ローナフィオルはさらにデータをいろいろと探していたが、
それに対してイールアーズは半ばイライラしながら話をし始めた。
「できればさっさとケリをつけたいのだが。何をいつまでもやっているんだ?」
エイゼルは冷や汗を垂らしながら訊いていたが、ローナフィオルはなんだか真剣な様子だった。
「見てよこれ、この島、地理的な構造以上に広そうよ。
もしかしたらセイバル軍のシェトランド進撃用の本拠地なのかもしれないね。
ということは……だいたいわかるでしょ?」
イールアーズは考えながら言った。
「敵が多すぎるということか。だが、この基地は少し手薄な気がするな」
ローナフィオル答えた。
「セイバル軍の中心拠点から外れたところにあるから目が届きにくいのかもしれないわね」
そう言われてイールアーズはあることに気が付いてローナフィオルに聞いた。
「おい、まさかこの島の地図でも見つけたんじゃないだろうな?」
ローナフィオルは得意げに答えた。
「さっすがイール、わかってんじゃん♪
地図だけでなく、他の拠点の建物の情報まで御覧の通りよ♪」
それにはイールアーズは驚いていた。
「すっげえ! 流石はローナちゃん! 綺麗だし可愛いし、なんでもできるんだな!」
と言うエイゼルを遮りつつイールアーズは言った。
「なんだよ、だったら先に言えよ。
んで、他に何かつかめたのか? 例えば敵の本部の拠点の侵入口とか――」
「もちろん見つけたけど――正直、真正面から乗り込むのは得策じゃあなさそうだから、
他にも探しているところよ。例えば――エレイアを元に戻す方法とか――」
完全にイールアーズの考えを超えていたローナフィオルだった。
エレイアさえ元に戻せれば――案外それが切り札なのかもしれない。
そう考えたイールアーズはローナフィオルに訊いた。
「何か策でもあるのか?」
彼女は答えた。
「傭兵やったことあるイールやアンタなら、
確実に任務を遂行したり辞めたりするときに与えられるものがあるでしょ?
で、もしかしたらそれが今のエレイアにも通じるのかなと思ったんだよね」
任務遂行のために何かを与えられる? 何を? イールアーズはそう訊くとエイゼルは答えた。
「そういや昔、こういうのがあったぜ、
敵陣を崩すのにこちらの陣形を組みなおしたり、撤退命令を下されたりする際、
謝った情報でそういうことが起こるのを防ぐため、暗号というか合言葉による指示だけで遂行するっていうやつがな。
面倒っちゃめんどうだが、それでもあれはあれでなんか面白かったぜ!」
そう言われたイールアーズは頷いていた。
「思い出した、”命令コード”ってやつだな。
例えば”Aの135”って命令コードがあったとして、
そのコードが発令された時には敵に攻撃を仕掛けると前もって取り決めておけば、
みんなその通りにするっていうアレだな。
戦闘中にいきなり変な指示を出されても、それは雇い主側による正確な情報なのかどうかわからん。
その点、コードは関係者間しか知らないことだから、
それを頼りに動けば確実に雇用主の命令通りに事を起こせるっていうわけだな。
それがどうかしたか?」
すると、ローナフィオルは何かの情報を展開して2人に見せた。
「これ、その”バリアブル・コア”の命令コード一覧って書いてあるんだけど、もしかしてって思ってさ……」
イールアーズはその情報をまじまじと見つめていた。
「”E-40832QZ”、”レディ・ベーゼ削除および道徳死天使・ヴィーナス・メリュジーヌ様再起動?” どういう命令だ?」
それを聞いたエイゼルは何やらピンと来ていた。
「そういや敵に取られたエレイアちゃん、
道徳死天使・ヴィーナス・メリュジーヌ様とか言いながらデュロンドとかを攻め入っていたって聞いたことがあったな。
だから案外、そう言うことかもしれねえぞ――」
イールアーズは悩んでいた。
「そういうことってどういうことだよ?
そもそもエレイアがどうしてそんなふざけた命令コードを聞かなければいけないのかがわからん」
そこへローナフィオルは別の資料をイールアーズに見せていた。
「多分、これのせいじゃないかなと思う。
セイバルが作った人造シェトランド人の話って覚えてる? ちょっと前にリオーンが言ってたアレよ。
確かにセイバル側にとっては失敗に終わっているプロジェクトみたいだけど、
この資料によると、シェトランド人の核にコントローラを取り付けて操作するということに関しては成果が得られているように見えるのよ。
それがもし、死にかかっているエレイアの”二つの御魂”の再結合が起こる際に取り込まれたとしたら――」
イールアーズは頭を抱えていた。
「マジかよ……まさにあの時にリオーンの言っていたことがそのまま当てはまるってわけかよ――」
出撃前日、そもそもどうしてエレイアがセイバルに加担するハメになったのか、
それだけがわからずにいたイールアーズたち。
「なんでエレイアちゃんが裏切ったんだよ! ふざけんなこのリオン! ディルフォード!
あのディルの野郎がなんかしたのか!?」
「そもそもディルの野郎はどこ行きやがったんだ!
まさか、やつもエレイアと一緒に裏切りを働いたわけじゃねぇだろうな――」
シェトランドの島では怒号が飛び交っていた。
その際にはリオーンも同席し、話をしていた……といっても、
シェトランド人といえばほぼ脳筋みたいなものが集まっているような民族性であるため、
考えるものはほとんどおらず、とにかく何故何故というもんくばかりが飛び交っている状況だった。
だけど確かに、あのエレイアに限って一族を裏切るとは到底思えないし、
そんな彼女に対してディルフォードはどうしたのだろうか、
そういった疑問の数々についてはイールアーズのみならず、ほかのシェトランド人についても同意見である。
「ディルはわからんが、エレイアはワイズによると”二つの御魂”らしい。
それをセイバルが”バリアブル・コア”と呼んでいるのは、みんななんとなく知っているだろ?」
イールアーズはそう言うと、周囲は「まあ、なんとなくなら」と言った感じで返事をしていた。
「待て待て。”てらぱわぁなんとか”とかじゃなかったっけ?」
「そうだ! そうだ! 一体何が何だかわからないぞ!」
”テラ・パワー・コア”はエレイアではなくイールアーズの妹、ルイゼシアのほうである。
こいつら脳筋には一から話をし直さないといけないところもありそうだった、理解してくれるかは一切期待していないが。