この先に立ちはだかるであろうイーガネスは私よりも強く、お前らにとっては大きな障害となるだろう、覚悟して進むことだな――」
そう言うと、ドメイナスは事切れた。