エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

悠かなる旅路・精霊の舞 第5部 女神の輪舞曲 第9章 天使の戯れ

第145節 さらに謎

 一団はマダム・ダルジャン号に揺られながらクラウディアスへと帰って行った。 リビングがやたら静かだと思ったら、リファリウスを中心に女性陣がぐっすりと眠っていたようだ。
 その様、まさにハーレム状態……不自然を唱える者、いつも通りの光景のためどこもおかしくないと唱える者、 そして、いつも通りの光景だが、そもそもなんでこんなことになるのか意味不明を唱える者、 大きく分けてその3種類の男がいる。
「やっぱり、不思議だ――」
 ティレックスはハーレムを見ながらそう語った、そもそもなんでこんなことになるのか意味不明を唱える者である。
「ああ、不思議な女たらしだよな。ったく、何が楽しいんだか」
 アーシェリスはハーレムを見ながらそう語った、不自然を唱える者であり、リファリウスがとにかく気に入らないという態度があからさまに出ている。
「ほっとけよ、静かならいいじゃないか」
 ヒュウガは操舵室で舵を取りつつ海を見ながらそう語った、どこもおかしくないと唱える者であり、ハーレムについてはまったく気にしていないようだ。

 クラウディアスにて数日後、いつもの5階のテラスにいたリファリウス。 だが、彼がテーブルで展開していたのは端末の類ではなく、薬草の類だった。
「よし、デオードとエルガの分量はこれでいいかな。 ようやく、これで完成……あとは身体の調子を整えるためのもの一式をいろいろと混ぜるだけか――」
 リファリウスは汗をぬぐいながら言った。
「なんの薬でしたっけ?」
 傍らで端末を操作しているアリエーラはそう訊ねるとリファリウスは呆れたようなしぐさで言った。
「それが、なんでこんな薬を作っているのかさっぱりなんだよ。 深刻なのは効能もさっぱりなこと、唯一これで間違いないということだけはわかっているから困る。 わかってはいるんだけど――本当にそんなんで効くのかはなんといってみようもないから目も当てられないよね。」
 なんだそれは……どんな効果があるのかわからない薬を作っているのか、 一緒にいたフロレンティーナは不思議そうに見ていた。
「実はそうなんだ、バカみたいだろう?  でも、これこそが多分”ネームレス”であるが故のことなんだと思うんだ。 効果はよくわからない、しかし作らなければいけない、作り方はなぜかわかっている。 もう、これ、一種の呪いだよね。」
 確かに呪いと言われれば呪いのような気がする。
 すると、そこへティレックスがやってきた。
「あれ? リリアさんはいないのか?」
 ティレックスが聞くとリファリウスが反応した。
「ん? 姉さまに何か用?」
 やはりというべきか、女性陣の中にリファリウス1人……だが、いつも通りだ、ティレックスはそう思った。
「いや、特段、用ってものはないんだけど、見かけないから気になっててさ――」
 それに対してリファリウスはニヤっとしていた。
「へぇ、姉さまのことが気になると……確かに姉さまはそれでも一応美人だしねぇ。」
 と言うと、フロレンティーナも楽しそうにしていた。
「なるほどねー、ティレックスってばリリアみたいのが好きなんだー♪  そりゃそうよねぇ、豊満なバストの美人でセクシーな憧れのおねゐさんですものねぇ♪」
 だが――
「そんなことより、リリアさんはどうしたんだ?」
 と、なんだかそっけない――いや、いつも揶揄われているから慣れてしまったようである。
「なんだ、つまんね」
 と、そう言ったのは何故かヒュウガだった、彼はティレックスの後ろからやってきた。
「お前なぁ……」
 ティレックスは呆れ気味にそう言い返した。まあ、その時のやりとりはともかく。
「姉さまだったらガレアじゃないかな。」
 リファリウスはそう言うとティレックスは言った。
「ガレア? えっ、でも、ガレアにいないって聞いたからこっちにいるのかなって思ったんだけど――」
 それに対してリファリウスは呆れ気味に言い放った。
「じゃあ知らない。ん、でもプリシラさんもいないし、もしかしたら一緒に何かやっているんじゃあないのかな?」
 そういえばプリシェリアをたたむみたいな話をしていた気が。その線がありそうだった。 一方、フロレンティーナはやってきたヒュウガに向かって話をした。
「ところでヒー様は作業を終えたところなの?」
 ヒー様は頷いた。
「エダルニウス軍から入手したデータの解析調査が終わったっていうから伝えに来た。 ただ一つ問題があってな、単にデータ転送すればいいのとは違う状況だ。 だからメイン・ルームに来てもらえると助かる」
 リファリウスは頷いた。
「OK. そういうことなら行こう。」
 リファリウスはテーブルの上の薬類・道具類をすべてまとめていた。