エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ライフ・ワーク・ログ 第1部 風精の戯れ 第1章 ガレアを復興せよ

第4節 いつものリファリウス節

 それから3日後、エルディックが得た情報からルシルメアの件について新たな道筋が開けた。 その話を聞いて先んじてヒュウガはルシルメアのF・F団のシャディアスと話をしているようだった。
 一方でリファリウスはガレアに留まり、エルディックと話をしていた。
「帝国に所属していながらルシルメアのレジスタンスまでやっているだなんて、なんとも皮肉なものですな」
 エルディックはそういうとリファリウスは頷いた。
「言っただろう、殺生は好まないんだよ。 だからルシルメアと衝突するのは避けたいんだ」
「綺麗ごとですね、ディスタード帝国の者としてはあり得ないぐらいに――」
「うん、認めるよ、そもそも私は綺麗ごとのほうが好きだからね。 それに、自分のために誰かが死ぬのは好ましくないしね、 自分の目的は誰かが死ぬほどの価値はないと思うしさ。」
 その目的というのが気になるところだが、それこそがプライベートな内容、 エルディックはそれについて聞くことはなかった。 それに――彼が得た情報からすると、リファリウスもヒュウガも例の”フェニックシアの孤児”だというではないか、 彼らの目的といえば、自分たちが何者なのかを知りたがっているらしい―― 相場が決まっているのであえて訊くほどのものでもないのである。
 すると――
「ただいま帰りました!」
 と、玄関のほうから何やら女性の声が。女中たちは慌てて玄関へと駆け付けていた。 リファリウスもまたその場へとやってくると、そこには軍服を着た女性が。
「おやおや、噂の御令嬢様ですかね?」
 そういうリファリウスに対し、彼女はその顔を何度か確認し――
「ま、まさか――アール副将軍ですか!?」
 そいつの存在に驚いていた。
「おやおや、また随分と話が早いことで。そうですよ、私はアール副将軍ですよ。 今のガレアはこんな状態なもんでね、この家に御厄介になっているただの居候ですよ、 ジェレイナお嬢様。」
 そう、ランドブリームスの家、つまりジェレイナこと、ジェタの実家なのである。

 アール将軍の噂はとある方面ではとても有名だった、それは――
「確かに、女性陣が沸くのもよくわかるルックスのお方ですね!」
 ジェレイナは客観的だった。
「ジェレイナお嬢様にまで言われるとは嬉しいね!」
「お嬢様だなんてよしてくださいな、私は単なる一兵卒、あなたはその上に立つものですから――」
 なんともマジメなジェレイナにむしろリファリウスは圧倒されていた。
「ところで――帝国はお嫌いですか?」
 リファリウスは本題を切り出した、そんなこと――! ジェレイナは遠慮がちにしているが、 お父様のエルディックはマジメな顔で頷いているのを見ると、彼女は落ち着いて話した。
「そ、そういうことなら――。 確かに帝国は嫌いです、私は徴兵制度によって仕方なしに軍に参加しているのですが、 本土軍での扱いは下の下といったところです。 そもそも上に立つベイダ・ゲナが女性がお嫌いですので、そのような扱いになるのも必然ですけどね――」
 リファリウスは頷いた。
「つまり、本土軍に参加している女性陣はそろいもそろって不満で本土軍……いや、帝国が大っ嫌いだと――」
 ジェレイナは暗い顔で頷くと、リファリウスは――
「それはダメだろう! 住んでる場所がディスタードだというのに自分の国が嫌いだなんてどうかしてる!  なんて酷い国なんだ、自分の国が誇れない国だなんてそう考えてもおかしい!」
 あまりに激昂するリファリウスに対し、その場にいたほかの者は焦っていた。
「やっぱりディスタードはこのままにしておくことはできない!  だって、ディスタードと言えば昔はまさに古き良き美しい王国として文明を栄えていた国だって言うじゃないか! それなのに!」
 エルディックはなだめていた。
「我々のためにそんな――お気持ちはありがたいのですが、これがまさに現状なのです。 無論、我々は帝国に対しては秘かに反抗していこうと考えてはいますが、やれることなどせいぜいその程度ですからね――」
 だが、リファリウスは違った。
「だったら、私の力を見せてやろうじゃないか。 せっかくこの座に上り詰めたんだ、悪いが話を聞かせてもらった以上は徹底的にやらせていただくまでだ――」

 後日、アール将軍はディアスに呼び出された。
「呼びました?」
 なんとも緩く返事をするそいつに対してディアスは呆れ気味に訊いた。
「お前なあ、呼びましたじゃねえだろ?」
「ん? 違うんですか? 言ったでしょ? 私は私なりのスタンスでやらせてもらうってね。」
「んなことは聞いてねえよ、お前のその物怖じしないスタンスが気に入ったからこの座につかせてやるって決めたことだしな。 そんなことより、お前、本土軍の兵隊から女性隊員を5万人近く引き抜いたって本当か!?」
 リファリウスは何食わぬ顔で答えた。
「本土軍では女性の兵士の待遇と言えば最底辺も最底辺、なんとも目に余る行為でしたからね。それが何か問題でも?」
 ディアスは頭を抱えていた。
「テメェみたいに無茶苦茶なやつ初めてだよ。 あのな、いくら人道的行為をやりましたってツラしてても、 人を抜いたからにはその分メシの面倒も見てやらなければいけないんだぞ?  お前、そこんとこわかってんのか?」
 リファリウスは頷いた。
「だから引き抜いたんですよ。今からその財源について説明しますね。」
 というが、ディアスは首を振った。
「要らねえよ、お前はいつも想定をはるかに上回ってくる行動をしでかしてくれる――あてがあるって言うんならそれだけで十分だ。 だが、できればそういうデカイ話を進めるのなら前もって言ってくれねえか?」
「もちろん考えたけど、今回は反対されそうだと思って事後にしようと思ったんですよね。 それなのにもうバレてしまうなんてね。」
 確かに、あまりの大規模の人事異動ゆえ、最初に訊かされていたら反対するだろうとディアスは思った、止む無しか。
「なあ、改めて確認するが、本当に財源は大丈夫なんだろうな?」
 リファリウスはため息をついた。
「だったら説明を訊いたほうがいいんじゃないですか?」