ディルフォードはシェトランドの戦士たちの集まる部屋へと赴いた。
「おおっ、一番頼れるやつが来たぜ」
「頼れるやつ?」
「ディル以外にいるかよ。リオーンもワイズリアも腕はいいがノンダクレだし、
イールはシスコンだから妹以外どうでもいいし、ほかにも実力者はいるけどやっぱりディルが一番じゃねえか」
ふん、光栄なことだな、ディルフォードはそう思った。
「それで、その頼れる私にどんな要件だ?」
「おおっ、流石は話がわかるねえ。実はセイバルの島へ直接乗り込もうってことになったのよ。
本島や本土をたたくのも考えたが、とりあえず先に南側の島の研究施設さえ押さえてしまえば、
俺たちの捕らえられた仲間も無事に帰るってもんだろ?」
「本土はルシルメアよりもはるか北のほうだぞ、そうやって行くつもりだ?
本島も我々が所有している船では心許ない航海にしかならない。
それで本島の南の島を抑えようってわけだな」
そう言われて周りは「おおー!」となんだか喚起していた、それだけ話の分かるやつだということだ、
いや、だから普通に考えればそりゃそうだろ、またしてもシェトランドあるあるである。
しかし確かに南側の島の研究施設に自分たちの仲間が捕まっているはず、
そして、シェトランドへの侵攻の拠点となっているその南側の島を制圧してしまえば連中はしばらく侵攻ができなくなる――
そういう算段であれば確かに理にかなっている、ディルフォードはそう思った。
「なあ、どうよ?」
もちろん、彼はそのためにここまで来たのだからやらないという選択肢はなかった。
「それにしても、攻め入るメンバーとしては少々貧弱な気がするんだが、
ヴィーサルとかウェザールとかはいないのか?」
同じオウルの連中の中でも何人かが見当たらないことに気が付いたディルフォード。
「ヴィーサルとウェザールはいねえみたいだぞ、なんかあちこちに担ぎ出されているみてえでな――」
もう少し、ワイズリアに事情を聞いとけばよかっただろうかとディルフォードは悩んでいた。
オウルの里残り80人余り……そういえば里総出でエクスフォスとの戦いという話だったが、
本当に全員そろっての戦いだったようではなさそうだ、それもそうか。
そして、ヴィーサルとウェザールのような他の主要な使い手が依然としていないところから察するに、
なんだかどうも戦の気配がしてならないような感じだった。
決戦前夜、エレイアはローナと共にディルフォードが立っている丘の上にやってきた。
「訊いたわ。明日、敵地に乗り込むんでしょ?」
「ああ、ここでやらねばならない。そうしたら、敵もしばらくはおとなしくなるはずだ」
「うん、そうだよね。それにルーイもまだ捕まったまんまだし」
ローナフィオルが口をはさんだ。ルーイとはルイゼシアのこと、あのイールアーズの妹のことである。
「ねっ、エレイア!」
ローナフィオルがそう促すとエレイアが口を開けた。
「ねえディル、私も一緒に連れてって、お願い!」
連れていくつもりはなかったがそう言うと思っていたディルフォード。
無論、何も言わなければそのまま黙って行く予定だったが、
まさか本当に言うとは思わなかったため、ディルフォードは悩んでいた。
もちろん危険もあるし、いつでも守ってやれるだなんていうことは難しい。
しかし、彼を見つめるエレイアの目は本気だった。これでは仕方がない。
「わかった。エレイア、絶対に離れるんじゃないぞ。そして絶対に死ぬなよ」
「うん! 約束する!」
そんな2人のやり取りを嬉しそうに見つめているローナフィオルだった。
「ローナはどうする気だ?」
ディルフォードは訊いた。
「私は視察に来ただけだから」
ガレアの線か――ディルフォードはそう考えた。
「シェトランドの問題なんだから他種族は首突っ込むな?」
ローナフィオルはそう訊くがディルフォードは首を振った。
「私はローナと同じでそういう考えはない。
それに、これが例え種族紛争だとしてもやがては大きな争いに発展しかねないことは明らか、
そうなれば、早いうちに芽を摘んで置いたほうが得策……私ならそう考えるけどな」
ローナフィオルはにっこりとしていた。
「そうだもんね! ディルもディルのままだ! ねっ、エレイア!」
そう言われてエレイアは嬉しそうにしていた。