エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ライフ・ワーク・ログ 第1部 風精の戯れ 第2章 策士の真骨頂

第13節 裏金疑惑

 デジタルの力によってクラウディアスの生活が激変したことについてはほぼ間違いないが、 リリアリスらの改革はもちろんそれだけではなかった。 クラウディアスの制度面においても様々に手を加えないと行かず、頭を悩ませる結果となっていた。
「それにしても税金高いわよねぇ、こんなんでよく国民が耐えられるものね。」
 リリアリスはそう言うと議員は気さくに答えた。
「クラウディアス様がなさることに間違いない、国民は一丸となってそう答えますからね。 これはそんな背景が後押しした結果の税率ということですね」

 リリアリスはいろいろと計算をしていると、なんだか納得したような面持ちで立ち上がった。
「なるほどね、税金に関しては正しく使われているのは確実みたいね。 税率が高い分だけ福祉とかの制度面が超しっかりしているから国民からの不満が出るわけないのか。 確かに、税金がちょっとやそっと高くたってそれに見合う対価がしっかりしているからこそっていう典型よね。」
 議員は答えた。
「それはもう。 なんといっても以前のローファル時代がまさに暗黒期と呼ばれるほど腐敗していましたからね。 ローファルらがいなくなると彼らのやり方に不満が続出し始め、 一部ではまるで政界のクーデターと呼んでもいいような状況に…… 要するにローファルのやり方を真っ向から否定して丸々改革していったという背景がありますからね。 税金の使い道に関しては平民議員だろうと貴族議員だろうと分け隔てなく、 クリーンにしていこうという働きも根強く、これに関しては全会一致で法案を通していったのは記憶に新しいですね」
 だが、リリアリスは悩んでいた。
「でも……これは何かしら?  計算上、税収分をはるかに上回る額の支出があるように見えるんだけど――」
 そう言われると、議員はその帳面を見直していた。
「ああ、これですか。 これは国営事業による収益分から出ている額ですね。 なんなら、こちらについても御覧に入れます?」

 リリアリスはそちらの台帳もしっかりと確認していた。 そして、いろいろと確認していると――
「いかがです? 計算上はぴったりだと思いますが――」
 確かにぴったりだが……それにしても腑に落ちないことがあった。
「あのさ、このゴーティアス・グループってどんな会社?」
 議員は答えた。
「ゴーティアスですか? クラウディアスのインフラ基盤の修繕を一手に引き受けていますね。 それが何か?」
 インフラ……リリアリスは考えた。
「インフラってことは競業他者がいてもいいハズよね?  クラウディアスには他にないのかしら?」
 議員は首を振った。
「もちろんありますよ」
 だとしたら、これは――リリアリスは悩んでいた。
「そうなると、これは由々しき問題よね。 見てよほら、ゴーティアス・グループに対する支出がなんだかやたらと多すぎる気がしない?」
 そう言われると、議員は改めてそれを確認していた。
「ああ、これはそうですね。 この年はゴーティアス・グループによる恒例行事でして、 クラウディアスのインフラ修繕の一斉運動期間ということで、 定期的にインフラ全体を改めて見直すという国を挙げての一大プロジェクトとなっているんですよ。 ですから、この支出は必然的なものです」
 いやいやいや、それってなんかおかしくないか? リリアリスは訊ねた。
「そんなプロジェクトが発生する国なんて聞いたことがないんですけど?  確かに定期検査でなんやかんやするっていうのには文句がつけようがないところだけど、 それにしては少々お金かかりすぎなんじゃないの?」
 そう言われると――議員は困惑していた。
「そ、そうですかねー?」
「そもそも具体的にはどんなことするの?  国家プロジェクトっていうんならもちろん報告書の類はうちで持っているのよねぇ?」

 リリアリスはその資料を見せてもらったが――
「やっぱり支出に対して割に合わない結果報告ね。 これ、ただのメーターの確認でしかないわよ?」
 メーター……つまり、ご家庭のガスなどの検針調査でしかないというものである。
「え? それだけのことにこれだけのお金が使われているってなんかおかしくないですか?」
 議員はそう言うとリリアリスは呆れたように言い返した。
「だから私はそう言っているの。 申し訳ないけど、これはどう考えてもアウトね。 それに、いくらあれでもゴーティアスだけって言うのも流石にないわ、談合案件は確実ね。 ゴーディアス社の実態調査のために査察を入れることを提案するわね。」