さらに建物内部をいろいろと探していると、恐らくガリアスの執務室らしきところへ――
「行くぞ」
ヒュウガはそう言って部屋へと突入すると――
「予定通り来たようだな。
だが、そうまでしてこの私を倒したいとは――その執念にはもはや感動さえ覚えるものだな」
するとガリアスはヒュウガの隣にいる女性の姿を見て言った。
「お前がアリエーラ=ヴィルクリスだな。
お前は特別だ、私のもとに来ればお前だけは命を助けてやろう! さあ、来るのだ!」
えっ……アリエーラは困惑していた。それに対してヒュウガが言った。
「気にしなくていい、どうせ数秒後には死ぬ男だ、俺に任せろ」
何ともはっきりとしたヒュウガの言い分、それに対してガリアスはむっとしていた。
「とにかくあれだ、その、面倒だから大人しく死んでくれ。
特にアリエーラさんが欲しいだなんて男、世界中にごまんといるもんでな、
それなのに1人抜け駆けするとなるととにかくいろいろと面倒だ、
だから改めて言うとだな、大人しく死んでくれ」
そんなやり取りに対してアリエーラは顔を真っ赤にしていた。
だが、ヒュウガの独特のこの言い回し、なんだかセンスを感じる。
面倒だから大人しく死んでくれとはまさにヒュウガらしい言い回しである。
それに対してガリアス――
「大人しく死ぬのはお前のほうだ、地獄を見たくなければな。
まあいい、そっちの女が欲しかったのだが、どうやら交渉はうまくいかなそうだ。
そうそう、巡視船の報告では貴様らの部隊が次々と乗り込んでくるらしいが、違うか?」
ガリアスは調子よく続けた。
「ほう、もはやエダルニアの領海内に入っているらしい。
そしてそのまま上陸してくるか、なるほど――」
ガリアスはなんだか楽しそうにさらに続けた。
「言っている意味は分かるだろうな?
そうとも、お前たちはまんまと罠に引っかかったのだよ。
兵隊がほとんどいない今を狙ってきたというようだが、それは全部ウソだ。
そう、お前たちはここに来るまでには既に我々の策にはまっているということだ」
しかしヒュウガは無視して続けた。
「そうか、でもなガリアス、お前を倒せばすべては丸く収まるらしい。
だから要するにだ、お前はこれで終わりってこと、観念しとくんだな」
そしてガリアスは――
「そうか、どうしてもこの私を倒そうというのだな? それならば致し方あるまい、相手をしてやろう――」
しかしやはりというべきか、今回もガリアスは懐の剣に手を触れることはなかった。
「どうしたんだ?」
ヒュウガはそう訊くとガリアスは言った。
「何だ? まさか、この私がお前たちの相手をしてやるとでも思ったのか?
悪いがお前たちではこの私の暇つぶしにもならないんでな、勘違いしてもらっては困る」
ガリアスは部屋の中央にある自分のデスクの上に座った。
「おいおい、また随分と余裕だな、あんた――」
ヒュウガが言った。それに対してガリアス――
「ああ、そういえば前もこんなことがあったな。
あれは確か――ふん、言うまでもないだろうな、罠にはまったお前たちの首領の話だからな」
上からものを言うような態度で話してきた。
「ガリアス、覚悟したほうがいいぞ――」
ヒュウガは呆れ気味にそう言った。
「覚悟? ああ、そういえば忘れていたな。
まあいい、とりあえず私の代わりにお前たちを始末する者を用意しておいた。
だから――どうしても私を倒したいとあらば、まずはこいつらを倒してからにしてほしいものだな」
すると部屋の奥の扉が開いた――
部屋の奥の扉から出てきたのは当然、魔女と下僕だった。
「ウフフフフ……やっぱりオバカサンたちねえ、私たちが考えた作戦にまんまと引っかかるだなんて。
ねえ、そう思わないこと、ガリアス様?」
「ああ、そうだな、まさか情報戦術に長けたクラウディアス連合軍が情報に惑わされて失敗するなどとは――ふっ、哀れな、実に哀れな――」
だが、その様子にヒュウガたちは一行に動じようとしない。
すると、後ろからフィリスが地下牢に閉じ込められていた男たちを解放し、一緒にこの部屋にやってきた!
「なっ!? プリシラ! リファリウス! 気をつけろヒュウガ!
わかると思うがあいつらは敵だ! 気を引き締めていくぞ!」
と、ティレックスがそう言って促していた。
それに対してヒュウガがティレックスのほうを向いて言った。
「数週間も地下牢に閉じ込められていたいくせに随分と元気なヤツだな」
なっ、なんでこいつはこんなにテンションが低いんだ!? それにヒュウガだけでない、
アリエーラさんもフロレンティーナさんもなんだか平然としている、どういうことだ!?
その光景には当然ティレックスだけでなく、アーシェリスとフェリオース、そしてイールアーズも驚いていた。
これが”ネームレス”の余裕というやつなのか!? わけがわからなかった。
「俺がリファリウスを引き受ける! お前ら、下がってろ――」
イールアーズは前に出て剣を構えた。しかしそれに対してヒュウガ――
「まあまあ、そういきり立ちなさんなって。お前が一番鬱陶しいから剣を納めて大人しく引っ込んでろよ」
なんだと!? イールアーズはそう言うと魔女が反応した。
「さっきから黙っていい気になっていれば、そんなリファリウスだなんてダサイ名前で気安く呼ばないで欲しいわね。
この方の名前は私の愛するレムレス様♥
この私のカラダで楽しむことを生きがいとした素敵なお方なのよぉん♪ ねえレムレス♥」
それに対してレムレス――
「ふぁい!
この世で一番美しくて麗しくて最高にセクシーで美味しい美味しい魅惑のパーフェクト・ボディな女のカラダの女神プリシラ様の、
この世で一番美しくて麗しくて最高にセクシーで美味しい美味しい魅惑のパーフェクト・ボディな女のカラダをもっとください!」
なんだか酷い――ヒュウガは頭を抱えていた、しかも以前にも同じことがあったような……
若干トラウマになり餉餉ていたヒュウガ、もはや祈るばかりだった、頼むから本当に――
「うふふっ、そういうわけなのよぉん?
はぁあっ、レムレスにそんなこと言われると私ももっとしたくなってきたわ♥
そう言うわけだからレムレス♪ 私も早くしたいの、だからさっさとなさいな♥」
その言葉にすぐさま反応したレムレスは前に出て、得意の得物である”兵器”を取り出した――
「うそだろ!? ちょっと待て!」
「おっ、おい! マジかよ!」
「そんな! リファリウス! やめるんだ!」
「おっ、お前! それ以上動くな! 動くと……マジで殺すからな!」
ティレックス、フェリオース、アーシェリスと、イールアーズはそれぞれ慌てながらそう叫んでいた。
だが、レムレスは――
「仰せのままに、この世で一番美しくて麗しくて最高にセクシーで美味しい美味しい魅惑のパーフェクト・ボディな女のカラダの女神プリシラ様――」
”兵器”を構え、強大な風の力を纏って襲い掛かった!
「さあ、女神プリシラ様の御前で死ね!」