ガルヴィスの回想録は続く。ガルヴィスは訊いた。
「”修羅のレイノス”ってのは? 何者だ?」
ヴィーサルは話を続けた。
「やつも傭兵だ、マハディオス軍に雇われている、俺たちの敵ってわけだ。
だが、やつはシェトランド人の実力者をも倒しているほどの使い手でな――」
つまりこいつらにとっては何が何でもそのレイノスというやつを斃すことが課題なんだな、ガルヴィスはそう思った。
だが、ガルヴィスにとっては気になるワードが。
「シェトランド人?」
ヴィーサルは答えた。
「知らないことばかりだな。シェトランド人と言うのは――」
しかしガルヴィスは首を振った。
「通称”石の民”、”シェラト”の都を拠点に活動していて酒が大好きな連中だろ、それぐらいは知っている。
ちょっと気になっただけだ、だから気にしなくていい――」
だが、ヴィーサルのほうが疑問を持っていた。
「”シェラト”の都? そんな町聞いたことがないな。
もちろん酒が好きというのは間違いないが、たいていの戦士ならだいたいそうだろう?
ちなみになんだが、かくいう俺もシェトランド人なんだ。俺は”オウルの里”からやってきた。
まあ、隠れ住んでいる種族である都合多くは語れないが――とりあえず、そんなところだ」
あんまり興味のないガルヴィスだが自分の知っていることとは違うんだなと思った。
しかしそれと同時に、何故”シェラト”なんていうワードが飛び出たのだろうか、自分でもびっくりしていたガルヴィスだった。
そして……
「クハハハハ! 俺の名はザラームド! そう、”影山のザラームド”とは俺のことだぜ!」
ガルヴィスがその”影山のザラームド”と戦っている時の光景。
「それはよかったな。いい加減、口ばっかり動かしていないでさっさと始めようぜ」
当然のごとく、一切動じていなかった。
「きっ、貴様! まさか、この俺のことを知らんは訳ではあるまい!?」
「そうだ、そのまさかだ。とにかく、何山だか何様だか知らんが実力を示すんだったら俺に勝ってからにしろ」
ザラームドはニヤッとしていた。
「ふっ、そういうことならいいだろう! 何故俺がそのように呼ばれているのかその身をもって味わうがいい!」
ザラームドは斧を振りかぶり、勢い良く地面をたたき割った!
だが、ガルヴィスは背中の大剣を引き抜き、勢いよく敵めがけて振り切ると、
その剣から地を這う衝撃波が発射され、途中でその衝撃波が何かにぶつかって爆散、
先ほどの大地噴出剣的な技は相殺されたようで、それと同時に爆散に巻き込まれた風の刃もかき消してしまった!
「何っ!? 貴様、今何をした!?」
ザラームドは驚いていた。
「見ての通りだが――まあいい、教えてやろう。
便宜上は”ライン・ブラスター”という名前の技になるか。
俺の使う”ブラスター・ソード”という技は飛び道具の一種でな、
一応魔法剣が基礎にあってはっきりとは覚えていないが――そこから独自改良を遂げた技らしい。
んなことはどうでもいいが、いろいろと繰り出してもらっているようだが俺の技の前ではその程度ということだ。
だからさっさと大人しく故郷に帰れ、命が惜しければな」
しかし――
「抜かせ! その程度のことで俺に勝ったと思ったら大間違いだ!」
するとザラームドは再び先ほどの技を繰り出しつつ、今度はガルヴィスめがけて突進していった!
「さあ、今度こそ受け止められるのであれば受け止めて見ろ!
1つでも受け損ねた場合は貴様の死が待っている!」
ところが、今度は貫通する技を――
「そっ、そんな、バカな――」
ガルヴィスの剣はザラームドの強靭な鎧ごしに見事な一撃が決まると、ザラームドはその場で崩れ去った。
それと同時にガルヴィスが放ったレーザー光線にザラームドの技が次々とぶつかり、技の威力がかき消されていった。
「ちなみにこの技は”ムーン・ソーサル・リアー”……もとい”ムーン・ソーサリアー”という、そういう変な名前の技だ。
考えたのは変なやつでお前にとっては残念な話だが威力だけは保証付きだ」
そして、ガルヴィスはヴァルジア王国の中央では大きな剣を構えて突っ立っており、
殺人現場の中央に堂々と構えていた。
「なんだよ、これが天下のマハディオス軍なのか? 口ほどにもないな」
だが何人かは死んでおらず、気を失っているだけという状態である。
するとそこへ、自分と似たような風貌な感じの軽装の剣士が現れた。
「おい、どういうことだよ、誰に断りを入れて仕事をさぼってやがるんだ?
倒れてないでさっさと仕事しやがれよ」
レイノスは殺人現場の中央に堂々と構えているガルヴィスの前に現れると、続けざまに話をした。
「なんだよ、敵がいんじゃねーか。何してんだお前ら、早く立って戦えよ」
そいつに対してガルヴィスは訊いた。
「テメーが”羅刹のレイノス”ってやつか?」
レイノスはガルヴィスに向かって言った。
「オメー、誰に向かって口訊いてんだ? 見りゃわかるだろ」
だが、そのレイノスに向かってそいつの足元に倒れている男が一人、話しかけた。
「れっ、レイノスさん、気を付けてください……こいつ、かなり強いです――」
しかしレイノスはそいつを踏みつけて言った。
「あ? 強いからどうしたよ? 見るからに弱そうなやつじゃねーかよ。
こんなやつにやられたってのか? それだったらお前が悪いよなあ?」
「いっ、痛っ! やめてください! レイノスさん!」
それに対してガルヴィスが意地悪そうに言った。
「ほう、噂のレイノスさんとやらはどうやら弱い者いじめがご趣味らしい。
なんとも見上げた根性の羅刹さんとやらだな」
するとレイノスは殺意に満ち溢れた顔をガルヴィスのほうに向けた。
「あ? 貴様、ふざけたことを言ってるとマジで殺すぞ?
今なら許してやる、地べたに這いつくばって見せろ、命だけは助けてやる」
それに対してガルヴィスは大剣を抜いて答えた。
「なんで俺が貴様みたいな弱者相手にそんなマネをしなければいけないんだ? 寝言は寝ているだけにしとけよ。
それに貴様には悪いが、俺は先日、貴様みたいな三下に間違えられたことでとてもイラついているからな、
だからお前みたいな弱者でもいいからぶっ飛ばしたい気分なんだ、そういうわけで悪いが今すぐ死んでもらおうか」
レイノスはニヤついていた。
「ほう、この俺に挑戦するとはいい度胸だ。
そういうことなら話が早い、今すぐ地獄を見せてやるぜ!」
レイノスは剣を2本引き抜き、ガルヴィスに襲い掛かってきた! しかし――
「さてと、次に行くか。契約通り、残りの雑魚も掃除するか」
ガルヴィスは剣を納刀すると、そのままヴァルジア王国内部のマハディオス軍を斃すため、
その場を去って行った。
そしてレイノスは、その場で崩れ去った――
そして、かつてのルーティスではこんなことがあった、
アール将軍こと、リファリウス率いる10人足らずの軍勢対バランデーア軍約1,000人との戦い。
その勝敗はあっけなく決した、その結果は当然……
「きっ、貴様は、貴様らは――バケモノかっ!?」
「ああ、よく言われるよ、本当に。敵のボキャブラリを疑うレベルでよく言われる。
多分、バケモノなんだろうね。でも、なんでバケモノなのかもよくわかってないんだよ。」
バランデーア軍の周囲は生き残っているものはほぼおらず、残すは総司令ただ1人、
腰砕けているそいつに向かってリファリウスは改めて話をしていた。
「わかったろ、私がわざわざ来た理由。そう、バケモノだからだよ。
ガレア軍のトップはこんなバケモノで、
敵勢力はこんなバケモノを相手にしないといけないから諦めたほうが身のためってことを知ら締めさせるために来たんだ。
それでいいかな?」
説得力は十分すぎるほどだった。
「それから、私に対しては一向に構わないんだけど、
他の女性たち捕まえてバケモノっていうのは失礼にもほどがあるんじゃあないのかな、キミは。
いくら敵だとしてもそれはあんまりだ。今すぐ詫びろ。謝れ。生きていることを悔やむんだ。」