エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第3部 堕ちた天使の心 第5章 反勢力軍の反撃

第68節 違和感

 さらに進むと、次第に古ぼけた戦車のような兵器が見えてきた、兵器のようだが――
「おそらく、ロサピアーナ軍のものだろう」
 ヒュウガがそう言うとティレックスは首をかしげていた。
「でも、どうしてこんなところにロサピアーナ軍の兵器が?」
 ディスティアが頷いた。
「ロサピアーナってこのあたりを全部まとめて支配していたソーヴェっていう国だったようですからね、その残骸では?」
 そんな話をしながら少し進むと、女性の姿をした何かがその場に佇んでいた――
「ん? あれはなんだろ――」
 ヒュウガはそう言いながら首をかしげていた、すると――
「まさか、あれがエンプレス・フェルミシア・キャロリーヌ!?」
 ティレックスは驚いていた。 確かに、後にユーシェリアを経由してあの設計図を見せてもらっていたティレックスたちだが、 それ以前に、その姿を見て妙な違和感を感じていた者がいた、 それは――このメンバーだったらほとんどの者が感じるものだった――
「あれがキャロリーヌ!? ってか待てよ、こいつ、どこかで見た覚えがないか?」
 違和感について、最初に口を開けたのはスレアだった。
「確かに割と最近に見たことがあるような気が――」
 フラウディアも考えながら言った。
「なんかどこかで見たような姿だね、なんだったっけ――」
 ユーシェリアも首をかしげていた。そして、そこへ――
「この兵器がロサピアーナ軍の兵器で、クレイジアの魔女というのを駆逐するために要所要所に設置されたものだそうです。 私も知っているのはここまでですが、それは間違いないと思います!」
 と、そう言ったのはシャルロンだった。そんな彼女の様子に対してフラウディアとユーシェリアは――
「なーんかあの子、態度に統一性がないよね、妙な感じ――」
「私も思った。それになんか、とってつけたような感じに話しているようにも見えるしさ――」
 やっぱり怪しんでいた。 そんな2人を見てララーナは何やら考えているが、シオラはシオラでずっと思いつめたような様子のままだった、 今の話さえまともに聞いていなさそうである。
 そして、いよいよあの女性の姿をした何かが何なのか気が付いた者が現れた、それはディスティアである――
「や、待ってくださいよ――あれはもしや、システム・Tでは!?」
 システム・T!? そう言われて思い出した、そうだ、言われてみれば――
「確かにシステム・T! あの時に倒した例の兵器! どおりで見た覚えがあるわけだ!」
 ティレックスは驚きながらそう言った。だが――フラウディアは悩んでいた。
「言われてみればシステム・Tと同型の兵器みたいだけど――でも、あれはディスタード軍が開発した兵器のハズ、 どうしてディスタード軍が開発したものと同型の兵器がクレイジアにあるんでしょう?」
 スレアは腕を組みながら言った。
「それは変だな、ロサピアーナはクラウディアスどころかディスタードとも仲が悪いのにどうしてディスタードの兵器がここにあるのだろうか、 仮にこいつがディスタードの兵器でないにしても、それでもディスタードの兵器と同じような見た目のこれがここにあるのもなんだか変な話だ。 無論、ディスタードの兵器と同じような見た目をしたロサピアーナの兵器っていうのも変な話だ。 ミサイルとかそういうのならまだしも、人型兵器だぞ? 同じ姿のものが偶然できる可能性ってあるか?」
 そう言うとヒュウガは後ずさりしながら身構えていた。
「どうしましたか、ヒュウガさん?」
 ディスティアはそう訊くとヒュウガは注意を促した。
「気をつけろ、こいつ、動くぞ――」
 えっ――ディスティアはそう言うと、女性の姿をしたそれは急に動き始めた――
「おい、ひょっとして――」
 スレアも警戒しながら言うと、女性の姿をしたそれは――
「侵入者を発見、直ちに処理を行います――」
 警告音を鳴らしながらそう言うと、一行に襲い掛かってきた!
「みなさん気を付けてください!」
 シャルロンはそう言って全員に注意を促した。
「マジかよ、このタイミングでまたこいつと対峙することになるなんて――」
 ティレックスも剣を取り出すと身構えていた。

 だが――
「なんだよ、脅かしやがって。 結局は”ネームレス”の力には勝てないってことかよ」
 と、ヒュウガは言い捨てた。それもそのはず、敵はあっさりとヒュウガが倒してしまったのである。 だが、それは単に”ネームレス”だからという理由だけではなさそうだった。
「あんたの武器の性能がきちんとかみ合っていたようにも見えるが――」
 ティレックスがそういうとシオラも言った。
「確かに中身が機械みたいですし、ヒュウガさんのその武器のつくりからすると機械に有効な気がします。 私の攻撃でも結構面倒しましたし――」
 ところが――
「みなさん気を付けてください! なんだか集まってきたみたいです!」
 と、シャルロンが促した。なんと、同じ形の敵が続々と集まってくるではないか!
「排除します」
「直ちに排除します」
「排除します。作業員は全員避難してください」
 システム・Tらしきそいつは次々と姿を現し、そんなことを言いながら襲い掛かってきた!
「なんですか、これは――」
 ディスティアがそう言うとユーシェリアとフラウディアも言った。
「なっ、なんか怖い――」
「しかもみんな同じ形で同じ顔だから不気味――」
 するとララーナが言った。
「これがこのシステムの本当の姿といったところですかね――」
 ヒュウガは武器を構えなおした。
「なるほど、これはちょっと面倒しそうだな。腹をくくるか――」
 そして、全員覚悟を決めていた。