エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第3部 堕ちた天使の心 第5章 反勢力軍の反撃

第63節 印象

 ユーシェリアが何やら考えているところにフラウディアがやってきた。
「あっ、ユーシィ! ここにいたのね♪」
「あっ、フラウディア! どうしたの、何かあったの?」
 お互いに話をしていると、そこへシャルロンちゃんが通りかかった。 そして彼女はそのままディスティアのもとへ一直線――
「見てよあの子――」
 フラウディアはそう言って2人のやり取りのほうへと促した。 それについてユーシェリアが言った。
「うん、そうなんだよね、ああいう子なんだよね――」
 シャルロンちゃんはディスティアに対してあからさまに媚びをうっていた。
「私、ああいうタイプの子とは付き合いがないからどうしたらいいのかと思ってさ――」
 フラウディアは不安そうに言った。 無論、昔の自分こそがああいうタイプの女だったというきらいはあるかもしれないが、 実際には周囲には自分以外に女がほぼおらず、 むしろ女性がいた場合は女同士というもの自体が貴重だったため仲良くしようとするのがフラウディアの行動原理だった。 その一方でユーシェリアももちろんこの手の女子とは付き合いが一切ないので迷っていた。
 だが、一方でシャルロンちゃんは男には興味津々だが女はどうでもいいというような態度があからさまに出ていた。
「クラウディアスじゃあみんな仲良しだもんね――」
 ユーシェリアはそう言うとフラウディアは頷いた。
「リリ・アリ姉様っていう強力なお姉様がいるからね。 それにリリ・アリ姉様も特殊だしさ」
 しかし、リリ姉様のほうの特殊ぶりについては男女でそのギャップが激しいものだった。
「昔はあんな子じゃなかったんだけどねぇ――」
 と、2人の会話を聞きながら、シオラはシャルロンちゃんの様子を見ていた。
「そうなの?」
 ユーシェリアとフラウディアは声をそろえてそう訊いた。

 シオラはシャルロンちゃんの話をしていた。
「昔から可愛くていい子でね、 ほかの仲のいい友達に言われてアイドルみたいに愛想振りまいていることもあったけど、 大体女子の輪の中でのことだったのよ。 だけど彼女、本当はむしろ控えめな女の子で、あんなふうにあんまり自分を出すのが得意な子ではなかったのよ。 だから、そんなギャップに私もすぐに気に入って、友達になるまでにはそんなに時間がかからなかったのよ」
 だが今では見た目がかなり露出しており、 態度もさることながら完全に男受けを狙った感じに転向してしまっているようだった。
「だから何かあったのか気になっちゃって――」
 シオラは心配そうに彼女のことを見ていた。それに対してユーシェリアが――
「やっぱり、戦争なんじゃないかな――」
 戦争は人を変えるとはよく言ったものだが、それにしては変わり方の方向性がどうにも気にかかるところである。
「でも、確かに戦争と男受けっていう組み合わせもわからなくもないかもです。 戦争となるといつ命を落としてもおかしくはないって考えますからね。 となると、その前に自分と添い遂げる人を見つけたいって考えてもおかしくはないのかも――」
 フラウディアの考察はそんな感じだった。とはいえ――
「でも、それにしては媚びをうる男の人たちの数が多いのが気がかりです――」
 それこそほかの団員たちの態度的にもそんな感じの印象が見受けられた。 それに、イケメンかそうでないかを品定めしているところも見受けられる―― シオラの知る彼女の性格とは偉くかけ離れていた。
 そして、シャルロンちゃんはディスティアのもとから去ると、 次はクラフォードのもとへとやってきたシャルロンちゃんだった。

「えっと、クラフォードさんですよね!」
 クラフォードはすぐさま返事をした。
「ああ、ちょうどよかった、責任者ってことなら話があるんだが――いいか?」
 と話し出すと、シャルロンちゃんは楽しそうに――
「言われてみればその通りですね! それでは別室にてお話しましょうね♪」
 と、なんだか意気投合している所でララーナが現れた。
「シャルロンさんは男の子たちがお好きなんですね♪」
 そう言われたシャルロンちゃんは戸惑いつつ――
「はぇっ!? あ、あの……ララーナさん、明日はよろしくお願いいたしますね!」
 と、態度を改め、なんだか焦ったような様子で言うと、 ララーナはにっこりとしながら「はい」とだけ答えた。 そのままシャルロンちゃんはクラフォードとともにその場を去ろうとした。
 その一部始終を見ていたユーシェリアとフラウディアとシオラは去ろうとしていると、
「シオりん!」
 シャルロンちゃんはシオラのことを引き留めた。
「シャルロンちゃん!」
 シオラもそれに対して返事をした。そして2人は仲良く抱き合っていた。 よかった、これは昔と変わらない――シオラはそう思って安心していた。
「死んだと思って心配したのよ、だから本当に生きててよかった――」
「ごめんねシオりん、心配かけてごめんね――」

 翌朝、ホテルで目覚めたヒュウガだが、彼の隣には――
「おはようございます、ヒュウガさん」
 と、まさかのララーナが!
「なっ!? えっ!? おい、嘘だろ!? どうなって――」
 彼が寝ているその傍らには彼女が優しそうなまなざしをしながら座っていた。 ララーナはヒュウガにしーっと言い聞かせていた。 周りはまだ寝ているようだが誰が部屋の中に促したのだろうか、 そう思うとクラフォードがいないことに気が付いたヒュウガ、まさかあいつが!?
「ちょっとした誘惑魔法を使いましてスレアさんに開けてもらいました。 彼の中にフラウディアを想起させて行動をコントロールし、開けてもらったのです」
 これだからプリズム族って油断も隙も無いな、ヒュウガは今の話を聞かなければよかったなと後悔していた。
「で、俺に何の用?」

 2人はホテルを脱し、適当な店に入ってモーニングランチを楽しむことにした。 そこでヒュウガは端末を出して話をし始めた。
「悪いな朝早々に。どうしても話をしたいっていうもんだから――」
 それに対して通信相手であるリリアリスが言った。
「いいわよ別に。お母様とヒー様のためだからね。」
 それよりも、ヒュウガとしてはリリアリスの居場所が気になっていた。
「えっ、ここ? オリ君の部屋よ。 私は不調だし、あの部屋にはまだ調子が全然上がらずにいる3人がいるもんだから、 3人に迷惑かけずに私が作業しやすい場所ってことでオリ君がいろいろと手配してくれたってワケよ。」
 それに対してヒュウガが意地悪そうに言った。
「なーるほど、オリエンネストと”よろしく”やってんだな♪  昨夜はお楽しみでしたかぁー?」
 だが、リリアリスは得意げだった。
「ったり前でしょ、私もプリズム族の血を持った年頃の女の子だから当然よね。 まったくそんな意地悪言ってー、 そんなに私のことが気になるんだったらヒー様のことたっぷりと可愛がってあげてもいいのよん♥」
 プリズム式リップサービスからのカウンター……この女が覚えるとややこしいことこの上ない。 ヒュウガは言うんじゃなかったと深く後悔していた、こんな短時間に何度も後悔することになろうとは――