エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第3部 堕ちた天使の心 第5章 反勢力軍の反撃

第71節 希望を持って

 一行はさらに森の奥へと進むと何やら怪しい気配が漂っていた――
「妖魔の森だな――」
 その気配に気が付いたヒュウガ、そしてララーナが反応した。
「なるほど、そういうわけですね。 ここは私の出番です、みなさんは先に戻っていていただけますか?」
 それに対してシャルロンが言った。
「つまり、ここがその”プリズム族の隠れ家”というものなのですね?  そういうことならわかりました、私たちは戻ることといたします――」
 シャルロンはそう言うと自分の軍の兵隊たちに指示を出して兵隊たちは次々と町のほうへと戻っていった。
「俺たちもだよな、当然。 それはそれでいいんだが、その前にこれからどうするのか確認しておきたいな」
 ヒュウガは訊いた。ララーナは頷いた。
「そうですね、とにかく、私は彼女たちから事情を聴きます。 ”プリズム族の隠れ家”がほかにあると思いますのでどこかにあるのか聞き出してきます。 それから行動を決めるということでもよろしいですか?」
 それに対してヒュウガは頷きながら言った。
「まあ……それしかないよな。そういうことなら任せた、先に戻ってるぞ」
 そしてその場にララーナを残し、一行は町のほうへと戻っていった。

 その日の日没時、ララーナがあのアジトの中へと戻ってきた。
「あっ! お母様、おかえりなさい♪」
「おかえりなさい、お母様♪」
 ユーシェリアとフラウディアは嬉しそうに彼女を出迎えていた。 そこには楽しそうにしているシャルロンの姿もあった。
「おかえりなさい、ララーナお母様♪」
 それに対してララーナも楽しそうに言った。
「あらま、お揃いで。仲良くしていらしたのですね♪」
 だが、何故かそこにシオラの姿がなかった、元々シャルロンと仲が良いハズの彼女がいないのである。 それに対してユーシェリアが答えた。
「ああ、シオラさんなら別のところでリリアお姉様とお話している最中ですよ。 お姉様となんか個人的に相談したいことがあると言って、私の端末を借りて1人で個室にこもっているみたいです」
 なるほど、そうだったのか、ララーナは納得した。
「それで、何か情報はつかめましたか?」
 シャルロンはそう聞くとララーナは答えた。
「ええ、みなさん交えて次のお話がしたいので夕食時にでもゆっくりといたしましょう」

 というわけでアジトにて、シャルロンと一行が一堂に会し、食事をとりながら話をしていた。
「バングサーリという町の近くに小さな集落がありまして、そこからさらに南のほうへ行くと隠れ家があるようです」
 ララーナはそう説明するとヒュウガは地図を指さしながら言った。
「ってことは大体この辺か……確かに周りになんにもないような未開の地って感じだな」
 それに対してティレックスが言った。
「何もないだけならまだいい気がするんだけど、さっきのロサット山のことなんだけど本当に山登りするのか?」
 ララーナは答えた。
「彼女らを救うためです。 とにかく、彼女らに声掛けをしてなんとしてでもラブリズまで避難してもらうのです。 そのためには多少大変でも――」
 ティレックスは申し訳なさそうに言った。
「すっ、すみません、確かにその通りですもんね――」
 そこへディスティアが言った。
「ということは、あそこにいたプリズム族たちはすでに避難を終えた後ということです?」
 ララーナは答えた。
「ええ、準備ができ次第すぐに出発するとおっしゃられておりましたので、すでに船に乗っているかもしれませんね――」
 自分たちの住まいを追われて傷ついている彼女ら――果たしてどうなるのだろうか。
「退避場所は他に5か所あるって言いましたっけ、バングサーリとロサット山と、後の3か所ってどちらです?」
 シャルロンはそう聞いた。それについてララーナは答えた。
「残りの3か所はエードラと呼ばれる場所の近くに2か所と、ロサプールから北に少し行ったところにあるそうです」
 ロサプール……ヒュウガが反応した。
「ロサピアーナとの国境付近、つまりは来た道を完全に引き返す形になるってわけだな」
「というより、スタート地点ですね」
 ディスティアがそう付け加えた。確かにロサプールはクレイジアに来て最初にたどり着いた町だった。
 そしてララーナが提案した。
「とはいえ、此度のエンプレス・フェルミシア・キャロリーヌというのがまた襲ってこないとも限りませんし、 それに……例のシステム・Tというものが先回りしている可能性もあります。場合によっては既に……」
 だんだん悪い方向に考えが傾くが残念ながらその可能性はある。 だけど、希望を捨てたらいけない。
「お母様! まずは生き残りを助けることから考えましょう! 話はそれからですよ!」
 ユーシェリアがそう訴えるとララーナは気を取り直して話した。
「そうですね、それが一番大事なことですものね――」