ライザットに着くと、なんだか物々しい要塞都市のような風景が広がっていた。
やはり戦争の影響か、ガルヴィスはその雰囲気は初めてではないが巻き込まれそうで嫌な感じしかしなかった。
しかし――巻き込まれたら巻き込まれたでそれもいいか、ガルヴィスには試したいことがあった、それについては後にしよう。
「ここまでありがとうな、ガルヴィス。
でも、こういう場所の都合あまりよそ者は歓迎されないからな、先に詰め所に行ってあんたのことを話すことにしよう」
道中で訊いたのだがこの男はウェザールという名前らしい。
とりあえず抵抗しても仕方がないので、ガルヴィスは言う通りに詰め所という場所へとその男を引きずって歩いていた。
しかし――道行く者は全員ガルヴィスのことを白い目で見ていた、ウェザールによると見ていたのはいずれも傭兵らしい。
とはいえ、傭兵仲間であるはずのウェザールの状態が状態なのでとりあえず静観しているようだった。
そして傭兵の詰め所へと入ると、そこには数人の男たちが机に向かってイスに座っており、
何やら話をしている最中だったようだ、いずれも傭兵のようである。
「ウェザール! どうした! 何があったんだ!? それになんだそいつは?」
1人の男が2人に気付いてそう言うと、周りの男たちがガルヴィスに向かって懐の剣に手を差し伸べていた。
ガルヴィスは周囲を見渡し、その男たちを確認していた。
そこへウェザールが話をした。
「すまんすまん、偵察中にちょいとしくっちまってこのザマだ。
んで、この男に助けられたわけなんだが――」
すると別の男が1人、一番偉そうな男がガルヴィスを見ながら言った。
「なっ!? 貴様はまさか”修羅のレイノス”か!?」
それと同時に周りの男たちは驚きつつ、各々剣を引き出していた。
やっぱり面倒なことになったか、ある程度は予感していたが――ガルヴィスは少々呆れ気味の態度だった。
「待て待て待て! こいつはレイノスじゃない! ディグラットからやってきたガルヴィスってやつだそうだ!」
ウェザールは慌てた様子でそう言うと周囲をなだめていた。それに対して偉そうな男が言った。
「ガルヴィス? 知らんな、何者だ? こんなところまで何をしに来た?」
ガルヴィスは呆れた態度で答えた。
「別に。ただ自分探しの旅をしているだけだ、それ以上でもそれ以下でもない」
それに対して別の男がイラつきながら言った、大柄の男のようである。
「こんな戦時下でそんな呑気なことを考えているやつがどこにいるんだ! ふざけたことを抜かすと叩き切るぞ!」
どうやら受け入れてはくれなさそうだ、ガルヴィスは再び呆れた態度をとると――
「こいつ、さっきから気に入らないな!」
どうやらガルヴィスの態度が癇に障ったようだ。そこへ偉そうな男がガルヴィスに言った。
「確かに――こんなところで旅をしている人間がいるというのは妙な話だな。
たとえそれを真に受けたとして、お前が来たというディグラットの地においてもここと大して変わらん状況が続いていると思うが?」
ガルヴィスは腕を組みながら淡々と答えた。
「ああ、そうらしいな。でも面倒だから無視してそのまま北上してきた。
で、どうせだからこのままずっと北上しようと思ってな、俺が考えていることはただそれだけだ。
ここでお前たちが何をしようが俺には関係ないし、別に気にもならない。
だから俺のやることに誰にももんくを言われる筋合いもないというわけだ」
それに対して先ほどの大柄の男が「なんだと!?」と声を荒げた。
そして再び偉そうな男が話をした。
「このまま北上するということは――この大陸を出るつもりならマハディオスの町まで行くということになるが、
あそこに行くのはやめた方がいいぞ――」
その話に対してガルヴィスはすぐに反応した。
「どうやらそうらしいな、その、マハ……なんとかって町だが、あんたらとは因縁の仲にあるらしいしな。
やれやれ、どうやら乗る船を間違えたようだ」
戦時下にある大陸なのに乗る船がある、
傭兵を募っているというだけあって渡航は制限されてはいるものの渡れないことはなく、
ガルヴィスもそれを頼ってやってきている。
ここで再び呆れた態度をとろうとするとキレられるのでガルヴィスはそう淡々と言っただけだった。
だが――
「さっきからふざけたことばかり抜かす野郎だな! シラを切り通せると思ったら大間違いだ!
お前ら! こいつを取り押さえろ! 白状するまでたっぷり縄をくれてやる!」
と言うと、先ほどの偉そうな男は「やれやれ、仕方がない」と言って諦めていた。
もはや完全にやる気満々のようだな――ガルヴィスはそう察すると後ずさり、出口から出てきたが当然――
「残念だが逃がすわけにはいかん! さあ、大人しくするんだ!」
と、先ほどの大柄の男が叫んでいた。それに対してガルヴィスは――
「今の俺は虫の居所が悪いんでな、別に逃げるつもりはないから安心しろ。
とはいえ、俺も流石に弱い者いじめをする趣味は持ち合わせていないんでな、
今ならまだ間に合う、謝れば許してやろう」
彼はイラつきながら背中の剣に手をかけつつそう言うと、大柄の男が言った。
「何を言うか! 貴様は袋のネズミだ! さあ観念しろ!」
そして――ガルヴィスは大きなため息をつき、呆れかえったような態度で言い捨てた。
「なるほどな、痛い目を見なければわからないってか。だったら望み通りにしてやる――」