ヒュウガはさらに話をした。女子2人はユーシェリアの端末側に戻っていた。
「そうそう、今でもよくわかっていないんだが、このルートが何故正解だと思った?」
ヒュウガはそう訊くとリリアリスは聞き返した。
「このルートが正解って? そうだったの?」
えっ……リリアリスのことだから何かをつかんでいたのでは――
そう思ってヒュウガはクランドルの状況をリリアリスに言うと――
「はあ、なるほどね、それはある程度予想していたからね。」
と返答が。何故?
「ええ、それはお母様の線よ。
つまりはクレイジアのプリズム族がどうなっているのかというところを考えればある程度想像可能なところだからね。」
ますます意味が分からなかった、それでなんでロサピアーナ軍が?
それに対してリリアリスは考えながら言った。
「調べたところ、ロサピアーナでは大昔から”魔女狩り”というものをやっているそうよ。」
なんだって!? 3人は驚いた。
「女性の英雄なんかが出れば、その女は魔女だなんて言って魔女裁判にかけるのよ。
魔女は原則火炙りによる公開処刑だから民衆にも強いインパクトが残るわね。」
つい最近のディスタードでも見たような光景だった。
しかし、ロサピアーナではそれも時代錯誤の話、
「最近では女性に英雄が出ても即魔女裁判ということにはならないけれども、
それでも、魔女裁判と称して一部の人々を処刑するっていうことがあるみたいね――」
さらに話を続けた。
「基本は政治犯や謀略を企てようとする者で、
その対象は女性だけでなく男性も魔女の手先という扱いで一掃されていくみたい。
しかも――」
しかも――なんだろう、3人は息をのんだ。
「特定の種族の女なんかも標的になっているわね。
出所はロサピアーナのことを題材にしている全然別の国の情報サイトなんだけど、
そこの記事によると特にラミア族なんかは魔女裁判にかけられている例が見れるわね。
その結果までは書かれていないから何とも言えないけど、これがそうならプリズム族なんかも怪しいところね――」
それに対してヒュウガは意地悪そうに言った。
「なるほど、つまりはリリアリスは火炙りの刑確定ってことだな」
リリアリスは得意げに答えた。
「ええ、私の美貌と獅子奮迅の大活躍っぷりからすれば当然の判定よね、光栄なことだわ。」
だからそれを言わなければ――もはや”残念な美女”はステータスだと言わんばかりに誇張しているあたりがリリアリスらしいところだが。
もっとも、自分の美貌については二の次三の次な人なんだけど、活躍のほうについてはおそらく絶対に譲る気はないだろう。
ただし、その活躍にしてもそこまでこだわりはなく、純粋にそう言う出来事があった程度にしか受け止めないという変わったお人なので、
自慢したりひけらかしたり、はたまた英雄視されたりすることなんて一切考えないことだろうが。
それはともかく、ロサピアーナの同盟国についてはそういう風潮があるということらしい。
となると、クレイジアのプリズム族は――
「あとはお母様の線を考えると……まあ、つまりはそう言うことね――」
つまりはエレイアの件を発端とする例のセイバルの生物兵器の件である。
もしかしてクレイジアのプリズム族を利用しているということだろうか、その線は確かにありそうだった。
「それにはまずはプリズム族の森がどうなっているかを確かめる必要がありそうだってわけだな。
だけど、今の話を聞く限りだとちょっと絶望的な気がするぞ――」
リリアリスは相槌を打ちつつ話した。
「ええ、まあそうなんだけど。
でもお母様によると、エンブリアのプリズム族はそうなった場合に別の隠れ場所に避難して、そこにいるかもって言ってたわ。
現に、あのラブリズが実は避難場所だったのよ。
元々はいろんな地方から魔女狩り的なことが行われていて、元の場所にいられなくなって、
最終的に彼女らが流れ着いた場所が今のラブリズの場所なんですって――」
そうだったのか、ヒュウガはそう言うがリリアリスはなんだか辛そうな顔をしていた。
大丈夫だろうか、3人は心配そうに言うとリリアリスが言った。
「ごめんごめん、そろそろ限界みたいね。
しばらくは休んでいないとダメそうだからまた数日ぐらいは寝ているわね――」
そう言いながら彼女はモニタの奥から出てきたオリエンネストに支えられ、その傍らにあるソファへと運ばれていた。
「やあ、お3人さん。
ごめんね、無茶をしないようにって言っているんだけど――」
オリエンネストがそう言うとヒュウガはため息をついていた。
「いいって、気にするな。
いつものことだし、そもそも無茶をしたい性格なんだし、
むしろ無茶をしないとリリアリスじゃあない気もするしな、あくまで死なない程度にだが」
オリエンネストは苦笑いしていた。
「そういえばほかの3人は?」
ヒュウガは訊いた。
「ああ、アリエーラさんとフローラさんはなんとか目だけは覚ましたよ。
フィリスさんは起き上がることまではできているけど、未だにベッドから立ち上がるまでには至っていないね――」
それでも全員が目覚めただけよしとしたい、3人ともそう思いつつ安堵していた。