直接ロサピアーナを攻撃するという作戦、かなり無茶苦茶な作戦であるが、
クラウディアス軍としてはそれ以外に道はなかった。
ロサピアーナがクラルンベルを徹底的に攻撃している、民間人を巻き込んで攻撃しているという惨状、
クラウディアスとしては”ネームレス”の力を利用して真正面から殴り込んでいくという方法しかなかった、
それは確かに確実と言えば確実なる方法である。
だが、一つだけ疑問点があった。
「でも、グレイニア経由の意図はなんでしょう?
他にも経由できそうなところがあるというか、それこそわざわざどこかを経由などせず、
ロサピアーナに直接入り込んでもいいような気がするのですが――」
ディスティアはそう聞くとララーナが答えた。
「それは私の都合ですね。実は一つだけ気になっていることがありまして――」
そう言われて一同は目を丸くしていた。
ララーナの都合、当然プリズム族に関することである。
セイバル軍をシェトランドたちと一緒になって攻め込んだ際、
グレイニアという話も出てきたため、この際なので一緒に解決してしまおうということである。
そしてプリズム族――クラフォードの問題もあるため、確実に確かめる必要がありそうだ。
しかしクラフォードのその状態については秘密であるため、その話題で切り出すのは難しそうだ。
ただ――
「まあ、それはそれでいいのではないですか?
グレイニアもロサピアーナの隣国、元々ロサピアーナの一部だっただけあって政治体制も同じ社会主義国。
そしてクラルンベルとはまた全然違うところからの奇襲をかけるということであるとするならば、
グレイニア経由なら完全にノーマークです、
ロサピアーナに直接入る場合と比べると確かにメリットもデメリットも変わりませんが、
彼女らの都合も同時に回収してあげてもいいのではないですか?」
シャナンがそう言うと、ララーナはにっこりとしながら言った。
「ふふっ、シャナン様はお優しい方なのですね、ありがとうございます。
そう言っていただけるのであればとても嬉しいです――」
しかしシャナンは彼女のその表情を見ながら思った、これは何かありそうだなと。
流石はイケメン補正である……って違うか。
「わかった、そこまで言うのならそれでいいだろう。で、誰が行くんだ?
もちろんあんたは行かないんだよな?」
レイビスはそう言うとリリアリスは頷いた。
「そうね、今回は流石にいい子でおとなしくお留守番しているしかないわね。
それにどうせだから宿題を粛々と消化しておくわ。
あと、救援物資とかについても私のほうで検討しておくから任せておいてよ。
でも、どうせなら誰か残ってもらえると嬉しいんだけど――」
それに対してとある御仁が手を挙げた。
「僕に任せてよ。
救援物資とかいう話になると僕が一緒になって考えるのが適任だと思うし、どうだろう?」
それはオリエンネストだった。そんな彼に対してリリアリスは彼をじっと見ながら言った。
「オリ君――そうね、ついていてもらおうかしら。
後はクラウディアスのガードさんたちがいれば十分と思うから、
残りはロサピアーナ攻撃部隊ということでお願いね。」
オリエンネストが頷くとティレックスが話をした。
「残る話は大型兵器への対策だな――」
それについてはリリアリスが言った。
「その対策はとりあえず不要みたいね。
今ちょっと調べたんだけど、あれだけの兵器を作るとなるとやっぱり”ネームレス”クラスの手の者がいないことには作成できないみたいよ。
敵に”ネームレス”クラスの者がいないという保証はないんだけど例の”ネームレス”の出現場所の法則的にロサピアーナはあり得ないからね。
もっとも例のガリアスみたいにロサピアーナ側に加担している可能性はあるかもしれないけれども、
もしそういうのがあったら以前のクラルンベルでの作戦で既に何人かがやられていると思うから、可能性はないと考えるべきよね――」
確かにあの兵器は相当やばい兵器である。
なお、以前のデュロンド沖でのそれはガリアスの手によってエダルニウス軍が作ったものをロサピアーナに譲渡したものだったらしいことが既に判明していた。
そしてヒュウガたちはマダム・ダルジャンで出港した。
その夜、システム・ルームに残されたリリアリスは意識を失っていた――
「リリアさん!」
オリエンネストは慌てて駆け寄るとリリアリスは顔を上げて答えた。
「あら、心配かけてごめんねオリ君、ちょっと寝てた。
やんなきゃいけないことがいろいろとあってさ――」
「ダメだよリリアさん、無理したら元も子もないよ。
とにかく今夜はゆっくりと休んだほうがいいよ――」
そう言われるとリリアリスはにこにこした顔で両手を広げていた。
「えっ、リリアさん!? 一体何を――」
「だって、休んだほうがいいんでしょ? だから部屋に連れてって♪ お姫様抱っこ♪」
リリアリスはオリエンネストに対して無邪気にそう言うと、オリエンネストはドキドキしていた、僕がリリアさんのことを――