ある日、ガルヴィスはゼーランドのシラトカヤと呼ばれる小さな村へとやってくると、何故か例のあいつがいた。
「やあガル君! お疲れさんだったね!」
……カイトだ。ガルヴィスはそいつの顔を見るや否や、ものすごく疲れが出てきた。
「なんだよテメー、どうしてここにいるんだよ、何のつもりだ――」
ガルヴィスは警戒していた。
「その様子じゃあ特に何も発見もなかったようだね」
カイトはそう訊くとガルヴィスは答えた。
「ああ、本当に何もないところだ、途中に村が何個かあったがいたって平和そのものだ」
そしてガルヴィスはカイトに改めて何しに来たのかを聞いた。
「見ての通りただの観光だよ」
ふざけるな、ガルヴィスは言い返すとカイトは答えた。
「いやいや、いたってマジメだよ。
観光というのは冗談にしてもやっていること自体はキミと同じ――
なんだけど、1つだけどうにもならない問題があってちょっと困っているんだ」
問題? ガルヴィスは訊いた。
「訊きたいかい? 珍しいね、キミのことだから変なことに巻き込むんじゃないとか言うつもりだったんだろうけど」
じゃあいい、ガルヴィスは呆れながらそう言うとカイトは無視しては話を続けた。
「キミのご所望の外国という話なんだけどちょっとしたアテがあってね、それで話をしにきたんだ」
結局話すのか、ガルヴィスは再び呆れていた――この際だからいいか、特に何も予定はないし。
どうせほかにやることなどない、ガルヴィスはさっそくカイトに言われるがままに船に乗った。
そもそも論として船は出ていても港への発着便全体で1日に1本などザラなので躊躇している暇なく乗るしかなかった、
そんなんで足止めを食うのは嫌だ。
「で、どこに向かうって?」
ガルヴィスはそう訊くとカイトは答えた。
「行先はユーラル大陸というところ。この船の次の行先はその大陸の東にある町に行くつもりだ」
聞いたことのない大陸だな、何があるんだ、そう訊いた。
「何か理由があって行くって言ってんだろって顔だね、実にその通りさ。
でもまあ、行けばわかる――とりあえずはそうとしか言えないな」
なんだそれ――ガルヴィスは再び呆れていた。
「まあまあ、”ネームレス”の謎を追うためだろ、四の五の言わずに行った行った」
それもそうなんだが。こうなれば仕方がない、とりあえずそのユーラルとやらに行って物事の真意を確かめてやる、ガルヴィスはそう思った。
ところが……
「おい、また面倒に巻き込もうってつもりじゃないだろうな――」
ユーラル大陸に上陸してはや2日、カイトが走らせている車で西へ西へと進むとジャングルの中へ。
そしてさらに西へ進むと今後は戦の装いが……
「まあ、それはそれはそれでことが起きたら運命と思って諦めてくれるといい。
それよりこちらとしては目的があるからね、そっちに向かって進んでいくぞ」
とにかく不安でしかなかったガルヴィスだった。すると――
「なんだ? バリケードが張ってあるぞ、行き止まりじゃないのか?」
遠目にはなにやら道を封鎖しているゲートがあった。
するとカイトは横道に反れ、その場で車を置いた。
「ここから先は徒歩だ、目的の場所はバリケードの向こう側にあるからね――」
これも予定通りなのか、ガルヴィスはそう思いつつカイトについていった。
2人はそのままジャングルの中の道なき道を突き進んでいくと、後ろのほうに先ほどのバリケードがちらっと見えてきた。
「あの装いからすると、つまりはこの先で戦争が起きているってわけだな。
で、ここまで来たからにはそれ相応のものがあるんだろうな――」
ガルヴィスは訊くとカイトは言った。
「どんな勢力が衝突しているのか聞きたくはないのかい?」
そんなの知りたくもない、首を突っ込んだだけで面倒だ、ガルヴィスはそう言うとカイトは確かにその通りだと言った。
「訊くだけ野暮だったね、そういうことならさっさと用事を済ませてしまおうか――」
さらに進むと魔物の群れと遭遇することになったが、まったく問題となることもなく撃破、先を急いだ。
だが、さらに進むにつれて魔物の数も減ってきているような――
「つまりは戦場が近いということか、魔物はそういう場所からは極力離れていくような傾向にあるからな」
ガルヴィスはそう言うとカイトは頷いた。
「そうだね、確かに。さて、目的の場所はもう少しだ」
するとガルヴィスは立ち止った。
「おい、待てお前――ここまで来て言うのもなんだが、まさか俺を戦場に連れていくつもりじゃないだろうな」
カイトはニヤっとしていた。
「いや、実はその戦場なんだ。
だけどどうしても目的の場所に行くためには避けられないとだけでも言っておこうか」
目的の場所に行くために戦場に行く――なんとなく状況を察したガルヴィス、どうやら一戦交えなければダメらしい、それだけは覚悟していた。
「なら、さっきの質問だがどんな勢力が衝突しているのかだけでも訊かせてもらおうか」
来ると思っていたその質問、無論カイトの予測通りでもあった。