なんだかんだマダム・ダルジャンで過ごした一行、アリヴァールの祠へとたどり着いた。
そして、例によってリファリウスが最後の”ブリーズチャート”を石板のところに納めると――
「おい、本当にこれであっているのかよ、何も起こらないじゃねぇか」
ガルヴィスがつっけんどんにそう言った。それに対してリファリウス、
「それを私に言ったってしょうがないだろう、
私だってそもそも答えというのを知らないんだから憶測で事をこなしているに過ぎないんだ。
だから、そう思ったらガル君もきちんとどうすればいいか答えを見つけてくれると助かるよ。」
そう答えるとガルヴィスは何も言わず、そっぽ向いてしまった。
「なんだよあいつ」
クラフォードはそう言うとリファリウスは言った。
「まあまあ、いつものことだから気にしないであげて。
ただ、これまでほかのブツを納めた場合は弾かれていたのに今回は4つとも弾かれずにいるから何かしらの効果があるとみるのが自然だろう。
だから少なくとも、既に何かがあったのか、何かがこれから起こるのか、そう考え……」
だが、話の途中で急に地鳴りが――
「ん? なんだ? 時間差か――」
アーシェリスはそう言った、ほかの面々も周囲を見渡して警戒していた。
「一体、何が起こるって言うんだ!?」
ティレックスはその場で踏ん張っていた。それにしがみついているユーシェリア。
もはや立っていることが困難なほどに揺れていたのである。
「ちょっと、ヤバくない!? 一旦外に出たほうがいいんじゃあ――」
そこへリファリウスがすかさずフロレンティーナさんの元へとすぐさま駆け寄り、彼女をお姫様抱っこで支えた。
「まあ♥ 得しちゃった♥」
というのも、リファリウスは地面から少し浮いていたのである、魔法の力か。
同じく、アリエーラさんも同じ方法を使い、カスミを支えていた。
「カスミさん、大丈夫です?」
「大丈夫、ずっとこのままでいられるのなら特に」
確かに。そして石板の後ろの壁がゆっくりと割れていくと、そこから入り口らしきものが――
「リファリウス、あれ――」
クラフォードが指さして言うと、リファリウスは反応した。
「やはりだね、風の流れ的に空間があるのは感じていたんだ。」
「だったら、お前のいつものお得意の”兵器”でこじ開ければよかったんじゃないか!」
ガルヴィスはそう訴えるとリファリウスは言った。
「いや、それは無理な相談だ。
こんな祠だからね、下手なことをすれば崩れる可能性は高い。
それに壁じゅうかなり強力な魔法でカバーされていて、下手なことをすれば弾き返される可能性も高い、
だからここは正規の手順と言っていいのかはともかく、普通に謎解きをしていくしかなかったってワケだ。」
「不用意に手出しするもんじゃないってことだな、ちゃんとルールに従えと」
ヒュウガはそう言うとリファリウスは頷いた。ヒュウガも少し浮いていた。
「そういうことだね。」
揺れが収まると一同は体勢を立て直し、入り口を確認していた。
「とりあえず、第1関門は突破というわけだな。
問題は祭壇を見つけるということなんだろうが、ここでもそのルールは同じなのだろうか」
ティレックスはそう言うとユーシェリアが答えた。
「まあ、行ってみればわかるんじゃない?」
ティレックスは呆れ気味に答えた。
「そーゆーとこ、リリアさんにそっくりだよなお前――」
ユーシェリアはそう言われると、リリアリスよろしく得意げな態度をしていた。
とまあ、そんなこんなで一行は開かれた入り口へと入って行った。
祭壇への道筋についてはこれまで同様にただの一本道だった。
途中で門番との戦いに差し掛かるもその戦いでも大体結果は見えている、”ネームレス”無双であるためだ、
今のエンブリア勢でも十分に余裕を以て勝てるレベルにもなっていた。
しかし、それでもどうしてもアリヴァールの祠を語る上では欠かせない要素が一つだけあった。
「なんだこれは! これ、本当に地下洞窟なのだろうか!?」
と、ティレックスが言った。何故かというと、内部はまるでどこぞの無限回廊のごとく、
壁の外の構造までが透けて見えるのである。
背景は白というか枯草色というか女郎花というか、要するに若干影がかかったような明るすぎない白い色という明るさのため、
それにより離れている通路までが丸見えなのである。それこそ、最下層の祭壇の位置までわかるぐらいだった。
「魔法で作られた回廊?」
フロレンティーナさんはそう言うとアリエーラさんは頷いた。
「言ってしまえばそうだと思います。
ということはもしかしたら、これまで回ってきた祠自体も元々は魔法で作られたものなのかもしれません。」
「でも、どれも人の手で作られた洞窟って感じだったぞ」
ガルヴィスはそう言うとリファリウスが言った。
「いや、”元々は”魔法で作られたもの、だね。
前にも言ったとおりだけど、アリヴァール島はもしかしたら中途半端なところで作るのをやめてしまっているから、
こんな装いなんじゃないかなってことだよ。
中途半端というのは、ほかの島との違いはこの後の工程として洞窟の内観として作ることをしたのかしなかったのか、そういう違いだって意味だよ。」