エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第2部 果てしなき旅へと連なる試練 第4章 脅威たちの襲来

第70節 第2の刺客、重戦士の脅威

 というわけで正規ルート、直進ルートへと戻ってきた一行。 だが、次第になにやら嫌な感じが――
「なんか妙に空気が重たいな。それに、道幅が狭くなってきているように感じる――」
 確かに通路は道幅が少しずつ狭くなってきており、そのうち人が1人か2人ずつでしか進めないぐらいに狭くなってきていた。
 するとその時――
「ん? なんかいるぞ、門番か?」
 ティレックスはそう言うと、クラフォードが異常を感じながら言った。
「違う、この感じ……これまでの連中とは何かが違う!」
 それに対して相手のほうが反応した。
「エンブリアに来てみれば……暗躍しているのは結局エンブリスの子ら共か」
 そいつは通路の途中で堂々と佇んでいた。 片手で大きな剣を担ぎ上げており、背が高い故かこちらを見下ろしながらそう言ったのだった。 見た目からすると恐らく重戦士のようである。
 そんな相手に対してリファリウスが言った。
「これは……なかなか穏やかじゃないですね。」
 そしてそれに反応した重戦士。
「貴様はどこかで――」
 なんだ、自分を知っているのか、リファリウスは訊いた。
「ふっ、どうでもいいか。とにかく我らの邪魔はさせぬ、おとなしく死ね!」
 それに対してクラフォードが立ち向かった。
「やれるもんならやってみろ!」
 それに対して重戦士が少し考えて言った。
「ほう、この私に勝てるとでも? なるほど、そう言うことだな、貴様らが例のアレというわけか。 予め言っとくが私はゼロ・ブレンダルのように甘くはない。 ヤツはイーガネスの意に反したことで勝手に自害したらしいが、この私にそれを期待しないほうがいいぞ!」
 ゼロ・ブレンダルだって!? それにイーガネス――ということはつまり、こいつはそいつらの仲間ということか!  そう、例の”インフェリア・デザイア”というやつである。
 リファリウスは左手に”兵器”を出しながら話をした。
「ゼロってのはあのゼロのことかな?  悪いけど、彼は自害したんじゃなくて姉様によって討伐されたんだよ。 勝手に自害したというのは少し語弊があるね。」
 すると重戦士は驚き気味に言った。
「なんだと? 何をバカなことを言っておる?  貴様らエンブリスの子らに、たかだか”イミテーション”風情の貴様らにそのようなことができるハズなどなかろう。 嘘をつくのならもう少しマシな嘘をつくことだな」
 なるほど、そう来たか――するとリファリウスはニヤっとしながら言った。
「いいだろう、そこまで言うのなら――」
 リファリウスはなんと、”兵器”を右手に持ち返ると左手には改めてあのゼロ・ブレンダルの槍を出して言った。
「ゼロ・ブレンダルを斃したのはこの私だ。これならもんくないだろう――」
 リファリウスは不敵な笑みを浮かべてそう言った。 いやしかし、倒したのは確かリリアリスのハズだが――嘘も方便ということか。 でも、なんでこいつが持っているのだろうか。
 それに対して重戦士は呆れていた。
「ヤツの遺品を持っていたからとてそれは証明にはならん。 やつは自害したのだ、それを拾っただけで自慢するとはやはり”イミテーション”たる所以だな」
 リファリウスは頷いた。
「まあ、そこまで言うんだったらいいよ、きちんと相手をして確かめるといい。 でも、言っとくけど、”インフェリア・デザイア”ってことなら容赦しないからね、 キミらの言うこの”イミテーション”の世界だけど、我々にとっては重要なものだから、 それを脅かそうって言うんなら最悪の場合、死を持って償うことにしてもらうからね。」
 すると重戦士は剣を構えた。
「良かろう、特別に相手をしてやる。 いずれにせよ、この”イミテーション”の世界を復活させようと目論む貴様らは邪魔な存在なのでな、 二度とそのようなことができぬようにしてやろう」
 つまりはゼロ・ブレンダルの目的と同じ第二の刺客……戦いは避けられないようだ。

 しかし、流石にこいつを相手にするには骨が折れた。 特に一番前衛に立って勇猛果敢に攻撃を繰り出すクラフォードとティレックスだが――
「くそっ、なんだこいつの力――あの時と同じだ……」
 それは、ゼロ・ブレンダルら襲撃時にクラフォードが対峙したやつの力である。
「なんだこいつ……こんなやつがいるのか――」
 ティレックスも大きく弾き飛ばされていた。
「そうとも、所詮は”イミテーション”、その程度がせいぜいだ。 粋がったところで私にかなうはずもない、おとなしく下がれ。 そして、この世界の終わりをその目で見届けるのだ――」
 するとリファリウスがクラフォードとティレックスの前に立った。
「本当に狭いなー、相手ができてスペースは2人分か――」
 リファリウスは”兵器”を、シオラは剣を構えて立ちふさがった。
「私たちの腕の見せ所ですね――」
 重戦士は余裕だった。
「ふっ、何が来たところで同じこと、素直に諦めれば地獄を見ずに済むというもの――」
 それに対してリファリウスは言った。
「あーあーもううるさい。何様のつもりだよこいつ。 そう思ってわざわざこっちは譲歩して複数人で挑んであげているんだからもうちょっと考えろよ。 というわけでシオラさん、トドメは任せたから頼むね。そう言うわけだからお前、これでもくらえ。」
 それは、リファリウスお得意の”エンチャント・ドロー”という技、 相手のマナを奪って自らの力とするそれだった。だが――
「ほう、面白い技を使うようだが――使う相手が悪いようだ、 私は見ての通り、得物がこれなのでな!」
 重戦士は大きな剣を突き出し、得意げにそう言った。
「マナってことは魔法の力を行使する場合にキーとなる力…… 相手はあからさまに戦士タイプ、やつのあの技で考えるとせいぜい自己強化に使うそれを奪う程度でしかなく、 パワーダウンを狙うには向いていないハズだが。 そのうえでリファリウスの秘策は何処にあるんだろうか――」
 クラフォードは跪きながらそうつぶやいていた。
「ふん、後ろのそいつのほうがまだ賢いようだが…… つまりはそういうことだ、いつまで続ける気か、愚か者め――」
 しかしリファリウスは――
「ふっ、愚かなのはキミのほうだよ、誰も魔力を奪うなどとは言っていないし、キミの力を奪うとも言っていない。 今一度、後ろの人の言ったことを思い出すんだ、私は何を奪っているんだと――」
 しかし、重戦士はしびれを切らして言った。
「減らず口を! これで最期にしてやる!」
 だが、リファリウスは呆れ気味に言う。
「そうかい、言ってわからないやつは実際に味わってみないとわからないようだね――」
 するとその時――
「おとなしく死ね!」
 重戦士は勢いよく剣技を繰り出し、リファリウスに襲い掛かった! だが――
「なっ、なんだ……どうなっているんだ……!?」
 重戦士の動きは衰え、次第に動きが鈍くなっていくどころかそのうち身動きが取れなくなっていた。
「まったく、これだから浅はかな愚か者は困るんだよ。」