「いいわね、賢者ディスティア! ということはつまり”ディア”ってところね♪
いいじゃない♪ 今度、ウチに来てゆっくりとしていかない?」
ケンダルスを少し離れると、まもなくあの女に出くわした。
ディスティアは相手の女のそのセリフに呆気に取られていた。
「なによ、別に取って食おうなんて考えているわけじゃあないわよ。
あんたが”賢者様”だからに決まってるでしょ。
賢者様は丁重に扱わないと罰が当たるって、自覚してる?」
そういえば――ディスティアはそういうしきたりがあったことをなんとなく思い出していた……いや、そうだっけ?
なんか釈然としないような……
「ということは、賢者様らしく振舞うべし……そう言うことになりますかね?」
ディスティアは改まり、畏まりつつそう言うと、相手の女はニヤッとしていた。
「まーた随分と角が取れたもんね、昔のあんたとは到底思えないわね。」
「ははは、そうですか……」
ディスティアは少し照れていた。
「賢者様なんだからなんでもいいに決まってるでしょ?
もっとも、だからこその”賢者様らしく振舞うべし”なのかもしれないけどね。」
言われてみればそういうことか……ディスティアは考えていた。
「それにしても、どうしてここへ?」
ディスティアは改まって訊ねると、女は答えた。
「連絡を受けたからよ、あんたがここを出るってさ。
だからいの一番にここに飛んできたってワケ。”約束”のために足がいるでしょ?」
それは――確かにその通りである。
「そういうわけだからさ、四の五の言ってないでさっさと激戦地へ行くわよ、ディア様♪」
ディア”様”って――ディスティアはさらに照れていた。
「いいじゃないのよ別に、イケメンの賢者様とか超高額物件じゃないのよ。
そんな相手とこんな会話ができるなんて――エレイアが羨ましいわね。」
女はとても楽しそうに言うが、ディスティアはずっと照れていた。
「そ、それよりも――なんてお呼びすればいいでしょうか?
”お姉ちゃん”のほうがいいでしょうか? それとも――」
ディスティアはそう訊いた、彼にとってその”お姉ちゃん”といえばあのレヴィーアのことだが、
その正体は彼もよく知るリリアリスという女性である、もちろんこんな独特の女性、
レヴィーアだって言われても正体はまるわかりである、
見た目姿はプリズム女性らしく育ちが良くてお上品そうな清楚そうなお嬢様的な服装をしていたが、
今は身体にフィットしないような低露出おワンピース姿……これが彼女の普段の格好である、
そんな恰好をされればディスティア的にもしっくり来ていた、だってそもそもファースト・インプレッションが……
いや、今はお察しくださいということで……いろんな意味で恐ろしいエピソードだしな。
まあいい、そんなことより話を続けよう。リリアリスは話をした。
「そうね、”お姉ちゃん”ってのもそそるけど、
いつまでもお姉ちゃんにべったりっていうのもアレよね、賢者様的にもさ。
だから――まあ、賢者様になったわけだし、今後は好きに呼んで頂戴な。
もちろん”お姉ちゃん”でも大歓迎! それならそれでディア様を可愛がってあげるわね♥
それとも呼び捨てしたいとか?
あら♪ それならそれでお姉さん大歓迎、そん時はちゃぁんと私のこと可愛がってね♥」
ひたすら一方的に嬉しそうに言う彼女とは対称的に、ディスティアはひたすら狼狽えていた。
「い、いや、あの、その……」
「冗談よ、そもそも他所の女の男に手ぇ出す趣味ねえしな……ってか、そもそも男は間に合ってるからな。
ま、でも、それでも”お姉ちゃん”に甘えたいってんなら気にせず私に――」
また同じこと繰り返しているような――ディスティアは早々に話を切り上げようと口をはさんだ。
「わかりました! それでは、セイバルの島までよろしくお願いいたします、リリアリスさん!」
ということで、ディスティアはリリアリスが運転する傍らに停めてあった四輪駆動のオフロードカーに乗り込み、
そのまま西に向かって爆走、その途中でガレアの高速艇に乗り換え、セイバルの島へと赴いた。
「なによ、”さん”付けなんて当たり障りのない――」
「じゃ、じゃあどうしてほしいんですか!?」
「どうしてって? 別にぃ?」
女性ってのはこんなもんか、そろそろディスティアも慣れてきていた。
舞台は再びセイバルの島の本部内、シュリーアを前に果敢に挑んでいる男の姿があった。
「ふふっ、あなたなかなかやるじゃない。次の隷、前に出なさい!」
シュリーアはその男に対して次々と隷を差し向けていた。しかしその男の強さは圧倒的だった。
「あの、そろそろやめません? それでもどうしてもというのであれば、
あなた方が全員一度にかかってきても一向にかまいませんので――」
果敢に挑んでいる男、それこそがあのディスティアである。すると――
「あん? テメエ、女神様の力をなめてんのか!? テメエごときが女神様の御身に触れられると思ってか!」
と、シュリーアの隷の一人が怒りをあらわにしながらそう言った。
それに対してディスティアは前向きに話した。
「そうですね! 彼女、とてもおきれいな方ですからぜひに触れてみたいものですね!
というのも、そもそも私の目的は実はそれなんですよ!」
それについて、シュリーアはニヤっとしていた。
「あらぁん? もしかして、私の隷になりに来たのかしらぁん?」
ディスティアは得意げに答えた。
「どうですかねぇ? 第一、隷ってどうやってなるんですかねぇ?」
シュリーアの懸念事項はそれだった、
そう――男とあらば誘惑魔法を用いれば心を速攻で回収すればよいのだが、
この男にはそれが通用しないのである、それならこいつはただの役立たず、処分してしまえばいい――
ということだが、それもうまくいかなかったのである。
「この男! 何がどーなってんのよ! アタシに跪くか死ぬかどっちかにしろ!
アタシは女王様! この世界の女神様よ! 女神様の言うことは絶対!
それ以外は認めないわ! お前たち! さっさとこの男をブチ殺せ!」
シュリーアは何もかもがうまくいかないために、イライラしながら鞭で地面をひっぱたいていた。