次の日……
「俺のこと呼んだか?」
レイビスはお城のテラスにて、リリアリスに呼び出されていた。
「あっ、来たわね。
あんたの大好きなお姉ちゃんが3階のA会議室にいるから行ってあげて頂戴。」
大好きなお姉ちゃんって……レイビスは何故と訊いた。
「んじゃあセクシーで美人で自慢のお姉ちゃんか、男の子の夢をたくさん搭載した悩まし気で麗しの自慢のお姉ちゃん、
妄想するときには必ず夢の中に現れてくれる自慢のお姉ちゃんのどれがいいか選びなさい。」
「あのなぁ……その3つのどれかって言われたら一番最初のしかないだろ――」
レイビスは呆れていた。するとリリアリス、
「なるほどね。んじゃあ巨乳でセクシーでダイナマイトボディで妖艶で美人でお嫁さんにしてみたいぐらい自慢の素敵なお姉ちゃんが3階のA会議室にいるから行ってあげて頂戴。」
と言うのだが、それ、選んだ覚えない……
レイビスは言われた通り、クラウディアス城の3階のA会議室へと赴くと、
そこには美しい髪に美しい月桂樹のヘアアクセサリに、透き通った素肌の綺麗な足がちらっと見える美しいローブの女性の後ろ姿があった。
レイビスはその女性に対して何それとなく訊いた。
「で、俺は何をすればいいんだって?」
するとその女性は振り向いて言った。
「あら、フェライトじゃないの♪
わざわざあなたの大好きな巨乳でセクシーでダイナマイトボディで妖艶で美人でお嫁さんにしてみたいぐらい自慢の素敵なお姉ちゃんのもとに来てくれてあ・り・が・と♥
ご褒美にあとで可愛がってア・ゲ・ル♥」
だから、誰がそんなこと言ったんだ……レイビスが愕然としていた、それに可愛がらんでいい……。
その巨乳でセクシーでダイナマイトボディで妖艶で美人でお嫁さんにしてみたいぐらい自慢の素敵なお姉ちゃんとはもちろん、フロレンティーナのことである。
服装は全体的に抑えめでまさにおしとやかで清楚な印象を受けるのだが、
自慢の豊満なバストが形成する深い谷間はほどほどと二の腕に、そして綺麗な太腿などはしっかりと露出しているなど、
男心をしっかりと抑えているような感じの結構たまらん服装をしているあたり流石はフロレンティーナ、
まさに真正の魔性の女である。
だが、その真正の魔性の女的な要素はあくまで女のアクセサリ程度の要素でしかなく、
その本性はリリアリスに感化された”どーしてこーなった女”である。
それが示すかのように、その服装はリリアリスの考えたコーディネートであり、本人もとても気に入っているようだ。
「うふふっ、今夜は添い寝してあげるから、ちょっと手伝ってもらえるかしら?」
んなことしなくていい……のはさておき、それとは別に、レイビスとしてはこのお姉ちゃんのことはちょっと好きだった。
残念ながら身内であることを感じてしまう間柄ゆえにフロレンティーナ自身は恋愛の対象ではないが、それでもタイプとしては好みの女性で、服装も結構好きだった、
エロ要素よりも落ち着いたおねーさんのような要素のほうに刺さったようだ。そこはまさにリリアリスの狙い通りといったところか……
「お願いね♪」
「あっ、はい! 姉さん!」
どうやら力仕事のようだ。
一方で、リリアリスのほうはというとアリエーラと一緒に何やらしていた。
「リリア、順調に進んでいるようね」
そこへフィリスがやってきた。
「そうなのよ……って、会場づくりのほうは順調?」
リリアリスが訊くと、フィリスが言った。
「いやあもう、全部例の超デキる美人女秘書様に任せてきた。
あの美人女秘書様の手にかかればほとんどの男はイチコロね、彼女のために自ら進んで作業する男ばかりだから楽できるわー」
下の階ではそんなことが……アリエーラは苦笑いし、リリアリスは楽しそうにしていた。
「なーるほど、確かに現場監督があの美人女秘書様だったら全部うまくいきそうね。」
「ホント、この分だと今日中に完成するかもね、そしたら後はリリアたちの準備次第ってところね」
フィリスは意地悪くそう言うと、リリアリスも得意げになっていた。
「あらま、それは大変、急いで終わらなくちゃ……って、どうせまだ予定は先の話だから急ぐ必要なんてないんだけどさ。」
そこへヒュウガがやってきた。
「はるか下界のほうはなんだか男共が集まっていて忙しそうだな」
リリアリスは言った。
「システムのほうはばっちりなのね。」
「当たり前だ、注文の多すぎる姉さまの指令だからな、こなせてないと最悪殺されるし。
あとはあんたの動き次第で終わりだろ、言っても”天命の刻30”の予定日ってまだ半年以上も先だったはずだが――」
リリアリスは悩みながら答えた。
「確かにそうだったはずなんだけどさ、実は”天命の刻30”が始まる前にクラウディアスを一度見てみたいっていう国が殺到しちゃってさ、
だから早めに準備しておかないと式典に間に合わない可能性が出てきてさ、それで準備も早めに進めているのよね――」
クラウディアス連合国設立宣言記念式典、通称”天命の刻30”、元々はウォンター帝国やウォンターの残党を倒すべく、
昔の連合軍であるクラウディアス、グレート・グランド、ルシルメア、アルディアスとルーティスの5か国の悲願でもある国際協調路線である。
当時はそのまま世界大戦へと発展し、そして各国においては国内での対応を優先せざるを得ず、外の国にまで配慮するような余裕などなかった。
だが、今回は旧ウォンターの最大にして最後の残党であるディスタード帝国本土軍を打ち破る際に暫定的にクラウディアス連合軍を発足して本土軍を包囲、撃破に至る。
それにより、この度は連合国設立宣言の記念式典の本会場となるクラウディアスでは、各国からの観光客や要人などが訪れるため、
その準備をするために国を挙げて大忙しなのである。
だが、戦争はまだ終わっていない、懸念事項は3つほどあった。