エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第3部 堕ちた天使の心 第5章 反勢力軍の反撃

第57節 デジタルの力

 バスはターミナルへと到着、雨は小降りとなっていた。 しかし、バスターミナルからアーケード街へと屋根が続いているため一行はそのまま町を散策することにした。 と言っても、兵隊がそこらに歩いているようなこの状況では何かと落ち着かないため、 まずは宿泊施設を探し出し、それからどうするかを考えていた。
 ここでは冒険の基本に戻り、酒場での情報収集を考えることにした者もいた、スレアとティレックスである。
「この国ってハンターズ・ギルドってないんだっけ?」
 ユーシェリアは端末を出しながらそう言うと、ヒュウガも端末を見ながら答えた。 こちらはホテルで文明の利器を使って調べることにしている。 テレビを見ながら端末を使っていた。
「ないみたいだな。そういえば社会主義の国からはいろいろとあって撤退することにしたって以前にセ・ランドのお偉方が言っていたか」
 ユーシェリアはそう言われて頷いた。
「ねえユーシィ、プリズム族の森って検索してもヒットしないよね――」
 フラウディアにそう言われ、ユーシェリアは答えた。
「うーん、流石にないね。 データにあればヒットするんだけど、このあたりはこの手の技術も情報も整備されていなくて、 マダム・ダルジャンの電波を受けてはじめて通信できている状況だからね――」
 すると、ユーシェリア側の端末に新しい情報がいろいろと追加されている様が確認できた。 それに対し――
「あっ、ヒュウガさん、場所情報の名前、ロサプールとクランドルが反対です!」
 そう言われたヒュウガ慌てて直そうとしていた。 どうやら前もって取得していた地形情報に拠点の名前を入れてマッピングをしているようだ。
「初歩的なミスをするとか、なーんか最近どうかしているな……」
 ヒュウガはため息をつきながらそう言った。 その様子が気になったフラウディアはユーシェリアの端末を眺めてると――
「うわっ、すごーい! これ全部調べて入力たんですか!?」
 なんと、地形図はこの大陸全体の地形図であり、クラルンベルから上陸したポードルまで全部書かれていた。 それをさらにユーシェリアはマップを縮小して見せると――
「あっ、クラウディアス王国! グレート・グランドにセラフィック・ランド、アルディアスやディスタードまで!」
 それはなんと、エンブリアの世界地図だった。
「これは特別な権限を持っている人だけが閲覧できる地図なんだよ。 例えばほら、ルシルメアの近くにラブリズの里ってあるでしょ?」
 そう言いながらユーシェリアは画面上の”権限フィルタ”と書いてあるところで何かしらの操作をすると――
「あっ、ラブリズの里が消えた!」
 と、フラウディアがそう言うと、ユーシェリアはさらにこの大陸の地図を出して見せた。
「あれ、ロサプールとクレイジアもなくなっているね――」
 フラウディアがそれに気が付いて言うとユーシェリアが説明した。
「これが一般公開用の地図だからね。 つまり、持っている権限によってどこまでの情報が見れるか変わる仕組みになっているんだよね。 ラブリズなんかだとプリズム族は基本的に隠れ住んでいるという意向を反映しないとだから公にできないし、 この辺りだって、まだ私らが軍事作戦でやってきていることになるわけだから、 公開当たって一旦控えておかないといけないわけだしさ」
 なるほど、同じ地図を使っていながらその場所には何があるのかは持っている権限によってわかるかわからないか変わるシステムなのかとフラウディアは理解した。
「もちろんこの地図はクラウディアスのサイトから閲覧できるから、 端末を持っていればどこからでもアクセスできるんだよ!」
 そうなのか、フラウディアは持っているスマートフォンを使ってアクセスすると――
「ホントだ! 私にもロサプールとクランドルが見えたよ!」
 それに対してユーシェリアも、
「うん! だって、フラウディアは今やクラウディアスの重鎮さんだもん! 見れないとおかしいもんね!」
 と、女子2人は何気に楽しそうだった。 はじまったな、ヒュウガはそう思いつつ端末でいろいろと作業をしていると――
「おっと、来やがった――」
 と、ヒュウガはスマートフォンの電話音が鳴ったがそちらには手を出さず、端末を操作していた。 すると、電話のほうは鳴りやみ、
「よう、身体の具合はどうだ?」
 と、端末に対して話をすると、端末からはあの声が――
「ん、端末? 今どこ? ロサプールのホテル?」
 そう、それはリリアリスの声だった。そこへ――
「あら? ユーシィが参加したがってるわね。」
 と、リリアリスが言うとヒュウガが言った。
「つなげてやれよ、今隣にいるから」
 そう言うと――
「お姉様! お身体のほうは大丈夫ですか!?」
「お姉様! こんなに離れていてもお顔が見れるなんて嬉しい――」
 と、ユーシェリアとフラウディアはユーシェリアのモニタ越しにリリアリスに話をしていた。 いわゆるウェブミーティングというものである。
「あら! ユーシィとフラウディアのカワユイアイドル美女コンビじゃない♪ 私はこの通りよ。」
 それに対し、カワユイアイドル美女コンビはとても楽しそうにリアクションしていた。
「あら? ほかには? お母様とシオりんとディア様は?」
 イケメン戦士ディア様以外の男たちは話題に出されなかった。
「クランドルに着いて俺らはホテルで情報収集活動中、他は外で聞き込みってところだな」
 えっ、クランドル? リリアリスがそう言うとユーシィは意地悪そうに言った。
「ヒー様ってば、ロサプールとクランドルの位置を反対に入力しちゃったんですよー♪」
 ヒュウガは頭を抱えていた――
「まあヒー様ってば、意外とオッチョコチョイなのね、カーワユイ♪」
 それはやめろ――そう思ったヒュウガだが、隣にいるカワユイアイドル美女コンビまでもが声をそろえて 「カーワユイ♪」と言った――だからやめろっての……ヒュウガは悩んでいた。
 そこへリリアリス――
「ん? あれ、てことはヒー様ってば、こんなカワユイ女の子2人の中で男1人だけでいるの!?」
 それに対し、そのカワユイ女の子2人は調子に乗り、ヒー様の両脇にそれぞれ収まると、
「そうなの♪ ヒー様、後でたくさん可愛がってあげるね♪」
 と、ユーシェリアはモジモジとしたかわいらしいしぐさで甘えたような声で言い、
「うふふっ、ヒー様♪ 後でたくさんイイコトをさせてア・ゲ・ル♥」
 と、フラウディアは色気たっぷりな様相に猫なで声で言った。
 リリアリスめ、余計なことを――、 そして2人とも、リリアリスに変に影響されるんじゃない――、 ヒュウガはそう思いながら頭を抱えていた。それに対し、
「うふふっ、やっぱりヒー様も男よね、こんなカワユイ2人だから悩殺されても仕方がないわよねぇ♪」
 違うわい! ヒュウガはすぐさま頭をあげてリリアリスに向かってそう怒鳴った。 その様に3人の女性陣はそれぞれ笑っており、ヒュウガはその状況にイライラしていた。
「ったく、こんなことで連絡してきたのか? だったら切るぞ」
 リリアリスは悪びれた様子で言った。
「あははっ、ごめんごめん、ちょっと揶揄ってみたかっただけだから。 というか、何か情報をつかんだのかなと思って連絡してみただけだからさ。 今、ロサプ……じゃなくて、クランドルにいるのね? 名前直している途中だった?」
 ヒュウガは単に「そうだ」としか答えなかった。