フロレンティーナはお姫様抱っこをされたままリリアリスの顔を見つめ続けていた。
「何よ、惚れたのかしら?」
フロレンティーナは嬉しそうに答えた。
「もうとっくに惚れてるわよ、そこいらの男なんかよりも余程魅力的だしさ、女なのに女にモテるってどう考えても反則でしょ?」
しかしリリアリス――
「あら? そうかしら? そんなこと考えたこともないけどねぇ。」
考えたことないって……そうだ、フロレンティーナは意地悪そうに聞いた。
「うふふっ、そんなこと言って、本当はいい人いるんでしょ♪」
しかし、リリアリスは何それとなく即答した。
「私にそんなもんがいるわけないでしょ、いたとしたら大事件よ。」
リリアリスのことだからうまい具合に交わしている可能性もありそうだが、
でも、本当にいないのだろうか、フロレンティーナは少々がっかりしていた。
だけど……いろいろと聞いてみようかとフロレンティーナは考えた、
彼女の公式ファン第1号として事情聴取せねばなるまい。
「でも、こういう男が好みっていうのはあるでしょ?」
そう言われるとリリアリスは得意げに答えた。
「まあね、どうせ男作るんだったらそれはある程度考えるわね。」
「ねえねえ、どんな男が好きなの!? やっぱりイケメン!? ディア様とかシャナンパパとか?」
リリアリスは悩みながら答えた。
「まあ、そうね……、確かにディア様とかシャナンパパとかはまさにイイ男よね、
どっちもイケメンだし、それなら確かに私好みだけど――」
けど――違うのだろうか。
でも確かに、リリアリスとしては生涯のパートナーに選ぶ男はこういうタイプの男ではないことを聞いたことがあったフロレンティーナ。
「イケメンも好きだけど、それよりも可愛いのが好きね、私は。
それにやっぱり自分がこうだからかな、パートナーに選ぶんならまさにディア様とかシャナンパパとか、
そう言ったのよりもちょっと頼りない感じで、自分よりも私のほうを立ててくれる男のほうがいいわね。」
やっ、やっぱりこの人は想像通りの人だ! フロレンティーナはとても嬉しかった。
「流石ね! だから女性がみんなついていくのよ! 本当に素敵!」
あら、そう――リリアリスはそう言わんばかりの得意げな表情をしていた。
「ふふっ、ありがとう。でも、ちょっと頼りない感じなのは大好物だけど、本当に頼りないのはNGね。」
わかる! それはすっごいわかる!
ちょっと頼りなさそうだけど意外と頼りになるとか激萌え要素以外の何物でもない、
でも本当に頼りにならないのは×……それはフロレンティーナも思った。
そういうあたり、何気にリリアリスとフロレンティーナは趣味が共通しているようで、フロレンティーナはとても嬉しかった。
「でも、そういう男がもし見つかったとしても、早い者勝ちだからね!」
と、フロレンティーナが言うと、リリアリスは答えた。
「早い者勝ちじゃなくていいわよ、フローラがさっさと持っていけばいいじゃないの。
私は別に男にそこまで興味があるわけじゃないし、それに――結婚するんだったら美の化身たるフローラが先に結婚すべきだと思うし。」
そう、まさにリリアリスのこういうところ、女だけどカテゴリ男っていうこの感じ、
フロレンティーナも見習いたかった、多分大勢の男が止めると思われるが。
でも、そういえば――フロレンティーナはいいことを思いついた。
「ふふっ、私だって本当は男は間に合っているからどーでもいいんだけどね。だって私は妖魔の女よ?
エモノは別に自分から取りにいかなくても向こうから勝手にやってくるのですもの、でしょう?」
リリアリスはニヤっとしていた。
「流石は男を狂わせる真性の魔性の女・フロレンティーナ=ストラルーチェ様ね、恐れ入ったわ。」
うん、待てよ? ということは――フロレンティーナはリリアリスに対してイジワルそうに訊いた。
「そっか、そういうことか……リリア、あんたがそんなに男に興味を示さないのはそういうことだったのね!
そうよ、あんただってプリズム族の血を引いている女!
つまり、あんたのほうこそエモノは向こうから勝手にやってくるって思ってるんでしょ! そうに決まっているわ!」
えっ、いや……そんなことは――と言いかけたリリアリスだが、考え方を切り替えてにっこりとしていた。
「ふふっ、なるほど、そういうのもいいわね。
そうか、エモノは向こうから勝手にやってくるか……確かに、男からその気になってくれるんだったらそれもいいかな。」
フロレンティーナはリリアリスの意外な回答に対して少し驚いていたが、
なんだか前向きになった彼女の顔を見ながらにっこりとしていた。
だが――リリアリスに対して男からその気になってくれるといえば該当者が約一名、
フロレンティーナはそいつのことを考えていた、これは案外ゴールインが近いんじゃないのかと。