グラントが話を切り出した。
「そういえばエダルニアをどうするかについて話していましたね。
確かにディスタード本土軍の件で計画倒れになっていましたね。
例の情報ってすでにご確認いただいていますよね?」
リファリウスは頷いた。
「要約すると、ガリアス=ボーティウスという人物がエダルニア改めエダルニウスの実権を握っているっていう話ね。
一体何者なんだろう? それについての情報は?」
グラントは首を振った。
「さあ、それは全く分かりません。
突然エダルニウスの新司令官を名乗り、エダルニア改めエダルニウスのすべてを支配すると言い出したそうですが、何者なのかはよくわかりません」
「歴戦の英雄とか、そういった線はないのですか? 私も聞いたことないですが――」
グリモッツはそう言うがグラントは首を振った。
「うーん、ガリアス――私も聞いたことがないですね。
お話ししたように、エイジャルらの存在がエダルニアの運営のコアですが、
それらに比肩する存在としてガリアスという名前などは訊いたことがありません。
もし、配下にそのようなものがいるとなればエイジャルらに直接仕えているような立場にいてもおかしくはありませんからね」
それに対してヒュウガがボソッと一言。
「ふーん、なんか俺らみたいだな」
言われてみればそうだった、いきなり出てきて元将軍に下剋上を果たし、新たな将軍となった者……
すると会議室の入り口から急にルヴァイスが入ってきた。
「すみませんみなさん、会議の途中なのに――」
それに対してリファリウス、
「あっ、来た来た、さあ入ってくださいな。」
そして1人の老人が入ってきた。
年の割には足腰しっかりしている老人だったがその人は――
「ま、まさかあなたは……!」
グラントが驚いていた。
「久しいな、皆の衆!」
その人はディアス=ランスロット、ルヴァイスの祖父であり、ガレア軍の前身であるランスタッド軍の将軍だった男である。
グリモッツはただひたすら恐縮していた。
「どうした、本土の!」
老練なるディアスの勢いに圧倒されていた。それに対してグリモッツは臆せず訊いた。
「いえ、実のところ、ディアス様は死亡したものと――」
するとディアスは笑い飛ばしていた。
「将軍職を辞し、リファリウスにガレアという名でランスタッドを託して以降、俺はもはや死人同然よ! はっはっはっはっは!」
ディアスは笑いながら話を続けた。
「しかもあの忌々しいベイダ・ゲナのことだからな、俺がいなくなったら当然のように死亡説を触れ込むに決まっているだろう!
でも亡くなったのはヤツのほう、清々したってもんだ! やるじゃねえかリファリウス! テメェにくれた甲斐があるってもんだ!」
「いえいえ、私はそんな大したことしていませんよ。」
「はっはっはっはっは! こいつはいいぜ!
こんな大きなことしでかしといて大したことしてないだと!? ますます気に入ったぜ!」
なんだか豪快なオッサンである。オッサンはグラントに話題を振った。
「おうボウズ! オヤジは元気か!?」
グラントはしっかりと答えた。
「はい! 父上はまだ存命です!」
するとディアスは悩んでいた。
「……存命か、そうだよな、まだ生きているっていう表現がせいぜいってところだよな」
「父上は常日頃からディアス様に会いたいと申しておりました!」
「そんなウソをつかなくたっていい。
あいつは――そう、もはや口すらも利けない状態、
まあ、そのうち顔の一つでも見せてやれば――もしかしたらひっくり返るかもしれないけどな!」
だが、グラントは――
「いえ、ここ最近は目を開けることさえありません。
耳は聞こえているのかもしれないので、もしよければ今度、お話だけでもしてもらっても構いませんか?」
するとディアスは周囲の空気を感じていた。
「おっと、これはすまんすまん、こんな席でする話じゃなかったな、その話はあとでじっくりと。
割り込んでしまったが話を続けてくれ。
逆に時々話に割り込むこともあるかもしれんが、リタイアしたジジィの戯言だと思って聞き流してくれればそれでいい」
それでいいわけが……周りは苦笑いしていた。