エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

遥かなる旅路・天使の舞 第6部 妖魔の決意 第7章 妖魔の休日

第134節 世界への影響力

 それから数日後、再びテラスにて。話の方向性が妙な方向へと傾いていた、それは――
「こっ、これは……!?」
 ヒュウガは端末を広げると驚いていた、そこには――
「何よ、もんくある?」
 リリアリスがそう言った。それに対してヒュウガは焦って聞いた。
「いや、あの、これはどうして……?」
 それはなんと、アリエーラではなくてリリアリス公認のリリアリス・ファンクラブサイトだった……。
「何って、そりゃあ――私だってこれでも案外人気があるからよ。」
 確かにリリアリスも人気者だった、層は主に女性が中心だが、意外にも男も割と大勢いた……。 ってか、こんな女が好きとかドMなのか――ヒュウガはそう思ったがどうやらその通りで、 リリアリスが何かをぶん殴ったり蹴り飛ばしている画像などのタイトルとして ”我々の業界ではご褒美です”などという文言が付けられていることから、 確実にドM勢も居着いていることは間違いなさそうだ――ってか、この画像いいんかよ……?
 しかし、それこそ不思議なのが明らかにディスティアとクラフォードらしき人物からのフォーラムへの投稿があったことである。 お前らもファンなのか――と思いきや、内容は剣術指南方面のもののようである――なるほど、そっち方面でもとりあえずファンはいるもんな、ヒュウガは考えた。
「フローラったら私に対して結構いろいろとリスペクトしてくれるもんだから、 だったらこの際、私のファンサイトでも作ったらどうって言ったのよ。 そしたら2つ返事で”やる”って言うもんだから…… んで、実際にふたを開けてみると”すでに準備はしてある”とかなんとか、とにかく用意周到よね。 流石はフローラ、超デキる美人女秘書というだけのことはあるわよね。 それで私が許可して公認サイトにしたってワケなのよ。」
 フロレンティーナのリリアリスに対する熱の入れようときたらなかなかのものだった。 リリアリスの言うように、確かに彼女は一見するとそうは見えないのだが、 その本性はリリアリスリスペクト女――こうなると、まさにそれが当てはまる例と言えるだろう。
 しかしそれに対してアリエーラが心配して訊いてきた。
「そんな、いいんですかリリアさん? そんなことをして、もしも酷いことをされたりしたら……」
 それに対してリリアリスは優しく言った。
「全然かまわないわよ、別に。 むしろ私のファンの子たちがいてくれて、私のことを讃えてくれるんだったらそのほうが私も嬉しいわね。 そして、そこから繋がりだって生まれるワケだし。 それに――もしものことがあってもみんなで私の味方をしてくれるのだから、だったらそのほうがいいと思わない?」
 そう言われると――アリエーラには刺さるものがあった。
「それにファンサイトの主催者はフローラだから、 下手なことをしでかそうものなら私よりも先にフローラがそいつに鉄拳を下すでしょうね。」
 というか、フローラのほうこそファンサイトができそうな感じではあるが。

 さらに数日後、リリアリスの目論見通りに事が運んでいた、恐るべし、この女。
「ほら、可愛いでしょ! これがアリエーラ様公式サイトよ♪」
 全体的にアリエーラ一色という感じの美しく可愛げなサイトが出来上がった。 まさに女神アリエーラ様の美貌を称えるためのサイトであり、 彼女の美しさを全面的にアピールしている空間が広がっていた。 さらには彼女の様々なお姿が掲載されていたり、 はたまたデフォルメした可愛らしいお姿がマスコット人形のごとくサイト中を走り回ったりしていたり壁紙の背景になっていたりと、 まさにどこそかのアイドルよろしく彼女一色なページだった。
 それを見せられて、アリエーラは恥ずかしそうにしていた。
「本当にこれで収まるんですかね、それならいいのですが――」
「むしろ、アリとつながりたいって子たちが続々と集まってくるでしょうね。 無論、変な輩が現れた暁にはこの私が蹴殺してやるから安心してね。」
 こちらのFC会員No.1はリリアリスだった、 確かに、彼女の目に留まるようなあらぬ内容があった場合は彼女の手によって粛清されること必至である。 そして、そこからさらにスクロールしていると……
「えっ!? リリアさん、それはちょっと……」
 表示されたのは例の伝説の記事、”美しすぎる女教授の大発表”の一面で、タイトルは”伝説はここから始まった”と書かれていた。 それについてリリアリスは――
「それはわかるんだけどね、でも、あなたの人気はこれを機に延び延びになっているし、 それに、この記事自体が私たちの知らないところでほぼ独り歩きしているから、 それを回収するためにむしろ公認にせざるを得ないという感じなのよね――」
 この時の出来事のエンブリアに対して与えたインパクトの大きさはもはや計り知れないものだった。
「だからまあ、むしろ、この記事の内容についてはクラウディアスが管理していますよと提示しておけば、 今後は変な風に扱われたりしないでしょうし、もし、ひどい扱われようをなされたとしたら蹴り殺すことも可能になるだろうし、 そこは安心してよね。」
 なお、この記事についてはリリアリスが言うようにほぼ独り歩きしていることもあってか、 発行した会社でもそれをずっと気にしていた模様。 インパクトも大きく、発行した当初はアリエーラ様様ムードだったらしいが、 記事が独り歩きしているせいでいろいろと問題を抱えるようになり、 次第にこの記事を発行した会社に対する賛否が分かれるようになると、 主にアリエーラの今の立場を考えた人々からの苦情が多く寄せられるようになっていった。 それによってその記事を発行した会社も手に負えなくなる事態に。 そういったこともあって会社側からクラウディアスに相談を持ち掛けられると、 以後はクラウディアスで管理するということで話をつけたのだという。
 それはともかく、アリエーラは少々複雑な気持ちだったがそこまで言うのならと、自分のファンサイトについて容認した。

 そして、最近になって――
「ちょっとちょっと、なんだか面白いのがあるじゃないの、どういうこと?」
 リリアリスはそう言うと相手は驚いていた。
「えっ!? リリアの仕業じゃないのこれ!? じゃあ誰よ!?」
 それはフロレンティーナだった、彼女の非公認ファンサイトが立ち上げられていた。 実際には”公認(予定)ファンサイト”と掲げられていたのである。 フロレンティーナがこれはどういうことかとリリアリスに訊いたが、リリアリスは知らないようなそぶりをしていたのである。 まあ、リリアリスのことだから知らないことはない気がするが、実際に犯人ではないようだ。
「なによ、本当は嬉しいクセに、無理やり犯人捜ししているフリしちゃってさ。」
 フロレンティーナはどう答えようか困っているようだがごまかすことにした、つまりは図星である。
「リリアじゃないのね!?」
「そうよ、違うわよ。で、嬉しいのね?」
 フロレンティーナはほほを真っ赤にしたまま何も言わずにそのままどこかへと行ってしまった。
「ほーんと、フローラったら素直じゃないところがなんか妙にたまらないわよね。」
 その様子を見ていたヒュウガは頭を抱えていた。
「はあ、しばらくはファンサイト開設ラッシュが続きそうだな。 見ろよ、何故かルルーナ様FCサイトってのもあるぞ。 男だとディア様FCサイトってのまであるようだが――」
 それはともかく、それからのフロレンティーナはそれ以来かなり身なりには気を遣うようになり、 まさしく素敵なお姉さんを意識するようになっていた。 全体的に抑えめのファッションだが、胸元や二の腕や腿など露出しているところはしっかりと露出しているなど、 流石はフロレンティーナ、全体的に抑え目な反面、なんだかセクシーな印象を思わせるあたり、まさに真性の魔性の女である。
 なお、犯人はフラウディアとユーシェリアの2人だった、リリアリスからサイト作成の手ほどきを受けて作ったのだという、つまりそういうことである。 そのうち、この2人が作ったことに気が付くと、結果的にフロレンティーナ様公認サイトへと昇格した。 そして、さらに後になってからそれに気が付いたトトリンたちがクラウディアスに掛け合うと、そこから繋がりが生まれることになったという。 世の中、何が幸いするかわからないな。