エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ライフ・ワーク・ログ 第1部 風精の戯れ 第1章 ガレアを復興せよ

第2節 プライベートは秘密

 エルディック=ランドブリームス、ランドブリームスといえば――それは後でいいだろう。 だが、彼は――
「おっと、ちょっと失礼――」
 と言いつつ、彼は背後からやってきたおつきの方から錠剤のビンを受け取ると、 薬を飲み、おつきから渡された水筒の水を飲んでいた。
「大丈夫ですか?」
 リファリウスは心配そうに訊くとエルディックは答えた。
「死病です、もう長くはもちません。 これは当面の私の命を引き延ばすための薬ですが―― ここに新たにディスタードの副将軍様がいらっしゃるというからにはガレアのために尽力せねばと思いましてね」
 そんなムリしなくたって――リファリウスはそう訊くと彼は首を振った。
「いいんですよ、何もせずに果てるぐらいなら意味のある行動をしよう――それが私のモットーですからね。 副将軍殿、お噂はよく聞いております、あなたのようなお方がガレアに来てくれて本当に良かった。 あなたはモノ作りにかけてはあらゆる才をお持ちと聞く。 どうか、ガレアのためにお力を貸してもらえないだろうか?」
 リファリウスは訊いた。
「はて? どうして私がそのような者だとお思いなのでしょう?」
 エルディックは答えた。
「ディスタードの支配下にある地に住まう以上、 その新たな副将軍なる者とあらば我々としてもその人柄については気にするところです。 私は言ってしまえば貴族の家ですからね、情報をつかむためのパイプは持っているということです。 そのうえで、あなたと言えば銃器に刀剣の扱いから製造方法、 さらには現地においてもまた食事から即席の家屋の作成までお手の物であると伺っています。 だから、もしかしたら帝国兵というよりはその道を志すほうが性に合っているのではないかと…… 私見ゆえに勝手な想像で申し訳ありませんが――」
 それに対してリファリウスは気さくに答えた。
「なるほど、ゆえに私のことはお見通しということですね。 如何にも、確かにそちらは私の得意分野です。 もちろん、このような土地を見たからには協力させていただきますよ。 というか、今後の私の地盤になるハズの地ですので流石にこれはいただけません。 だから、そのために一緒になって街づくりをしてくださる方がいるというのであれば、私としても大助かりですね!」

 その日はリファリウスもヒュウガもランドブリームスの家で夜を明かすこととなった。
「このようなところでお休みさせるなど――」
 と、申し訳なさそうにいうエルディックに対してヒュウガが気さくに答えた。
「俺は全然構わないぞ、ソファで寝オチしたのは俺自身だからな。 それより、あいつをきちんとベッドに寝かしてやれれば俺としては十分だ」
「ほう……なんとも友達想いなのですね――」
 ヒュウガは頭を掻きつつ答えた。
「あいつは休むってことを知らないからな、 きちんとしたところならきちんと寝てくれる……ってことだな。 あと、わざわざ起こさなくていいぞ、向こうからきちんと起きてくるからな」
 エルディックは頷いた。
「プライベートがまるで秘密という方ですね、 あちらからもそのように言われました、寝室への立ち入りは禁止ということで。 普段からそうなんですか?」
 ヒュウガは頷いた。
「ああ、破ったら破ったであとが面倒だからな、だから言うとおりにしてやってほしい」
 そうなのか――エルディックは頷いた。
「プライベートはプライベートですからね」

 朝食の席、エルディックはリファリウスに訊いた。
「昨夜はお休みになられましたか?」
「最高だったよ、流石は貴族様の家ですね。 きちんとした寝床を確保することはやはり優先事項ですね――」
 エルディックはさらに訊いた。
「そうですか、それはよかった。 エイジさんによると、あまり休んでいないというお話でしたので――」
 リファリウスは頷いた。
「そういう種族なんですよ、1年ぐらいは寝ずに起きていたこともあります。 むろん、休まないというのはそれはそれで身体への負荷も強くかかりますのでどこかで休まないと―― って、話したのか……」
 と、ヒュウガに促した。
「どんな生物でも多かれ少なかれ睡眠というのは必要な行為なんだ、 だから流石に寝ないってのは他者の目から見ると心配になってくるんでな、そうだろ?」
 そう言われてぐうの音も出ないリファリウス、そんなやり取りを見てエルディックは何やら考えていた。
「ふーむ……彼らはただの帝国兵というだけの存在ではなさそうですね……」