その夜、3階の部屋で寝泊まりしていたクラフォードは目を覚ますとベッドから立ち上がった。
傍らにある剣を取り出し、部屋を出た。
そのまま5階まで登りきると、そのままとある扉の前に立ちはだかった。
その部屋はあの4人の女性陣が眠っている部屋だった。
そして――クラフォードはその部屋の扉をゆっくりとあけると――鍵は開いたままだった。
クラフォードはそっと部屋の中に入ると部屋の電気をつけた。
目の前には4人の女性たちが仲良く寝ている、昼間と同じ光景であることを確認した。
このまましばらく目覚めないのか――
するとクラフォードはニヤッとした表情で剣を抜くと、
なんと彼女らめがけて剣を振り下ろそうと頭上高く掲げた!
「死ね!」
そしてクラフォードはそう言いながら剣を正面のリリアリスめがけて切り落とした!
「ぐっ!? 何っ!?」
だが――剣は突如目の前に現れた氷の山に阻まれた!
氷の山を粉砕することはできず、斬撃は思いっきりはじき返された、クラフォードがやろうとしていた行為は失敗した――
「やはりですか、こんなことだろうと思いました。
そう思って彼女らと一緒にいたのは正解だったようです」
と、そこにはララーナの姿があった! 彼女はこの部屋のウォーク・イン・クローゼットから出てきてそう言った。
「なっ、貴様っ!」
ララーナはにっこりとしながら言った。
「すみませんねぇ、せっかくですから隣でお茶でも飲みながら本を読んでいました。
それに結構いろんな服がありましてね、こうして勝手ながらいろいろと着替えさせてもらっています♪」
ララーナはノリノリだった。
服装はリリアリスが着ているようなゆったりとしたワンピース姿だった。
「確かにこのような長いお召し物でも慣れれば結構動きやすいものですね♪」
ララーナは服装をクラフォードに見せながらそう言っていたがクラフォードは――
「黙れ! こうなったら貴様もまとめてぶっ殺してやる!」
明らかに正気ではなかったクラフォード、それもそのハズ――
「そんなところでしょうね、あなたが昼ここに入ってからすぐに感じました。
あなたは何者かに意識を奪われているということが――」
ララーナはクラフォードの攻撃を巧みにかわしながら話をしていた。
さらにクラフォードの背後へ瞬時に回り込むとそのまま彼女が移動した軌道に氷の柱が作り出され、
クラフォードは束縛されていった。
「ですが残念なことに、あなたの意識を奪っているその存在は、どうやら我らが同族の中にいるようです――」
ということはつまりクラフォードは誘惑魔法にかかっており、
その者の言いなりになっているということだった、なんということだ。
「ですが我々の種族を利用し、さらには貶めている黒幕の存在がようやくはっきりしつつあります――」
ララーナはそう言いながら最後にクラフォードの腕を凍らせた――
「セイバル軍の件で追ってきましたが、やはり最終的にはロサピアーナに行きつくということですね」
氷漬けにされて完全に動けなくなって辛そうな顔をしているクラフォードに対してララーナはにっこりとした顔で言った。
「ここは女性の部屋ですよ、こんな夜中に忍び込むだなんてクラフォードさんもお好きな方なんですね♪
そういうことでしたらこのララーナ、あなたのために素敵な夜をお届けしますわ――」
そして翌日――クラフォードは目が覚めると、なんと隣にはララーナが添い寝をしていた!
「うふふっ、クラフォード様、おはようございます♪ 夕べはよく眠れましたか?」
クラフォードは慌てて飛び起きたが急に頭痛が――
「なっ、なんだこれは――俺は何をしていたんだ――」
「先日のことは覚えておりますか?」
「ああ、覚えている。夜中に起きてあの部屋で剣を振り上げた、そのことまで鮮明に覚えている……。
あの女を生かしておくと危険だ、だからやらなければならない――確かにそう思ったんだ。
でも、どうしてそう考えたのか、リリアさんたちをどうして殺さないといけないのか、
彼女らにはお世話になっているし大切な仲間だ、だからどうして、そう考えたのかが全く分からないんだ――」
ララーナは考えながら言った。
「やはりですか、あなたはかなり強力な誘惑魔法を長時間に渡ってかけられています。
私がこれまで見た中でもかなり強力な部類です。
術をかけられたときは身も心も完全に術者に支配されていることが容易に想像が付きます――」
なんだって!? クラフォードは狼狽えていた。
「夕べの出来事ですが他の方にはわからないようにしてあります。
私とあなただけの秘密ということですね。
しかし長時間強力な誘惑魔法を受け続けたことであなたの心の奥深くまで術者の色香が入り込んでいます。
つまり、あなたは術者の虜となっている状態であることには変わらないということです。
そこまであなたの心を縛ろうとする行為、私は見逃すことなどできませんね――」
ララーナはため息をつきつつそう言った。
クラフォードは頭を抱えながら事態は深刻な状況であることを改めて悟っていた――
そして5階の例の部屋ではとある異変が起きていた、それは――
「えっ、えっ、えっ!? まさか――」
エミーリアは部屋の様子を見ながらそう言っていた。
夕べの一件はすべて片付いているためまったく問題ないが、異変はそっちではなかった。
エミーリアはベッドの傍らにやってくると――
「おっ、お姉様!」
なんとリリアリスの目が見開いていた!
「あら、エミーリアじゃあないの、おはよ。どうかした?」
お姉様が目を覚ました! エミーリアはそう言って部屋を飛び出そうとしたがリリアリスは彼女を引き留めた。
「何? どうしたのお姉様――」
彼女は心配そうに言うとリリアリスは――
「いや、実は動けなくてさ、ちょっと手を貸してくれない?」
そう言われ、彼女はレミーネアとフラウディア、
そしてディスティアとシャナンを呼び出し、リリアリスを3人の女性の中から発掘した。
リリアリスがいたスペースを詰めてフロレンティーナを置きなおし、
アリエーラとフロレンティーナが抱き合って寝ているような状態に仕上げた。