エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第2部 果てしなき旅へと連なる試練 第4章 脅威たちの襲来

第68節 妖精の悪戯、フェアリシアの孤児

 アリヴァール島ですべきことを終えると、次はフェアリシア島となる。 既にセラフィック・ランドの祠捜索隊からも祠の在り処についての報告があった。 フェアリシアの祠については既に聞いた通り元々祠など発見されていないということもあり、 さらにアリヴァール島の一件もあるためいろいろと心配要素はあったものの、 これまでの祠の出現ルールに漏れずフェアリシア島跡にそれらしいものがあったため、 祠であると断定されたそうだ。
 また、フェアリシアの祠が発見されていなかった件についてはフェアリシア島独自の問題であるらしく、 復活すれば理由はわかるということはフェアリシアに行ったことがある者であれば誰でも理由を察せる内容らしい。 というか、どこかのお話でも語られていた通りだが、つまり――
「なるほど、迷いの森か……」
 ティレックスはそう言うとクラフォードは頷いた。
「セラフィック・ランドでも有名な場所で、入ったが最後、行方不明となる事故が絶えない難所らしい。 とはいえ、俺は留学していた時分からそこにちょくちょく行ってた口だが、それでも迷子になった試しがない。 最初はそんなこともあって敬遠していたんだが、どうしても入りたがっててそれでも無事に生還してくるっていう謎の女がいてだな――」
 と、クラフォードはこれ見よがしにと当人がいるところでわざとらしく言った。それについては当人が――
「えへへっ、私のことですねー。 そうなんです、なんていうか、なんであの森で迷うんだろって何度か思ったことがありますね。 だから私、別にあの森のことは全然危ない森だと思っていなくてですね、むしろ庭みたいな感じです」
 彼女はシオラである、”ネームレス”の一員”フェニックシアの孤児”ならぬ”フェアリシアの孤児”とでもいうべき存在である。 クラフォードは腕を組んだ。
「そうなんだ。 俺らにもシオラの能力が伝播したんだろうか、 あれ以来、俺らの仲間の誰が入っても平気になった、ウィーニアも単独で行っているぐらいだしな。 それでも依然として行方不明者は出ているから、シオラとあの森には何か関係でもあるんだろうな」
 そこへリファリウスが言った。
「それって、単純に”フェドライナ・ソーサー”の影響じゃないかな。 アリヴァールの祠の入り口の件をイメージしてくれればわかりやすいと思うけれども、つまりは普通だったら”まやかし”が見えるんだ。 迷いの森という場合は往々にして何かしらの魔力で小細工されていることが多く、だからつまりは世界の管理者の流れをくむ精霊族の法、 つまりは”フェドライナ・ソーサー”の守護を受けていればそんなものに惑わされずに済むっていう話だよ。 まあ、アリヴァールの祠の入り口もフェアリシアの森も違うものだから単純に同じとは言えないけれども――」
 シオラは頷いた。
「なるほど、私は精霊魔法――具体的にはその”フェドライナ・ソーサー”の使い手ですから、影響は受けなかったんですね。 そして、この私の力がみなさんを守る力にもなったと――」
 リファリウスは頷いた。
「それによってキミらも森に受け入れられたってワケだよ、あ、この人たちは仲間なんだって。 だから”黄昏の丘”という素敵な場所へと辿り着くことができたんだ。」
 シオラは目をキラキラと輝かせながら言った。
「なるほどです! それはなんだか嬉しい話ですね! それにすごくロマンチックです!」
 まあ、そういうこともあるのか、クラフォードは思った。
「何の話だ?」
 そこへガルヴィスが入場、すると――
「あーあー、ぶっ壊し屋が来たな、面倒だからお開きにするぞ。 そうと決まったらさっさとフェアリシア編を攻略してしまうか」
 クラフォードがそう言うとリファリウスは頷いた。
「そうだね、そのほうがよさそうだ。 確かに、復活させてなんぼということは間違いないからね――」
 そう言いつつ、その場は散会してしまった。
「なっ、なんだよ、話をしてたんじゃなかったのか。 てか、そもそもアリヴァールに武器を見に行くんだろ? その話はどうなった?」
 ガルヴィスが驚き気味にそう言うと、リファリウスは答えた。
「ああ、悪いけど一部のメンバーについては後回しにすることにした。 目の前がフェアリシア編であるという以上、気が気じゃあないんだ。 焦る気持ちもわかるがとりあえず落ち着けって言われることも承知の上さ、それだけに情がこもっているからね。」
 それに対してガルヴィスは頷いた。
「いいよ、行けよ」
 えっ、リファリウスは疑問に思っていた。
「今回は俺は行かない、フェアリシア組に任せた」
 どういう風の吹き回しなんだ、リファリウスは訊いた。
「キミって自分勝手なやつだと思ったけど、案外そういうところを気にしてくれるんだね。」
 ガルヴィスはため息をついて言った。
「んなことどうでもいいから、俺の気が変わらないうちにさっさと行け」
 リファリウスはにっこりとしながら答えた。
「OK. じゃあそういうことにするよ。」

 ということで、フェアリシア組であるシオラとクラフォード、そしてウィーニアとローナフィオルとディアナリスがやってきた。
「全員というわけにはいかなかったね」
「あっちでもやることはあるからね。ま、やっぱりアトラストに全部丸投げしてきてよかったってところかな?」
 ローナフィオルとウィーニアはそう言った。一方でそれ以外のメンバー……
「なんで俺も?」
「いいじゃん、ディアナリスがいるんなら私たちだって!」
 ティレックスとユーシェリアである。さらには当然のごとく、リファリウスもいた。
「場所がフェアリシアだからね、何かあったらマズイし。」
 シオラは頷いた。
「セラフィック・ランド第4都市でもありますからね、 アリヴァールの時みたいに回帰への道の謎が複雑になってくるようなら私たちだけでは太刀打ちできないかもしれません」
 そして、船に残ったフロレンティーナさんとアリエーラさんは言った。
「そうね、リファ様がいれば百人力よ♪」
「それでは、何かあったら教えてください! 私たちは少し離れて待機していますので!」
 私もその船で待機していたい……

 フェアリシアの洞窟は一本道だが、一本道どころか階段を下りる前から降りた先までずっと直線道だった。
「ひたすら真っすぐだな、どういうことだ?」
 と、言っているわきから分かれ道が。道は真っすぐ行くか左に行くかの2択である。 どっちだ? クラフォードが言うとリファリウスは答えた。
「左はすぐそこで風の流れが止まっている、直進するのならまだ先まで空間が伸びているようだ。」
 左はすぐそこということは行き止まり――こういう場合はまずは行き止まりから見てみるべきが鉄則だな、ティレックスは思った。 すると案の定、
「じゃあ、左から行ってみるか」
 クラフォードはそう言うと全員頷いた。

 左に曲がると右に曲がる道があり、そのまま曲がることにした。 だが、曲がった先はまさに行き止まりだった。
「確かに行き止まり、祭壇はこっちじゃないみたいだね」
 ウィーニアはそう言うとディアナリスは気が付いた。
「ねえ、あれ――なんか刺さっているよ?」
 通路の端っこに何かが刺さっているようだった。それをティレックスは引き抜くと、それはあっさりと抜けた。
「なんだこれ、剣か?」
 確かに剣のようである。だが、クラフォードは――
「なんだこれは…… むしろガラクタ同然の代物だな、まあ、こんな洞窟にあるんだから仕方がないか」
 そう言いながらリファリウスに促した。 クラフォードが言うようにガラクタ同然の代物である。 そもそも剣と言っていいのかも怪しい、石を固めて作られたような刀身と、まるで子供のおもちゃである。
「洞窟にある以上はお話にならないか、期待するほどのものじゃないよな――」
 ティレックスもそう追随すると、リファリウスは意外なことを口にした。
「いや、お2人の意見は確かにもっともだけれども、こいつの性能はそれだけで判断できるものではないみたいだね。」
 なんだって!? 2人は驚いた。
「確かに切れ味こそ最低と言っても過言ではない代物である点は否めない、 物理的な切れ味はまず期待できず、一般的に市販されている剣のほうが断然いいことについては異論はない。 だけど我々はどうやら、1つ肝心なことを見落としていることに気が付いたようだ。」
 えっ、それは一体!? こういうことだからリファリウスを連れてくるのはまさに正解だったようだ、 この場にいるほぼ全員がそう思うと、リファリウスは続けた。
「こいつの真の能力は精神を断つ能力、つまりは”精神斬り”を可能にしていることだよ。」
 えっ、精神を断つ能力!?