ディルフォードは急に倒れたエレイアを抱え、ベンチの上に運ぶと心配そうに見ていた。
「大丈夫か、エレイア!?」
彼女が意識を取り戻すと、さらに心配そうに声をかけた。
「あっ、あなたはえっと、その――」
どうしたんだろうか、まさかまた記憶が――ディルフォードは少し不安だった。だが――
「ねえ、ディル……私と――」
良かった、恐らく記憶は大丈夫なようだ――ディルフォードは少し安心した。
それで何をご所望なのだろうか、ディルフォードは少し焦っていた。
「ううん、私のことしっかりと抱きしめて!」
どうやらなにか嫌なことがフラッシュバックしたらしく、とても怖い思いをしていたようだった。
ディルフォードはそんな彼女を優しく抱きしめた。
「ね、ねえ、私ってどうかな……?」
「どうって? エレイアはエレイアだろう?」
「ううん、そうじゃないの。ディルにとって私ってどう映っているのかなって――」
それは――ディルフォードはそんなことを改めて考えたこともなかった。
改めて言うことになるが、エレイアは彼にとっては妹みたいなもので、大切な人でもある。
妹であるのだが、大切なパートナーとなるべき人でもあると思っている。
彼女は彼を振り向かせようと頑張ってきたことからも、ディルフォードという男と一緒にいたい、
それはディルフォードでもわかっていた、彼女に根負けした彼は彼女と一生涯を共にするつもりでいた。
しかしそれを冷静に言うディルフォードに対して、エレイアは――
「うん、そうだよね、ディルはそういうことしか言わないんだよね」
そういわれてディルフォードは少し反省した、お前が好きだ! みたいなことを言えばよかったのかもしれない……
「それに優しいし、硬派なイメージもあるから、そういうのがディルなんだよね」
確実に見透かされていた、言われてみればそんな気がする、そう言う感じで今まで振舞ってきたのは確かだ。
あの悪漢たちもそう言っていただろう、万人斬りは女なんかにうつつを抜かしていないで敵を斬っていればよい……
ディルフォードという存在はそういう男なのである。
「私って、女として魅力ないのかなあって――」
そんなことは! そう言われるとディルフォードも流石に否定した。
「じゃあ、言って! 率直に言ってほしいの! 私、贅沢かもしれないけどディルに言ってもらいたいの!」
確かに今まで避けてきたというのはある、完全に見透かされていた。
まったく、戦いからは逃げずにエレイアが相手だと逃げ出している、適当な理由を作ってはそれでよしとしている、
本当は彼女だってそんなの望んでいないハズだ、もちろんディルフォード自身もそんなつもりはないし、
いずれかは言わなければいけないと思っている、彼女のために――
だから――ディルフォードは意を決してエレイアに気持ちを伝えることにした。
「エレイア、今まで悪かった。
私はエレイアが好きだ、愛してる。適当なことばかり言っていつも逃げてばかりですまなかった。
エレイア、お前は本当にきれいだ、あの頃とは全然違う――その、なんていえばいいか――」
言ったはいいが、ディルフォードは急に怖くなった。何やっているのだろうか、と。すると――
「やった! ディルに認めてもらえた! 私、嬉しい! すごく嬉しい!
ありがとうディル! 私もディルのこと愛してるわ!
かっこよくって素敵なディル! これからもずっと一緒にいてね!」
そういうと、エレイアは彼の懐に飛び込んだ。ディルフォードは彼女をしっかりと抱きしめた。
そうとも、これでいいんだ、これで――だがしかし、彼女は彼の懐の中で何故かうずくまっていた。
「ど、どうかしたか?」
「えっ? う、うん、うれしいの――どうしよう、とっても幸せすぎてなんだか怖い――」
しばらくは二人っきりにしておこうかと、他のシェトランドたちはその場から少しずつ遠ざかっていた。
セイバル軍のオウルへの侵攻もしばらくはないみたいで、その日はゆっくりとオウルの里で眠れた。
そして朝起きると、やっぱりエレイアがいた。
「あら♪ ディル、おはよん♪」
その時のエレイアはやけに色っぽく、ディルフォードは驚いていた。
汗もかいているあたり、色っぽさに磨きがかかっている感じもあった。
しかも例によってあの裂けた短いスカートの隙間から映えている綺麗な脚……
色っぽいというか、なんだかセクシーにさえ思えた。
不覚にもディルフォード、やはり彼も男だった、何とも魅惑的な彼女のその装いに魅了されていた。
「うふっ♥ 私って可愛い?」
エレイアはさらに色っぽくディルフォードに詰め寄っていた。
「もちろんだ、エレイア。いつもの元気なエレイアが一緒にいてくれて、私も嬉しいよ」
だが、それにしても――その日は寝汗にしては少々度が過ぎているような彼女は汗だくだった、
どうしたのだろうか、ディルフォードは訊いた。
「えっ!? あ……うん、ちょっとした運動をね!」
ちょっとした運動……そうであればいいのだが、ディルフォードは一つ気になっていたことがあった、それは――
「そういえばプリズム族という種族の身体だったか、もしかしてシェトランドの身体と同化しているのか?」
身体はプリズム族の身体とシェトランドの民の”二つの御魂”とが合わさっているのが彼女の身体であるわけだ、
どうしてそうなっているのかはわからないが、もしかしたらその状態が馴染んでないという可能性もあり得る。
となると、事態は深刻なのかもしれない、ディルフォードは嫌な予感がしていた。
「エレイア、辛かったらすぐに私に言うんだ。
無理しなくてもいいんだ、エレイアは――大事な人なんだからな――」
ディルフォードは心配しながらエレイアを抱きかかえ、そう言った。
抱かれたエレイアは何故か慌てた素振りだったが、ディルフォードがそう言うと、
エレイアは安心したかのように彼を抱いていた。
「ディル、ありがとう――」