イールアーズらはシェトランドの後続部隊が来ると、セイバル軍を本格的に攻撃するためにとある作戦を打ち立てた。
それはとにかくセイバル軍の施設をド派手に攻撃を繰り返すことであった。
それはそれはもう、セイバル軍にとっては大きな痛手であろう。
特にグレート・グランドが幅を利かせ、さらに協力している勢力がいるあたりがシェトランドにとってはとても心強いばかりである。
対して、セイバルと協力関係を結んでいるところについてはないわけではないが、
特に此度のデュロンド侵攻についてはどう考えても手におえない事案……
むしろセイバルと共倒れとなる可能性のほうがはるかに高く、関係を解消しているところも多い。
関係を解消していないリベルニアやロザピアーナといった勢力もあるが、
少し前にディルフォードが言ったように、セイバルは目の上のたん瘤である……つまりは問題児そのものであり、
協力はするという関係は結んでいてもそれはあくまで条件付き、
いざというときは見捨てられても仕方がない程度の協定である。
つまり、今のセイバルはほぼ孤軍奮闘を余儀なくされているのである。
「こんなもんでいいだろ。さて、問題はどう出るかだな――」
そう言うイールアーズに対してローナフィオルが指摘した。
「イールにしては珍しいじゃない、きちんと作戦を考えて指揮を執るなんてさ」
イールアーズは半ばムキになりながら答えた。
「仕方がないだろ、いつもだったらこういうのを考えてくれるハズのやつが揃いも揃っていねえんだからな。
それにお前が調べた通りならエレイアを元に戻すことが可能かもしれない――そういうことならその方がいいだろ?
巷じゃあいろいろと言われている俺だが流石にそれぐらいのことは考えてる、勘違いしないでもらいたいもんだ」
ローナフィオルはただニコニコとしながら話を聞いているだけだった。
しかし、その2人の様子を見ていたエイゼルは悔しそうに震えていた。
「ローナちゃん、なんでイールと仲がいいんだよ……」
それはむしろお前が嫌いなだけだろ。勘違いしないでもらいたいもんだ。
イールアーズたちの作戦がうまい具合に進んでいると、そのうち敵のほうにも動きがあったようだ。
「あいつ……アイゼルじゃねえか?」
セイバル島の西側の建物の中からアイゼルが現れた。
その様子を見ながらそう言うイールアーズ、さらに続けた。
「セイバル軍の兵隊の待機所、アタリだったようだな。
ここを押さえてしまえば敵の戦力は完全に無力化する――」
そこへエイゼルが――
「アニキ……本当に敵に取られてしまったのかよ、だったらせめて俺の手で……」
自分の剣を握りしめながらアイゼルの元へ――
「くれぐれも早まるなよ! ターゲットが現れるまで持ちこたえろ!」
イールアーズはそういうと、エイゼルは「わかってらぁ!」と答えつつ、そのままアイゼルの前に立ちはだかった!
「アニキ! 今日こそテメェをぶっとばしてやらあ!」
それに対してアイゼルは――
「俺は――メリュジーヌ様のために――」
目が虚ろなまま剣を引き抜くとエイゼルに襲い掛かった!
イールアーズはその拠点から島の中央にある拠点に向かって進むと、
その途中でローナフィオルと合流した。
「始まった?」
ローナフィオルに訊かれてイールアーズは頷いた。
「あっちはエイゼルたちに全部任せてきた。
俺らはこのまま敵の本拠地に向かうぞ」
「りょーかい。でも、エレイアってばどこにいるのかな?」
「あくまで俺の予想だが、敵の本拠地――つまりは俺らが向かう先にいることだろう。
やつらは重要なものほど大体一番重要な施設に隠したがる――今までもそうだった、悪いクセだ」
ローナフィオルは「ふーん」と言いながら納得していた。
しかしその途中――
「なんだ!? 追われている!?」
イールアーズは異変に気が付き、急にその場で立ち止まった。
それに合わせてローナフィオルも立ち止まる――
「えっ、ウソでしょ!?」
2人の背後からアイゼルの姿が――
「貴様ら……誰一人として逃がさん、すべてはメリュジーヌ様のために……」
その様にイールアーズは驚いていた。
しかしそれで終わりではなかった。
「なっ!? どうしたんだエイゼル!?」
なんと、アイゼルの隣にエイゼルが現れた、しかも――
「エイゼル!? 目がおかしいよ!?」
ローナフィオルもまた驚いていた。すると……
「ウフフフフ……まったく、私の庭でオイタをするなんてイケナイ子たちねぇ……」
2人の背後からセクシーな女王様が現れ、不気味に笑っていた。
「まさか……」
イールアーズは自分の剣に手を差し伸べ、構えていた。
「もしかして、エレイア!?」
ローナフィオルは訴えかけるように言うと――
「エレイア? 誰? 私の名前はヴィーナス・メリュジーヌ、
この世界に存在するすべての男を統べるために遣わされた唯一無二の存在よぉん♥」
と、女王様は胸が大きく開き、非常に短い裂けたスカートのドレス姿でとてもセクシーなポーズを決め、
いい香りを立たせていた。
女王様の顔は確かにエレイア、しかしこれまでの彼女の印象とは程遠いセクシーな服装で身を包んでおり、
男たちの目の保養たる存在となっていた。
「ちっ、ふざけやがって! 俺たちシェトランドをなんだと思ってやがるんだ!」
イールアーズは怒りをあらわにしながら剣を引き抜くと、次々と迫ってくる女王様の隷をあしらっていた。
その様にローナフィオルは――
「……ホントなのかな、イールに色香が効かないって……。
でも、イールにとってエレイアってほとんど身内同然の付き合いでもあったから、
エレイアが相手なら本当に効かないのかな……?」
心配そうに言った。
「ローナ! こいつらは俺が引き受ける! だからさっさとエレイアを元に戻せ!」
イールアーズはアイゼルとエイゼルの剣を受けつつ言うと、彼女にそう促した。
「イールも気を付けて!」