エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ライフ・ワーク・ログ 第1部 風精の戯れ 第2章 策士の真骨頂

第16節 謎の行動

 さらに数日後、リリアリスは妙に忙しく動いていた。
「何やってんだろ?」
 クラフォードはリリアリスが下に降りていったのを見て首をかしげていた。
「ん? どうかされました?」
 そこへラシルが通りかかった。
「何か知らんがここ最近、遠目から城の上から頻繁に落下物が見えるんでな。 今もまた落下物があったみたいだぞ」
 城の上から落下物!? ラシルは焦っていたが冷静に考えた。
「ああ、リリアさんが昇り降りしている光景ってことですね。 確かにあの人、ここ最近は妙に出入りが多い気がしますね、何かあったんでしょうかね?」
 把握していないのか……クラフォードは悩んでいた。
「……何事もなければいいんだけどな」
 ラシルは頷いた。
「そうですよね、もし問題ごとが起きているのなら言ってくださればいいのに――」
 クラフォードは考えた。
「だな、つまり重大な出来事ではないってことだな、 もしそうだとしたら何か言っているはずだ」
 それもそうか、ラシルは考えた。
「何しているんですかね? もしだったら調べていただけます?」
 この際だからクラフォードは調べてみることにした。

 リリアリスの足取りがつかめないのでクラフォードは手近な人に話を聞こうとした。
「アリエーラさんもいないのか、そういやルーティスに行ってくるって言ってたっけな――」
 すると、その場にユーシェリアがいたので思い切って聞くことにした。
「ん? なぁにー?」
「ああ、なんか妙に忙しそうにしているみたいだからな……」
 クラフォードは事情を説明した。
「ああ、お姉様ね! 確かに、すっごい忙しそうにしているよね!  でもなんだか難しい話をしているみたいで私、全然わかんないんだー!」
 難しい話か――クラフォードは考えた。
「戦争とか戦闘とか、所謂バトル系の話じゃないんだな」
「うん! 少なくともその類の話じゃあなさそうだね!  もしそうだとしたら、例えば戦争だったら今頃関係各所に手をまわしてあれこれしているはずだもん!」
 あれこれ?
「もう、端末に向かって徹底的に敵を欺こうと策を練っているところだもん。 そしたらその後は自らあっちこっちに出向いてやれることは漏れなくやっていく感じだね!  すごい行動力だよね!」
 あの女マジか……クラフォードは頭を抱えていた。 そりゃあ、そこまで用意周到に構えられたら敵を圧倒して当然だな。 無論、戦争というからにはそれは当然の行動で誰しもがやっているハズのことだが、 1人の力でやれることなんてたかが知れている……だがあの女はそれをものともせずにこなしているというのか――。
「そうじゃなくて普通の決闘みたいなものをするつもりなら剣を持って修行に行っているハズだしね」
 修行?
「俺、見たことないんだが?」
 ユーシェリアは頷いた。
「剣を振るよりも精神を集中するというのかな、例えて言うのならカスミちゃんみたいな感じだよ!」
 なるほど、フィジカルよりもメンタルを養っているということか、クラフォードは頷いた。
「単なる天才肌ってわけではないんだな?」
「そうだよ! お姉様は裏で人一倍努力しているんだよ!」
 リリアリスの意外な一面がわかったところで。

 後日、クラフォードはリリアリスのいるテラスへと再びやってきた。 だが、そこには――
「ん? 先客がいるようだな?」
 リリアリスの対面にスーツを着た男の姿があった。
「これでいいかしら?」
 リリアリスは何か紙を手渡していた。
「はいはいはい、少々お待ちを――」
 男はリリアリスから手渡された紙をまじまじと眺めていた、何かの書類のようだ。
「ふむふむ、問題なさそうですね。それでは確かに頂戴いたしました!  それでは、これをお納めください!」
「ええ、これで契約成立ってわけね。」
 リリアリスは何かの書類を受け取っていた。2人は互いに何か納得したようだ。
「それにしてもわざわざ来てもらうだなんて申し訳なかったわね。」
「いえいえ! そんなこと! 行きたいと言ったのは私のほうですからね。 だって、ここはクラウディアスのお城の上! 王室の方々が眺める最高の景色がみられるんですよ!  そうです、王室の方々が眺めるすべての景色こそがまさにクラウディアス様のお庭!  それが一望できるとあらば是非にでも伺わせていただきますよ!」
 今度は雑談のようだ。男は何やら興奮しているようだ。
「確かに、ここの眺めは最高よね。 王族はここの眺めを独占していたということか、まさに王だけの特権というわけね。」
「しかし、今は一般の民にも開放されているというではありませんか!」
「そうね、隣の棟だけど人数限定で解放させていただいているわね。」
「限定なんですよね……申請しても順番待ちが多くてですね――」
「なるほど、それでわざわざ自分から来るって言ったのね。」
「はいー♪ 実はそうなんですー♪  いやあもう――記念に写真など撮っても大丈夫ですかね?」
「申し訳ないけど、今は遠慮してくれるかしら?  隣の棟を人数限定で解放させていただいているのにはそれだけのワケがあるからね。」
 そう言われて男はがっかりしていた。
「今はダメだけど、今度はもう少し制限を緩めて解放する予定にしているから楽しみにしていなさいな。」