ディスティアは自分の剣を構えなおし、向かってくる男共に対して次々と剣を浴びせていった!
「ぐはっ! こいつ、強い……強すぎる!」
不殺ずの極意、酷く痛めつけただけで命まで奪うことはなかった。
「すみません、こればかりはどうしても”約束”ですから、譲るわけにはいかないのです。
ですから、どうしてもというのなら、私はあなたとて容赦は致しませんよ!」
ディスティアは力強くそう言うとシュリーアは楽しそうに言った。
「ウフフ♥ 容赦しないってどういうことかしらぁん♥
だったらほぉらぁ♥ やってごらんなさいな♥
この私の美しすぎるボディ、どうしたら傷がつけられるというのかしらぁん♥
さあほら、やってみなさいな♥ ウッフゥン♥」
と、シュリーアは色気全開でディスティアに迫ってきた。
それこそまさに誘惑魔法の中でもかなりの効力を誇る大技、男共が攻撃をためらうこと請け合いの能力だった。
それを知ってか、シュリーアは半ば裸に近いフォルムの立ち姿で完全に丸腰かつ、あらためてディスティアを誘惑し、
自らの手足とするべく、いい香りを漂わせた――
「ウフフ♥ その油断が命取り……やぁっと気を抜いてくれたわねぇん♥
そう、あんたには別の女の影がとりついていたのねぇん♥
でも、残念だけどどうやら表面的なものでしかなさそうだから――ウフフ♥
これでアンタはアタシのもの……これからはアタシの美の奴隷として生き続けることを義務付けるわぁん♥
さあ、早速……女王様とお呼び! そして女神様として崇めなさい!
これからアンタにはアタシの美の奴隷としてその身にこのアタシの印をつけてあげるわぁん♥
さあ……いらっしゃぁい♥ このアタシを早速アンタ好みの女にして頂戴なぁん♥」
それによってディスティアは少々油断を見せてしまっていた、
これによって彼は彼女に取り込まれ――
「甘いですよ」
ディスティアはそう言いながら納刀していた。
「へ?」
まさか……今のが効いていない!? シュリーアは焦っていた。
「確かに油断はしました、しかし武人たるもの、そのまま油断をさらすなどとはあってはならないことです。
それに……逆に無防備なところをさらし続けてくださるものですからおかげさまでうまい具合に決まりました!」
な、何を言っているんだこいつ、決まったって――シュリーアは言い返した。
「何言ってんのよ! バッカじゃないの!? アタマおかしいんじゃないのアンタ!」
「ええ、そうかもしれませんね。さて、そろそろエレイアさんを出して――」
「ぐあーっ! もう! だからんな女いねぇって言ってんでしょ! エレイアはアタシ!
いい加減にしろ! この男! もういい! さっさとこんな男、始末して!」
シュリーアは再び鞭で命令、だが、周囲の男たちは反応がない――
「なによ! どうしたのよ! お前らまだ死んでねえだろ!
アタシのために死ぬまで動き続けるんだよ! ほら! さっさとしろ!」
だが、その時――
「な、なに……コレ……」
シュリーアは急に苦しくなり、その場で膝をついた――。
「甘いですよっていいましたよね?
実はその時に既に既に決着をつけさせていただいたんです、
相手が至近距離だというのに話があまりに長いものですからね、とっても簡単なことでした。
無論、今のは少し反則だったことは認めます、ですが――
至近距離であなたは多数の者を従えている分だけ有利なはず、だからお互い様ということにしておきましょうか――」
「ば、バカな……このアタシの身体を男が傷をつけるなどということ――」
「できますよ? だって、私には聞こえます、自らの身体を悪用する者をやっつけてほしいって……
私はその声に耳を傾けたまでです、もっとも、そうでなくても私ははなっからそうするつもりでした、
今度こそ”約束”を守るためにですね――」
彼はそう言い切ると、シュリーアはその場にぐったりと倒れこんでしまった。
すると、そこへあの男が飛び出してきた。
「なんだ、どうしたんだ!? 我が妃シュリーアよ!
何があった!? どうしたというのだ!? しっかりするのだ!」
そいつはドライアスだった、ディスティアのほうへと向き直ると、そいつは激怒しながら訴えた。
「己ぇ貴様!何をした! 私のシュリーアに向かって、一体何をしたんだ! クソォッ!」
そいつは何かを取り出した、機械のようなもの、必死に操作しているようだった。
だが、そこへディスティアがもまた怒りをあらわにして訴えた。
「彼女はシュリーアではないしお前のものでもない!
彼女の名前はエレイア! 私にとって掛け替えのない、大切な人だ!
それをお前は踏みにじった、その恨み今すぐここで晴らしてくれる!」
それにはドライアスも言い返した。
「なんだと!? 貴様は何を言っている!? この女は私のものだ!
こうなったらこの女の残り香を使って周囲の奴隷共で貴様を――」
と、ドライアスは再び機械を操作していると――
「もしかしてあなた――」
シュリーアは苦しそうに右手を自分の胸にあてたまま左手をまっすぐと差し伸べていた。
それに気が付いたドライアスはシュリーアのほうに慌てて駆け寄った。
「おお、どうした私の大事な女神よ、今すぐお前のことを――」
しかしシュリーアは駆け寄ってきたドライアスの存在を振り払い、
真っすぐとディスティアの目を見ていた。
「もしかしてあなた……ディル……?」
ディル!? ディルってまさか――ドライアスは恐る恐る後ろを振り向くと、
その男、ディスティアの顔を改めて確認した……
「ま、まさか貴様……あの万人斬り――」
するとディスティアは抜刀し、躊躇することなくドライアスを瞬時に切り刻み、殺した――
「ひっ、ひぃぃぃぃぃ……」
いや、殺すつもりはない、すんでのところで踏みとどまった。
そう、彼は”万人斬り”ではなくなったのだから。
「”元・万人斬り”だ。とりあえず、改めてお前に問うことにしよう。
彼女はシュリーアなどではなく、エレイアという名前の女性だ。
彼女は私にとって掛け替えのない、大切な人なのだ。
だから彼女は返してもらおう、それで異存はないな?」
ドライアスは声も出せず、そのまま首を縦に激しく何度も振った、OKと受け取って差し支えなさそうである。
しかし実に惜しい、万人斬りを卒業したタイミングが悪かったというべきか、
ディスティアとしては腰が砕けて立ちすくんでいるこの男を殺せないのがあまりにも惜しいことであった。
さる人に言わせれば生き恥をさらしてやれってことなんだろうが、
こいつはセイバルの中でも相応の実力者、放っておくのも問題が大きすぎるかもしれない……
が、それはそれだ、再びこのようなことがあればその時はまた――
「エレイア、大丈夫か?」
ディスティアはエレイアの元に近づいて彼女を抱きかかえあげた。
「ディル……すごい、助けに来てくれたんだ――」
エレイアはか細い声で彼のことをじっと見つめていた。
「今は何もしゃべるな、傷に触る。
再び核に傷をつけてしまったんだ、安静にしていた方がいい――」
ディスティアは彼女の核を傷をつけたのだった。
それは当然、例のシェトランドをコントロールするための遺物を破壊するということを行ったためであり、
それによってもちろんエレイアの胸元からはそれ相応の流血が――
「リリアさん、うまくいきましたよ!」
彼はそう言うと、やや遠めに腕を組んで得意げな態度で見ていたリリアリスが前に出て話した。
「まあね、シェトランド人って結構タフだから、
ちょっとやそっと傷ついたり血出したりしてもそう簡単には死なないのよね。」
言われてディスティアは悩んでいた。
「いや、あの……だからって、それはそれであんまり気持ちのいいものでは――痛いものは痛いですし……」
ディスティアは改めてリリアリスに訊いた。
「ところでリリアリスさん、あと時間はどのぐらいです?」
リリアリスは得意げに答えた。
「あと8分程度ね。
ある程度はカタが付いているハズだから、あとは私らが脱出するだけってところよ。
時間はたっぷり余裕を持たせてあるからゆっくりと建物から離れられるわね。」
それなら脱出を――と思ったが、ディスティアは肝心なことに気が付いた。
「ああ、そう言えばあなたは――どうします?」
ドライアスにどうするか訊ねることにした。そいつはそのまま腰を抜かして立ちすくんだままだった。
「立てないのですか? 手を貸してあげましょ――」
と、ディスティアは手を差し伸べたが、ドライアスは慌てて逃げ出し、
腰が引けているのか何度も何度も転びながらその場から一目散に逃げだした。
「あれ、建物の中心のほうに行った?
もしかしたら逃げちゃいけない方向に行ったって感じね、
せっかく元・万人斬り様の技にかかって生きながらえたっていうのに……」
リリアリスは呆れていると、ディスティアは頷いた。
「うーん、自ら命を投げるというのは――本来であれば止めるべき立場ではあるのですが、
この際ですから、彼の存在は見なかったことにしましょう」
賢者様にも見捨てられるとは……もはや救いようがなかった。
まあ、因果応報ということで命を諦めてもらうほかなさそうな感じである。
そしてあの後、リリアリスは時間を示した通り、
セイバルの本拠地……いや、あの島の拠点をすべて爆破して吹き飛ばしたのである。