話の後、全員はそれぞれ思い思いの場所で過ごしていたが、
リリアリスとアリエーラ、そしてララーナは同じところで話をしていた。
「アリ、お母様、見てよ。」
リリアリスは崖の上から下のほうを指さしてそう言った。
「あら、ラミア族の”魔物”もいるのね」
ララーナはそれに気が付いた。それについてアリエーラが話をした。
「ラミア族はプリズム族のように集まって集落を結成するような種族ではない、
でも、ロミアンを頼って孤立していたラミアたちはこの里に集まって集落を結成した、
その中には”魔物”も例外なく集まってきているということなんですね――」
理性のない存在まで彼女を頼ってくるなどとはなんだか不自然のような気もするが、
でも、ロミアンはそれほどの人物だったととらえることができそうだ。
すると、そこへトトリンとフロレンティーナがやってきた。
「あら、どうしたの? 話は終わったの?」
リリアリスがそう言うとトトリンが話をしだした。
「ええ。それよりもみなさんに案内したい場所がありまして、それで来ていただけないかと……」
それに対して3人は頷いた。
「わかった、せっかくだから行こうかしらね。」
リリアリスが得意げにそう言った。
案内された通りに行くと、そこにはフラウディアとシェルシェル、そしてメルルーナがいた。
「あら、おそろいで。それにしてもいい場所よね。」
リリアリスがそう言うとメルルーナが言った。
「ええ、本当に。まるでラブリズみたいで親近感がわくのよ」
それに対してトトリンが言った。
「気に入ってもらえて嬉しいです! それに――そのラブリズの里にも行ってみたくなりました!」
トトリンはなんだかいい子や――
「目的の場所はさらにこの奥です、みなさんついてきてくださいね!」
さらに促されるままに森の奥へと進むと、森から抜け出し、そしてゴツゴツとした岩場へと出てきた。
そしてそこから先に進むと断崖の上へと辿り着き、そこにはずいぶんと立派なお墓があった。
お墓の周囲にはきれいな花が添えられていて、墓の後ろには遥かなる大海原が広がっている。
「ここってまさか――」
アリエーラは訊くとトトリンは答えた。
「そうです、ここにはロミアンが眠っています。
この地はロミアンが好きな場所でした、だから彼女の亡骸はここに埋めようと皆で考えたのです。
ここを案内したのはほかでもありません、皆さんにロミアンのことを知ってもらうためです」
余程ロミアンのことを敬愛しているんだな、誰しもがそう思った。
もちろんロミアンのやったことからするとそうしたい気持ちはよくわかる。
するとフロレンティーナが彼女の墓前の前で手を合わせて目をつむっていた。
それに合わせてみんなで彼女のお参りをしていた。
トトリンが目を開けフロレンティーナと顔を合わせると、彼女は嬉しそうだった。
「ありがとうございます、ロミアンも喜んでくれると思います。
特にフローラ、ロミアンはあなたに会えてとても喜んでいると思います。
それとすみません、勝手ですが一つだけお願いを聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
なんだろう、フロレンティーナらはそう思うとトトリンは言った。
「みなさんがロミアンと同じ”ネームレス”であることを見込んでのお願いです。
どうか、どうか彼女の居場所だったという場所を突き止めてください!
本当は彼女、元の居場所に帰りたかったのかもしれません!
だから、その――”ネームレス”というものの謎を解き明かし、
そしてロミアンの故郷を突き止めてほしいのです!」
さらにトトリンはフロレンティーナに対して言った。
「フローラもお願い、ロミアンの居場所だったところを、
そしてロミアンに故郷の風というものを感じてもらいたいの――
だから、ロミアンの代わりにあなたが――」
するとフロレンティーナはトトリンの両腕をとって言った。
「ええ、もちろんそのつもりよ。
私が今回ここに帰ってきたのはロミアンのことがもっと知りたかったからよ。
だから――ロミアンのことはこの私に任せて――」
フロレンティーナはそう優しく言うとリリアリスのほうへと向き直った。
「もちろん、いいわよね?」
リリアリスは得意げに答えた。
「ええ、当然よ。
もっとも、道のりは平坦じゃあない気がするんだけど、それでもついてくるわよね?」
フロレンティーナはにっこりとした表情で答えた。
「何言ってんのよ、どんなに険しい道のりでも、みんなとだったら平気でしょ?」
こいつは一本取られた、リリアリスは得意げな顔をしたまま相槌を打っていた。