リリアリスはシャナンにお姫様抱っこをしてもらっていた。
「お姉様、身体の調子が戻っていないのなら無理なさらなくたって――」
エミーリアは心配そうに言うが、リリアリスは上機嫌で嬉々として話をしていた。
「大丈夫大丈夫♪ 身体の調子が戻っていない今だからこそシャナンパパにお姫様抱っこしてもらえるチャンスじゃないのよ♪」
目的はそこか――シャナンパパは苦笑いしていた。
でも確かにその通りだ! 女性陣は全員そう思っていた。
「シャナンパパの次はディア様だからね♪」
私もするのか――ディスティアも苦笑いしていた。
「ティレックス♪ 後で私にもしてね♪」
ユーシェリアは甘えた声でそう言うとティレックスは呆れながら答えた。
「どさくさに紛れて何言ってんだ――」
そしてクラウディアスのシステム・ルームへとやってきて、
ゆったりとした座り心地のいい椅子の上にリリアリスは座らせてもらった。
その際はディスティアが彼女を抱っこしていた。
「ありがとディア様♪ お礼にあとでチューしてあげるね♥」
そう言われたディスティアは狼狽えていた。
「なっ、何を言っているんですか!?」
それに対してリリアリス――
「はぁ!? キスできて残念ってか!?」
怒り気味にそう言われると――どこかでこんなシチュエーションがあったような、
ディスティアはさらに狼狽えていた。
「ウソウソ冗談♪」
リリアリスはそう言って舌をだして可愛げな感じでそう言いつつ、
「うっふふ、まったく、相変わらずカワイイところがあるじゃないの、ディア様ったら♪」
さらにそう言いながらディスティアの頭をなでていた。
自分は何をされているんだろうか――ディスティアは悩んでいた。
「お遊びはその辺にしておけよ。
とにかく、クラルンベルの問題はまだ終わっていないどころか振り出しに戻っちまってるからな」
ヒュウガが端末を持って部屋に入ると、その後ろからシオラとオリエンネストも一緒に入ってきた。
その2人はリリアリスの様子を見るや否や――
「リリアさん! お目覚めになられたんですね! よかった――」
「リリアさん! よかった、本当によかった!」
各々そう言いながらリリアリスの傍らへと歩み寄ってきた。
「2人とも心配をかけたわね。
でもなんとかこの通りよ、完全復活するにはまだまだほど遠い状況なんだけどね――」
さらにララーナも話に加わると話し合いは始まった。
「あれ? クラフォードはどうしたんだ?」
ヒュウガはそう言うとララーナが言った。
「クラフォードさんは先日の疲れのせいでお話については参加されないそうです。
ですが作戦には参加したいので自分ありきでお話をしてください、とのことです――」
ヒュウガは首を傾げつつも、とにかくそういうことにして話を続けることにした。
「リリア、あなたは見ていましたね、夕べのことを――」
えっ!? リリアリスはどこからともなくララーナのその話が聞こえたので驚いていた。
「うふふっ、うまくいったようですね。
あなた方がシンクロをしていることで意思を共有できるということに感化され、
疑似的に似たようなことができないかと試したのがこの能力です。
所謂、テレパシーというものですね――」
それに対してリリアリスもそれに答えた。
「あら、誘惑魔法の波長?
なるほど、エモノに命令をするときに利用するアレを使って試してみたってワケね。
エモノに命令するときは普通は一方通行になるハズだけど、
双方向に話ができるってことはお母様と私の身体の波長がマッチしているって証かしら、光栄なことね。」
「うふふっ、そういうことね、私も嬉しいわ。それより夕べの件だけど――」
「ええ、見たわ。
けど、残念ながら身体が全く動かなくってね、お母様がいなかったら完全に終わってたわね、私たち。
それでクラフォードは今はお母様の管理下に置いてあるってことでしょ?」
「そういうことですね。
無論、敵の毒香に囚われている状況ということで作戦会議には出ないと言っておりまして、
今は私が寝泊まりしていた部屋でぐっすりと眠っている状態です」
「なるほど――となると、その術者っていうやつが気になるところね――」
すると、ヒュウガはリリアリスに促した。
「おい、どうしたんだ――」
えっ? リリアリスはそう言うとヒュウガが訊いた。
「お前、話聞いてなかったろ――」
それに対してリリアリスは応えた。
「うん、全然。
辛うじて聞いていたのは、別に要請が来ているわけじゃないけど再びクラルンベル解放に行くぞーっていう話と、
クラルンベルやその隣国ポードルへの救援物資をどうするかっていう話、
後はロサピアーナの切り札たる大型破壊兵器に対する対策と長距離ロケットミサイル対策の話ぐらいかしら?」
いや、それで全部だよ――ヒュウガは呆れながらそう言うとリリアリスは改めて言った。
「いや、だから聞いていないって。
大体聞いていなくたってやろうとすることってそれぐらいしか考えられないでしょ?」
確かにやろうとしていることはそのあたりであるが、
それをしかとすべて当てるあたり、そこは流石この女の成せる業と思ったヒュウガである。
それに対してヒュウガは、
「調子が出てきたようだな、少し安心したぞ」
と、言葉通り安心してそう言った。リリアリスは得意げな表情だった。
「だが問題は――向こうの状況が一切わからないことだ。
判明しているのは報道されているぐらいの情報しかなく、
クラウディアス連合軍が参戦しに行ったところでどうなるかわからないっていうのが悩みどころだ――」
それに対してリリアリスが言った。
「それなんだけど、今回の作戦はクラルンベルを解放しにはいかない。」
どういうこと!? 何人かが耳を疑っていると再びテレパシーを。
「そうよね、この際だから今回のクラウディアスの作戦に組み込んだほうがいいわよね、お母様。」
「ええ、本来なら他所の種族が関わる問題ではありませんが、
でもそれが今回の問題解決の糸口となるというのであれば、それならそれで私は深く歓迎いたします。
その際、私も喜んでお手伝いさせていただくわね」
それに対してリリアリスはニヤッとしながら言った。
「ええ、今回はクラルンベルにはいかず、グレイニアを経由して直接ロサピアーナをぶっ飛ばす作戦のほうがいいと思うのよ。」
なんだって!? 直接ロサピアーナを攻撃するのか!? 全員耳を疑った。