エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

果てしなき探求 第2部 ”ネームレス”の脅威 第3章 バルナルド危機

第30節 さらに圧倒的な力

 交渉決裂、戦いの火ぶたは切って落とされ、各人、各々距離をとって戦闘を開始した。
「仕方がない、とゆーワケでみんな、作戦通りに頼むよ。」
 と、リファリウスが言うと、ガルヴィスが言った。
「言ってるお前がしくるんじゃねえぞ」
 だが、そんな中でクラフォードは動こうとしない。それに対してバウト――
「なんだ、貴様は丸腰か?」
 クラフォードは答えた。
「俺は”ネームレス”じゃないからな、あんたらと戦うには荷が重すぎるというわけだ。 もちろん、俺を攻撃してきてもいいが……その前に、自分の身を気にしたほうがいいぞ」
 何を言うか――バウトはそう言おうとすると、なんと……
「さてと、次はキミの番だね!」
 バウトの目の前にリファリウスが立ちはだかった――
「なんだと!? どういうことだ!? ザイグのやつは!?」

 わずか少し前――
「そうそう、キミがザイグって人だったっけ、逃がさないよー!」
 リファリウスはザイグを狙った。
「ッハァ! カモがネギ背負ってやってくるたぁまさにこのことだぜぇ! さあ、苦しめ!」
 すると、リファリウスは独り言を言いながら動き始めた。
「ここでキミは正面から突っ切ってくる私に対して闇魔法”カオス・フォールド”を使って能力低下を狙ってくる。 無論、キミの得意技で、それがあったからこそガル君が酷い目にあったわけだけど――」
 リファリウスは構わずに突っ込んでいった。
「残念ながらキミの魔力ではこの私にそれはほぼ通用しないようだ。」
 ザイグは驚いていた。
「なっ!? 効かない!? そんなバカな! かくなる上は!」
 だが――
「そしたら今度は火魔法”スタニング・ブロウ”を発射して私の出鼻をくじくことを考える。 しかし、魔法が主体のキミとしては相手とのかみ合わせがすこぶる悪く、キミ程度の魔力では通用しないことを思い知らされる、と――」
 魔法はリファリウスに命中したが、リファリウスはそのまま突っ込んでいった。 以降はリファリウスの言う通りなので、彼のセリフから読み取ってくれるといいだろう。
「なっ、まさかこいつ、俺の魔法が通用していないのか!?」
「と、油断しているところで私はキミの右脇へと即座に移動。 もちろん、攻撃を受けまいとして土属性のガード魔法である”ガード・フォース”でバリアする。」
「なっ!? 早っ!? くっ、させるか!」
「私の通称”兵器”と呼ばれるこの武器であればこの程度のバリアなんて造作もないことだが、 ここではあえて”ディ・スペル”によく似た解呪魔法、”スペキュレイション”を発射して意地悪をしてみることにする。」
「ぐあっ!? 破られた、だと!?」
「そして今度は負けじと”スペル・プロテクト”と”ガード・フォース”の重がけで”スペキュレイション”に対抗しようとする。」
「くっ、ならばこれでどうだ!」
「しかし、私の魔力のほうが上手だ。 再び”スペキュレイション”を発射、キミ程度の魔力の”スペル・プロテクト”では私の力にかなうハズもなく、 ”ガード・フォース”もろとも一度に破壊してしまうだろう。 それに、”スペキュレイション”は同じ解呪手段としても”ディ・スペル”とは違って非破壊型解呪魔法、 故に”スペル・プロテクト”による抗解呪魔法には反発しないのが特徴だ。それがどういうことかというと――」
「まっ、まさか! なんだ、どうなっているんだ!? こいつの魔力のほうが俺の魔力よりも上回っているということか!?  そっ、それに――」
「そう、非破壊型解呪魔法の特徴はマナへの還元を専門とする――元の魔力の姿に戻してしまう効果なんだ。 破壊型の場合は魔力をそのまま分解する効果故にシンプルで扱いやすいのが特徴だが、抗解呪魔法での動作がまるで違う。 破壊型は強烈な音を発するとおり術者に対して強い反動を与えるため、 高尚な使い手でもない限りは不用意に解呪魔法を試みようものなら魔法動作自体がゆがんでしまう。 でも――”スペキュレイション”は”フェドライナ・ソーサー”という特別な魔力系ゆえに非破壊型による解呪が可能なんだ。 しかし、”フェドライナ・ソーサー”はそもそも認知度の低い系統ゆえに、キミは何故反発が発生しないのか理解に苦しむことだろう――」
「どっ、どうなっているんだ!? 俺の魔力が通じていないとでもいうのか!?」
「と、真の絶望を与えたところでキミの命はここで打ち止め。私は再び瞬間移動し、キミの背後へと即座に移動する。 キミは慌てふためくが、何があったのかわからないうちに絶命することになるからそこは安心してほしい。 ちなみに――どっかのお寒い陰陽師さんによると、キミは何がどうあっても私たちを殺すつもりらしいからキミの命は諦めるしかないそうだ。 だから――せめて安らかに眠ってくれよ。」
 リファリウスがそう言うと同時にザイグの首が天高く跳ね上がった。
「ああ、ついでを言うと、今のはどっかのお寒い陰陽師さんの予測じゃなくて、 私にだってこれぐらいのことは見えるだけだからね。」
 そして、今度はバウトの前に立ちはだかった。

 次はガルヴィスとラヒトの戦い。
「オラオラァ! どうしたァ! 手も足も出ないか!」
 ラヒトは風の刃を次々と繰り出していた! ところが――
「いや、なんていうか、因果なもんだなと思ってな」
「はァ? なに言ってんだテメェ?」
 ガルヴィスは呆れていた。
「貴様の放っているそよ風……俺はもっと強い大嵐を知っている、お前のよりもはるかに強力な風の刃だ。 そんなのに比べたらこんなそよ風……いや、そよ風以外に適当な言葉が見当たらないな」
 すると、ガルヴィスは剣を前に構えてそのままラヒトのもとへと進んでいった。
「なっ!? なんだテメェ! これでもくらえ!」
 ラヒトはさらに強度を増した! だが――
「その程度のそよ風でくらえと言われてもな――」
「ちょうしこいてんじゃねぇぞテメェ! 手加減してやりゃあいい気になりやがって!」
 そこへすかさずガルヴィス、
「ほう、キレたのか、まさに弱者たる所以ってわけだな」
 仕返しである。
「まあいい、今すぐテメェが弱者だってことを思い知らせてやる!」
 すると、ガルヴィスは敵の攻撃に構わずその場で剣を振り絞り、大地を裂く雷のレーザー”ライン・ブラスター”を発射!
「ぐあっ! なんなんだ、今のは一体!?」
 だが、目の前にはガルヴィスが剣を思いっきり振りかぶっている光景が――
「どうやら、終わりのようだな」
 一刀両断。

 今度はヒュウガとブレウトの戦いである。
「ヒャッハー! 逃がさねえぜ!」
 ブレウトは次々とヒュウガに攻撃を繰り出しているが、ヒュウガには全く通用していない、それもそのはず、
「なんだオメー? 道具ばかりに頼りやがって、自分の力で何とかしようと思わねえのか?」
 ヒュウガはいちいち機械を用いてバリアを展開しながら戦っていた。すると――
「残念だがこの道具も俺が作ったもの、つまり、この道具を使っている限りは俺の力で戦っていることになるわけだ。 魔法も使えるっちゃあ使えるんだが、そこまで強い魔力ではないからな、 だから機械に込めて展開する魔法を機械に任せるっていうやり方をとっている。 それでもんくあるか?」
「ほう、意外と器用なんだな、お宅は」
「意外で悪かったな。でもそこまで言うんだったら覚悟してくれるとありがたいんだが――」
 ヒュウガはおもむろに剣に力を込めた。すると、剣は巨大な剣へと変わり、ブレウトに襲い掛かった!
「なっ!? なんだ!?」
「”ライトニング・バスター”だ。触れただけでもビリビリだが、威力ももちろんその分高い――」
 ヒュウガは振りかぶってブレウトに一撃! だが――
「ったぁ! 危ねぇやつだなァ! でも悪りぃが、もらったぁ!」
 ブレウトは攻撃を瞬時によけた! そして、無防備な体勢のヒュウガに――
「おっと、追撃があることを忘れないでほしいな」
 すると、”ライトニング・バスター”からものすごい量の衝撃波が!
「うっ、うわあああああああ!」
 ブレウトは感電して動けなくなってしまった。
「まあ、そういうことだ、動けないってことはつまりはそういうことだな」
 そして、ヒュウガは再び”ライトニング・バスター”を思いっきり振りかぶると――

 そして、リファリウスとバウトの戦いである。ところが――
「はっ、早い――」
 リファリウスはバウトの身体を一瞬にして切り抜いていた。 ”兵器”を収めると、バウトの腹部からおびただしい流血が――
「さようなら。できれば、キミらとは志を同じくして行きたかったよ。」
 と、リファリウスはバウトのいるほうへとは向かず、そのまま話していた。 そして、バウトはその場で崩れ落ちた。
「キミらの主要な敗因は”そんなことないだろう”という油断からくるものだったね。 そう、私らはキミらと同じ”ネームレス”なんだ、つまりは実力は五分。 油断さえなければもっと対等な勝負ができたと思うし、こんな結末にはならなかったハズだ。」
 リファリウスの少々細身の背中は少々寂しげだった。

 一方で残りのメンバーはというと……
「いたいた、ここだな?」
 茂みの場所、カイトはそう言うとシエーナが注意を促した。
「ウィーニアさん、そっちに槍が向けられますので念のために注意だけしていてくださいね」
 そう言われたウィーニア、少しだけ身を引くとその場で構えていた。
「あっ、そうだ、シャディアス、キミは――」
 と、カイトは言ったが、少々間に合わなかった様子。 茂みの中から3人の敵が現れ、それぞれ構えていた、 確かにウィーニアの目の前には槍を持った女性が恐る恐る構えて出てきたのだが、 一方のシャディアス、目の前に出てきた男が勢いあまってシャディアスの顔面にこぶしが入ったようで、彼を殴り倒していた――
「ん? あっ……えっ!?」
 相手のほうがむしろ驚いていた。そこへすかさずカイトが話をし始めた。
「キミら3人については攻撃の意思はないと受け取ったよ、それでいいかな?」
 そう言われて3人は驚いていた。だが、シャディアスは……
「ウソをつくな! これのどこが攻撃の意思がない、だ!」
 と、自分の顔を指さしながら叫んでいた、鼻の穴からおびただしい流血が――