シュリーアの誘惑魔法はより強大な能力である。
それこそ、離れた男の心すら回収しようというほどの力である。
もっとも、それについてはカラクリがあり、
生物兵器として改造されたが故のドーピングみたいなものが影響していた。
ただ、離れた男の心というか、例の”離れていったボウヤたち”については彼女と寝たことが影響として最も強いことなのだが。
それはプリズム女……いや、魔女と夜を共にした男は魔女から逃れられなくなる……
そんな恐ろしい言い伝えがあるのだが、まさに文字通りの展開ということである。
遠く離れた男についてはともかく、一方で近くの男についてはこの通りシュリーアに突き従っており、
まさに彼女の手足として動いているほどである。
それはまさに誘惑魔法によるものであり、これはまさにプリズム女由来の能力そのものである。
言ってしまえば世をかき乱す力、ララーナが言うように、自分たちの力を悪用している例がコレということである。
それゆえにプリズム族は掟に従い、里の中でひっそりと暮らしている種族なのである。
プリズム女でもラミキュリアやララーナが外に出ているのも特別なことで、
誘惑魔法の能力を抑制できるからこそのこと……つまりそれができなくば里の外に出ることは許されないのだ。
さて、そのような前提条件があるわけだが、そのうえで、
何故ディスティアにはシュリーアの誘惑魔法が通用しないのか? それが大きな疑問として立ちはだかっている。
だが、そのカラクリは意外と単純なことだった。
「うふふっ♪ いいのよ、私のディール♪ お姉ちゃんがいい子いい子してあげるから♪」
彼女はレヴィーア……そう、リリアリスである。
「あ……の……一応聞いておきたいんですけど、これ……いつまで続けるんですか?
ご存じのように、私はエレイアを何とかしたいんです、つまり、私には彼女がいるということです。
それに……あなただって男に興味ないばかりを装っているようですが、それっていうのはつまりは嫁入り前ということなのでは?
だから……なんか、こういうのって良くないのでは――」
毎日続けるうちにそろそろ打ち明けたほうがいいと考えた以前のディスティア、
最初のころは恐ろしさばかりが優先されてとてもではないが言えなかったが、
意を決して言うことにした彼だった、すると――
「エレイアを何とかしたいんでしょ? だから続けてんのよ。」
意味が分からない、どういうことだ?
「純粋にエレイアに会いに行くというのなら別にここまでしないわよ。
でも、それがただのエレイアじゃないからこんなことやってるってワケ。
あんた、あのエレイアに……改造エレイアに引き込まれていたんでしょ?」
そ、それは――言われて悩んでいた彼。
「例えどんな極意を手に入れようともあんなのに引き込まれた瞬間バッドエンドに決まってんでしょ。
だって、あんたは男、改造エレイアはプリズム女の力を手に入れた、
プリズム女が男の心を奪う行為はそもそも朝飯前……ただし、あんたの精神力がその行為よりも勝っていれば別だけど、
改造エレイアのベースがエレイアである以上、あんたにとっては厳しい相手にしかならないのよ。」
い、言われてみればそうだ――ベースがエレイアだったから気を許してしまった、
それゆえに敗北を期したのは事実……彼女の言うことは圧倒的に正しかった。
「ちなみにプリズム女ってのはそういう種族だからね、だからなのか、妊娠する確率が極端に低いのよ。
それゆえに、プリズム女は尻軽でなければ勤まらんのよ、
だから嫁入り前とか言われたって実際に結婚して子供ができなければそれこそ女を語る資格なし――
例えこのご時世、子供を作るつもりはないという決断だとしても、それなりの”準備”はするものよ。」
”準備”?
「言ってしまえば、えっちする回数を経験値にするってことね、
それによってある程度は妊娠する確率が増やせるんですって。」
え……えぇ……
「安心しなさいよ、だからって別にアンタとはヤるつもりはないから。
それに、もしアンタからやろうと迫ってきた際にはその前にぶち殺すつもりでいるしな。」
やっぱり怖いわこの人。
要は、ディスティアの”お姉ちゃん”がディスティアのことをシュリーアの腐臭から護るため、
”お姉ちゃん”の誘惑魔法の力がディスティアに働いているということである。
まさにプリズム女という妖魔の女同士の男の取り合い……だが、
”お姉ちゃん”の力については強力な味方がおり、それはエレイアである。
ディスティアの心にずっと「エレイアを助けなさい。」とお姉ちゃんは訴え続けている……
そうだ! ”お姉ちゃん”の言うことは正しい! 自分はエレイアを助けるつもりなんだ!
そのためには改造エレイアを攻略するべきなんだ! リリアリスは完全にディスティアの心をガードしていた。
ただ……はたから見れば、本当にあのリリアリスが誘惑魔法を行使しているのかがいささか疑問である。
だって……あのヤバイお姉さんのリリアリスだぞ?
誘惑魔法なんていう最も縁遠い能力を使っていること自体が信じられないのだが、
しかもこのディスティアに対して効果があるというのも……。
そう考えると、このリリアリスでさえ、なにやら大きな秘密を抱えているのかもしれない。
「もうそろそろ終わりにしませんか、シュリーアさん?
あなたに勝ち目はありません、ですからそろそろエレイアさんを出していただけますか?」
シュリーアの隷たちを次々と下しているディスティア、
彼はそう訊くが、彼女はブチギレていた。
「シュリーア”さん”なんて呼ぶんじゃないわよ! アタシは女神!
すべての男という男の欲望を満たすことのできる至高なる存在!
そんなアタシの美の奴隷である男ごときがそんな呼び方をするなんて許されないわよ!
いいかしら! 男が私を呼ぶときは”様”をつけなさいな!」
なんか、改造エレイアは面倒くさい人だな……ディスティアは呆気に取られていた。
「わ、わかりました、えっと……女神様? エレイアさんを出していただけます?」
シュリーアはなおもブチギレていた。
「ああ! もう! さっきからエレイアエレイアうるさい男ね! よく見なさいよ! アタシがそのエレイアよ!
エレイアは新たに”快楽極楽悩殺天使・ヴィーナス・セクシー・エロティック・シュリーア”様として生きることを選択したのよ!
そして、これからは数多の男共と戯れることを生きがいとする女になったのよ!
お前が知っているエレイアはもうこの世にはいないの! そんなアタシにマトモに口を聞いていいのはドライアス様ただ1人!
ドライアス様はこの世で最高の快楽を与えてくださる至高なるお方! アタシはあの方のために生きることにしたの!
だからアンタは……イケメンだからせいぜいこのアタシの”とっておきの美の奴隷コレクション”に加えてやることがせいぜいよ!
さあ、さっさとこのアタシの身体で乱れることを望みなさいな! ほらぁ!」
だが、そんな中――ディスティアには別の声が聞こえてきたような気が――
「エレイアの助けを求める声が聞こえる――エレイア、私を信じろ!」
するとディスティアは、その女の向かって剣を――
「女神様に向かって何様だ貴様! 今すぐ始末してくれるわ!」
だが、そんな彼にシュリーアの取り巻きたちが一斉に襲い掛かってきた!