エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ライフ・ワーク・ログ 第1部 風精の戯れ 第1章 ガレアを復興せよ

第3節 貴族の企て

 リファリウスは何人かの帝国兵を集めていた。
「すいませんね、わざわざ話し合いの場まで設けていただいて――」
 リファリウスは悪びれた様子で言うとエルディックは気さくに答えた。
「いえいえ、いいんですよ。 むしろ私共がこの場に不用意に入れる……そちらが問題のような気がするのですが、いいのでしょうか?」
 ヒュウガが答えた。
「別に構わないぞ。そもそもあんた、俺らの動向を探ろうとしているんだろ?  なあリファリウス――」
 リファリウスは言った。
「まったくだよ、プライベートは覗き見禁止って言っただろう?  だから残念だけど、昨晩は無睡で過ごさせていただいた。 流石に監視カメラつきの前では私も迂闊に眠ることなどできなかったからね――」
 そう言われてエルディックは――
「はて、何のことでしょう?」
 というが、ヒュウガは答えた。
「新しく来た帝国の副将軍に対して妙に下手に出てきては取り入ろうとするその態度―― 思うところがあるってことだな」
 リファリウスは続けた。
「私がプライベートは秘密でそれそのものがヴェールに包み込まれているということは仲間内では普通の光景、 だからそれを利用することにした。 そんな秘密の中で私自身が何かしでかすんじゃないかと疑いたくなるのはなんとなく想像に難くない。 帝国の将であり、何かしらの不穏な行動をしている者……疑う相手の標的としてはまさに格好のターゲットとなる。 ということで私は一晩無睡で過ごし、ただひたすら装飾品を仕立てているだけという行動を実行することにした。 はたから見ればもしかしたらやばいことを考えているという光景にしか見えないからまさに好都合だった。 しかし、私に注視するがあまり、キミらは大きなミスを犯してしまったんだ」
 ヒュウガは頷いた。
「そう、俺がノーマークであることだな。 秘密に包まれたコイツを何とか覗こうと頑張りすぎるがあまり、 逆にオープンなスペースで寝ている俺への注意がおろそかになるのは必然だろうな。 だから、俺は寝オチしたところを見せると、こっそりと起き上がって行動に出ることにしたんだよな。 そしたら――こんなものが出てきた」
 と、ヒュウガはカードのようなものを前に出して見せた。
「……それは?」
 エルディックは言うと、ヒュウガはその場に端末を出し、カードをスロットに差し込んだ――
「この家の監視カメラの機材から拝借してきた。 申し訳ないが、こいつの寝室の映像と、それから部屋中の監視映像ゆえにあんたの行動まですでに突き止めさせてもらっていた――」
 それにはエルディックも焦っていた。
「そっ、それは……!」
 しかし、リファリウスは優しく答えた。
「いいんですよ、どうやらあなたはディスタード帝国がお嫌いなようだ、だからこのような行動に出たのですね――」
 エルディックは再び焦るが、あっさりと自白した。
「この度の新たな副将軍は相当に切れる方だという話も伺っておりますが、どうやら本当のようですね。 そうです、私は帝国が嫌いです、だから帝国に一矢報いようと考えての行動です。 参りました、ですから――私のことは好きなようにしてくださいな」
 両手を上げながら言う彼に対してリファリウスは言った。
「なるほどね、後ろ盾もしっかりしているから、例え投獄されたとしても後で何とかなると考えての降参ですね。」
 そこまで見透かされているのか、エルディックは冷や汗を垂らしていた、そんな貴族も怖いがリファリウスはさらに手ごわい。
「では、お言葉に甘えて好きなようにさせてもらおうか。 それならエルディック殿、引き続き、ガレアのためにまい進してくれたまえ。」
 えっ!? エルディックは耳を疑った。
「帝国は嫌いなのは私らも同じことだよ、ねえ?」
 リファリウスは言うとヒュウガは頷いた。
「そう。俺らは帝国のためにここにいるんじゃない、あくまで自分のためにいるんだ。 自分たちのために利用する場所としては都合がよかったからここにいるだけだ。 帝国という存在に対する認識が甘いのは入隊してから痛感したこと、 だが――今はまさに帝国という場所をフルに利用することができる立場になった以上、 自分たちの本来の目的のために行動ができるようになった―― 本当は利用するために都合のいいところで隊を抜けることを考えていたんだが、 なんとも都合がいい方向へと進んできたもんだな」
 リファリウスは得意げな態度で言った。
「そういうこと。 だから、帝国を利用してあーだこーだしたいというのなら、いくらでも付き合いますよ。 ただし、殺しの類だけは勘弁してね、あんまり人が死ぬというのは気持ちがよくないからね。」
 この人たち――むしろ、エルディックのほうこそ願ってもない存在だったようだ。