ということで敵側のいるほうへと赴いた。
「ほう、お前たちは? わざわざ敵の隊長自ら出向いてくるとは。
だが、お前らのような虫けらが何人束になってかかってきても俺たちには勝てまい――」
と、ザイグというやつはクラフォードに対して言った。だが、クラフォードの隣――
「そいつは!? なんだ、まだ生きてやがったのか――てっきりもう死んだかと思ったぜ。
その様子からすると――まだやられ足りないって感じだな」
「生憎、貴様にやられたまんまってのも寝覚めが悪いもんでな。
それに安心しろ、今回こそお前らを殺りにきた」
すると、ザイグの隣にもう1人の男が笑いながら現れた。
「はっ! 何を言うかと思えば! 残念だが俺らに勝とうとは思わないことだ。
わかっているだろう? 俺たちの能力を、バケモノと呼ばれたこの力をな!」
今度はリファリウスが笑い出した。
「なんだ、何がおかしいんだ?」
敵が訊ねてきた。
「ふふふっ、そうか、バケモノか。そうだね、そう呼ばれるのが順当なんだろうね、きっと――」
そしてほかの敵が次々と集まってきた、全部で7人――確かに話の通りである。
「つまり、キミらはバケモノと呼ばれた者の集まりなんだね、あのガリアスみたくね。
実は私もそう呼ばれていた――私だけじゃあない、ここにいる何人かはバケモノと呼ばれてきた連中の集まりだよ。
だから私らの言っていることはほぼ本気だ、それは安心してほしい。」
すると、敵は何やら相談していた。そして、
「なるほど――確かにザイグにやられたはずのそいつが何故か生きてるのも不思議だな。
で、わざわざバケモノ同士集まっているということは、俺たちを止めに来たということか?」
と、リーダー格らしいやつがそう言った、まさにそういうことである。
「俺たちはただの傭兵だが、ガリアスも俺たちと同じようなバケモノなのだが、
これも何かの縁かと思ってこうして徒党を組むことにした。
傭兵ではあるのだが、ここいらの地域を圧すための指揮系統は完全に一任されているんだ。
だが、同じバケモノでもお前らはその俺たちに反抗しようとしている――因果なもんだ」
また別の敵がそう話し始め、さらに話を続けた。
そういうことになる、やはりガリアスも”ネームレス”ということになりそうか。
「そもそもお前らは一体何者なんだ?
同じバケモノだというのか? だったら、俺たちは何者なのかわかるということか?」
そんな返しをされるとは。やはりこいつら、確実に”ネームレス”のようである。
そして彼らに”ネームレス”の話をすると――
「なるほど、俺たちもその――お前らと同じ”ネームレス”ってわけか。
それに、あんたがあの”フェニックシアの孤児”であるリファリウスとガルヴィスか、
噂のお前たちが俺たちと同じような境遇だったのか」
リーダーの男はバウトというらしいが、彼はそう言った。
「信じるのか?」
シャディアスはそう訊いた。
「信じるも何も、それ以外に説明できそうな話がないもんでな。
まさに俺たちはどこから来たのか――その辺がさっぱりということも同じらしいしな」
ブレウトという名のやつがそう言った。
とはいえ、流石に異世界の人間である可能性が高い――とまでは言うことができなかった。
「まあ、そういうわけだよ。さてと、どうするね、このまま”ネームレス”の謎を追うために私らに協力するもよし、それとも――」
と、リファリウスは提案した。しかし――
「協力だあ? はっ、そんな提案に乗るわけねえだろ?
いいか、俺たちは傭兵なの、クライアントの命令は忠実にこなさなくちゃいけねえってわけよ。
それは何かってぇと、お前らを殺すことな?
つっても、別にこのバルなんたらって国がうばえりゃなんでもいいわけよ、見逃してやるからさっさと帰んな」
それに対してブレウトが。
「おいおいおい、せっかくの遊び相手なのにみすみす返してしまうのかよ!」
ザイグが言った。
「まあ確かに、ラヒトの言うことにも一理あるな。
弱いものイジメもそろそろ飽きた、どうせだったらもっと骨のありそうなやつの相手がしたいからな、
こんな弱者どもの相手をするのもそろそろいいよな」
「弱者か! 言われてみればその通りだな!」
と、ブレウトが続けた、弱者――ガルヴィスがピクっと反応したが、リファリウスに制止された。その様子に、
「あん? なんだ? カンに触ったようだな? それが弱者たる所以よ!」
と言うとリファリウスは言った。
「なるほど、言うに事欠いて弱者か、そいつは傑作だね。」
ラヒトは言った。
「だいたいオメー、今の話を信じるとでも思ったか?
そもそもそのフェニックシアっつー大陸は空高く浮いている大陸で大昔に消えたって言うじゃねえか、そこにいた連中が何故無事な姿でここにいんだよ?
どー考えてもつじつまが合わねぇんだよ! 嘘つくんだったらもう少しマシな嘘をつくんだな! フハハハハハハ!」
ブレウトが続けた、信じたのではなかったのか。
「ったく、そんなうまい話がある分けねえもんなぁ?
まあいい、話を合わせてやったが世迷言も聞き飽きた、これ以上妄言ほざくとマジでぶっ殺すからな」
それに対してバウトが頭を抱えながら言った。
「もういい、お前たち、もうやめるんだ。とにかく、お前たちの気持ちは分かった――」
そして、態度を改めて言った。
「そういうことだ、お前たちは本当のことを言っているかもしれないし、もしそうなら乗っかりたい気持ちもゼロではない。
だが俺たちは傭兵、白黒決着をつけねばなるまい。
つまり、俺たちの邪魔をするというのであればすべて敵とみなす、だからお前たちには悪いがここで死んでもらうことにしようか――」
交渉は決裂したようだ。