エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

悠かなる旅路・精霊の舞 第5部 女神の輪舞曲 第9章 天使の戯れ

第141節 散りゆく者の望み

 ものすごい風の力がガリアスの部屋の中で渦巻いていた。 そう、リファリウスことレムレスが、 この世で一番美しくて麗しくて最高にセクシーで美味しい美味しい魅惑のパーフェクト・ボディな女のカラダの女神プリシラ様のために力を発揮したのである。 それにより、ヒュウガやティレックスたちは命を――
「……ん? あれ? 生きてる?」
「えっ……あれ、どうなっているんだ?」
「くっ……ん? んん? なんか変だぞ……?」
 ティレックス、アーシェリス、フェリオースは両腕を交差し、 攻撃を受けようと構えていたが、どういうわけかかすり傷一つなく無事であることに驚いていた。
 同じように構えていたイールアーズも事態に気が付いた。
「なんだ? 外したのか?」
 だがしかし――
「なっ、なっ、なん……だと……!? どっ、どういうことだ――」
 と、誰かが瀕死の重症を負っているかのような虫の息のような声でそう訴えていた、誰だ!?  そう思って4人は辺りを見渡すとヒュウガがため息をついていた。
「だから言っただろ、大人しく死んでくれってな。 数秒後には死ぬとも言ったが、まさにその通りにもなった。 それに、あまりに余裕ぶっているから覚悟しといたほうがいいとも言った、 あれほど忠告しておいたのにこんな目には合うとは――もはや同情の余地もないな」
 そう、瀕死の重症を負っていたのはまさかのガリアスだった!
「どっ、どうなっているんだ!?」
 ティレックスは驚きながら言うとヒュウガが答えた。
「本人の口から聞くのが早いんじゃないのか? そろそろ説明してやれよ、リファリウス」
 リファリウス!?
 するとレムレスは突然変身し――いや、むしろ変身を解くと、リファリウスの姿へと戻った!
「この時をずっと待っていたんだ。 それにヒー様がなかなかいい感じに挑発してくれたから、我ながら予想以上に綺麗に決まったよ。」
 何!? そんな、女神プリシラ様の下僕ではないのか!?
「悪いな、”だから言っただろ”からの件はお前のセリフだったよな」
「とんでもない。やるんなら徹底的に役に徹するよ。 だからヒー様もそのままやってくれると私としても助かるよ。」
 どっ、どうなっているんだ――そう思って魔女を確認するが、 思った場所にはいつも通り可愛いらしくキメているプリシラがただニコニコとしながら佇んでいただけだった。
「流石はリファ様です♪」
 あのセクシーな女豹の魔女はどこ吹く風か、プリシラもリファ様大好き女子の姿へと戻っていた。
「プリシラさんのおかげだよ、いろいろと変な事したりさせたりしてごめんね。」
「ううん、むしろ楽しかったです♪」

 プリシラはリファリウスの右脇にそっと寄り添うと、 リファリウスはそっと右腕でプリシラを抱きつつ、一緒に瀕死のガリアスのもとへと近寄った。
「やあ! 調子はどうかな、ガリアス君★」
 リファリウスは意地が悪そうに話しかけた。
「き、きさま――まさか、こう来る……とは――」
「ああ、しゃべらないほうがいいと思うよ、傷に触る。 それに多分、もう助からないとは思うけど、しゃべると苦しみながら死ぬことになる、だから、せめて――」
「ふん……こんな……情け……イカレてんな……」
「いや、キミほどではないよ。世界征服だなんて正気の沙汰ではないね。 とはいえ、せめてキミも一緒に”ネームレス”である理由を探すのはどうかって思ってたけど――」
「……断る……私は……もう……疲れた……」
 ……ガリアスは事切れた。その様子を見ながらリファリウスはがっかりしていた。
「疲れた、か……。 敵が強すぎるがゆえに正直、私としてもこいつをどうしたら抑えられるかわからなかった。 だから結局仕方なしにこのような結末を迎えるしかなかったように思う。 言ってしまえばずっと死に場所を求めていた気がするんだ、何故かは知らないけれどもそれぐらい絶望していたようだった。 願いを叶える形にはなってしまったけれども、本当に、これでよかったのだろうか?  いや、今更だよね、プリシラさん。これでよかったことにしておこうか――」
「ええ、そうですね……リファリウス様――」
 2人は何とも言えない心境に陥っていた。 2人の目にはこれまでのガリアスは”ネームレス”として、 このような土地に孤独でいることに絶望し、死に場所を求めていたような感じだった。 あの独特の狂人ぶりはまさにそんなガリアスの意識を反映したものだったようだ。 それによって他人を全く信用しない、自分以外はどうでもいい、 そして女神プリシラがこの世界を半ば破壊しようとしていても全然気にしている様子ではないなど、 そういったところに現れていたのである。
 そう、どうせ死ぬのなら世界を征服してみようという野望を掲げていたということである。 だからこそ死ぬことさえも厭わない――それがガリアスの本性だった。
「なあ、リファリウス――と、プリシラ……さん?  なんでもいいけど説明してくれるんじゃないのか? 一体どういうことなんだ!?」
 フェリオースは驚きながらそう聞いた。
「どうもこうも――実はこれで概ね計画通りなんだとさ。 ったく、毎度のことながらよくやるよ」
 ヒュウガはそう言い捨てながら呆れていた。
「仕方がないな、欲張りなキミらのためにトクベツに説明してやるとしようか。」
 リファリウスは得意げにそう言うと、得意げに説明を始めた。