エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ライフ・ワーク・ログ 第1部 風精の戯れ 第2章 策士の真骨頂

第14節 新たなる時代へ

 ということでリリアリスは後日、まずはセラフィック・ランドの調査会社に依頼をし、 実態調査のために早速動き出したのだった。 他所の国の会社に頼むということで反発も多かったが、 調査を頼める機関がクラウディアスにはないということで仕方がなく提案を飲むことになった議員たちだった、 とある議員たちを除いて。
 なお、その議員たちというのはグラエスタの議員たちのことである、 というのも、そのゴーディアス・グループはグラエスタに拠点を置く会社であり、 グラエスタの議員との癒着の可能性が考えられるからである、つまりは彼らには秘密のまま話を進めることにしたのである。
 それから三か月後――
「さてと、調査報告が届いたわよ。早速開けてみるわね――」
 リリアリスは封筒を開け、内容を読んだ。すると――
「ふむふむふむ――なるほどね。 結論から言うけど、白か黒かで言うと――白なんか入る余地もないもないほど真っ黒ってところね。 議員との癒着については何とも言えないけれど、 金の流れとしては対象の国営事業の実態から見直しをしたほうがいいかもしれないわね。 ま、そのあたりは私も睨んでいたところだけどさ。」
 どういうことだ? 議員たちは顔を見合わせていた。

 リリアリスは早速指摘の入っていたその現場へとやってきていた。
「問題の事業ってのはこれのことね。」
 それは紛れもない建設業の現場であった。
「これに何か問題が?」
 リリアリスは辺り一面を見渡すと――
「そうね、見ての通り、特になんでもないいたって普通の工事現場よね?  現場の声も既に聞いていて、 特段なにを不満として漏らすようなこともない見事なまでにクリーンな事業だってことも確認しているわね、一見するとだけど。」
 ということは、何か問題が? するとリリアリスは答えた。
「現場からの評価はいたってフツーで現場自体も割と普通の現場。 しかも何やら特別な工程は一切されているわけでもなくフツーといえばフツー、 なのに……これも価格設定が少々高めの設定なのよ。 ガレアで建設業をメインにあれこれやっていた身からすると、相場の約3.2倍といったところかしら?  私だったらクラウディアスにこの額でやりますって言われたらガレアに発注するわね?  彼らならここの額の3分の1でやってくれるハズだからね。」
 そ、そんな! 議員たちは焦っていた。
「そう、つまり、クラウディアスのインフラ基盤全体そのものが裏金の舞台として利用されているのよ。」
 これはまさしく由々しき事態である。

 それからさらに三か月後、 リリアリスの指示によって調査に調査を重ねることとなったクラウディアスの査察機関はとうとう裏金問題について暴くに至った。 それにより、ゴーディアス・グループの幹部らは組織ぐるみでこのようなことを行っていたことが発覚し、 一斉に検挙されることとなった。
 が、肝心のグラエスタ議員についてはほんの一握りだけが不正に関与していたことがわかったのだが、 それ以外ではゴーディアスの幹部らが一切口を割ることもなく、 そして議員たちはそろいもそろって「知らなかった」 あるいは「ローファルの頃からの悪しき慣習が残っていたのかもしれない」などとしらを通し続けていた。
 無論、建設の国営事業のほうは見直しが進んだが、 リリアリスの一存によってその事業自体が縮小、規制緩和によって民営化される運びへとなったのである。
「こういう事業は国をあげてやった後は国から独立させていったほうがいいからね。 だけど、そのまま民営に委託するんじゃなくって、国が建てた企業自体は徐々にフェードアウトしていったほうがいいのよ。」
「せっかく順調に行っていた会社をどうして締めるんです?」
「そりゃあ、天下のクラウディアス様のお作りになられた会社とあれば誰もが食いつくからね。 そうなると独占は避けられず、結局競争は生まれない。 食いつくのならクラウディアス様のお選びになられた事業のほうにしてもらいたいところね。 そうしたら国内での競争はもちろんのこと、海外での競争力も高まるし、 クラウディアスというブランド力がますます価値を高めると思うのよね。」
 これこそがまさに先見の明というものか――議員たちは絶句していた。
「せっかくクラウディアスというブランドを振りかざすのなら国内よりも国外に向けたほうがいいわね。 国外での影響力についてはもちろん知っているだろうけど、それに甘んじちゃダメ。 やっぱりクラウディアス様は偉大だったってことを改めて知ら締めさせないことにはブランドの名に傷がつくだけよ。 そうじゃなくって?」
 確かに、過去の栄光にすがっていくだけではいずれは信用を失う、 新しい時代でもそれを通用させていくのであれば過去の栄光よろしく、 新たな時代でもその存在感を示していかないことにはいけないということか、 話を聞いた議員や臣下たちは改めて気を引き締めていた。