レーザー・キャノンはロサピアーナ艦へと見事に跳ね返るとものすごい勢いで大爆発を起こした! だが――
「でっかい衝撃波が来る――早くここから逃げないと……」
リリアリスは何とか立ち上がったが彼女はもはや虫の息。
それを察してヒュウガは飛び出してきたが一度制御室へと戻っていった。
「ユーシィ! エクステンショナブルに転換したエネルギーと圧力制御を元に戻してくれ!
船を動かさないと大変なことに――」
しかし船は動いていた、それもそのハズ――
「リリアリス! 無茶をするな! 死ぬぞお前!」
なんとリリアリスは自分の魔力をエネルギー・ユニットに送り込みながら操作していた。
だがそんなことをしたら――
「お姉様! 待って、今、動力をエンジンに送るから!」
ユーシェリアも力いっぱい振り絞った後だったが、とにかく、正確に端末を操作していた。
「これでよし、次は圧力を――」
ユーシェリアはその場で項垂れながら呼吸していた。
「操縦は俺に――」
ヒュウガはそう言いながらリリアリスに接近するといきなり吹っ飛ばされた!
「うわっ!」
リリアリスの操作のせいである、
彼女は自分のエネルギーを送るのはやめたがとにかく船をターンし、そのまま南西方面へと急いで船を動かしていた。
「落ちる!」
ヒュウガの身体はポールに手をつかんだまま完全に宙に浮いていた、エアッド・ドライビング・モードである。
スピードは出ているが、
「大丈夫、落ちないぐらいのスピードしか出てないから。
というかエネルギーの使い過ぎでそんなにスピードが出せないわね――」
「俺はこのまま落ちるぞ!」
「そのままつかまっていれば大丈夫――」
それはそうなんだがそういう問題じゃあ――ヒュウガはそう思った。
そのままマダム・ダルジャンは飛んでいるが、そのうち衝撃波が迫ってきた!
「来たぞ! 巻き込まれる!」
ヒュウガはそう言うと、リリアリスはいろいろと操作をしていた。そして――
「ん、この力は――」
何かに気が付いた、それは――
「衝撃波のエネルギーを吸収しているのか!?」
そう、リリアリスお得意のマナ・エネルギー吸収技、
”エンチャント・ドロー”をエクステンショナブルに展開していたのである。
「何気にこれを待っていたのよ。
でも――私の能力を回復するには時間がかかるわね――」
リリアリスはその場で倒れこんでいた。
しかしその手は舵を握ったまま離さない――
「すげー執念……」
ヒュウガはなんとか操舵室へと昇りつつリリアリスの様を見てそう思っていた。
するとそこへ――
「リリアさん大丈夫ですか!?」
なんと操舵室の背後にある制御室からディスティアが登坂してきた。
ロッククライミングさながらの芸当である。
「マジか!? 2人は大丈夫か!?」
ヒュウガは驚きながら聞くと、ディスティアは登り切ってから言った。
「ええ、ティレックスさんもユーシェリアさんも大丈夫、心配のない所にいます。
それよりもリリアさん、大丈夫です!?」
しかしリリアリスとしてはそれよりも――
「私のことはいいから、その身体能力を生かして前の3人の様子を見てきてくれない?
投げ出された様子はないけど心配だわ――」
確かにそれもそうだった。
そう言われてディスティアは意を決して再び登頂を始めていた。
「なんかすごいものを見たな。
あれがシェトランド人なのか、それとも万人斬りと呼ばれるやつの所業なのか――」
ヒュウガは悩んでいた。
それから30秒ほどが経過して衝撃波も収まった。
マダム・ダルジャンも着水し海の上で止まっていた。
船首側の3人の女性のもとには飛行している間にディスティアがやってきており、
何とか無事を確認しつつ船から放り出されないようにと必死になっていろいろと頑張っていた後だった。
着水し、3人が改めて無事なことを確認するとディスティアは安心し、とりあえずほっとしていた。
制御室の2人はただひたすら抱き合って無事を祈っているだけだったが、
着水したことがわかるとこちらも安心し、改めてお互い抱き合っていた。
そして操舵室――
「リリアリス、大丈夫か――」
ヒュウガは彼女にそう訊ねた。
だが彼女は舵を握ったまま微動だにしなかった。
「リリアリス、全部終わったぞ。
敵艦は木端微塵で跡形もないがデュロンドにはちょっとばかり強い突風にあおられたぐらいでとりあえず大丈夫らしいぞ」
それに対してリリアリスは虫の息のまま、か細い声で言った。
「モニタ出して――」
しかし、
「船のユニットどころか通信設備の類のエネルギーまで使い切ってしまったから無理だぞ。
着水と同時に船の動力もすっからかん、今はどうにもならんな。
まあ、とにかくいいから今はしっかり休んどけ。
後は俺らで何とかするからもう無理するな」
そう言われたリリアリス、
「ふふっ、わかったわ、そういうことならお言葉に甘えることにするわね――」
にっこりとした表情でそう言うと手から舵を離し、そのままその場で倒れこんだ。
ヒュウガはリリアリスを抱きかかえ上げながら言った。
「まったく、相変わらず手のかかる姉様だな」
あの後マダム・ダルジャンのエネルギーが復旧するよりも前にティルアからの応援が駆け付け、
マダム・ダルジャンはティルアの港へと牽引された。
だが、4人の女性陣はそのまま目覚めることなく、先んじて復旧されたリビング・ルーム・ユニット内でゆっくりとお休みしていた。
「どうなっているんですか、この船――燃料は何ですか?」
船を見ているスタッフにそう言われてヒュウガは答えた。
「燃料はエネルギーになるものだったらなんでもいい、が答えだ。
つまりは化石燃料も可だ。突っ込んでもらえるんだったらここに入れてくれ」
と、リサイクル・ユニットのところに案内してそう言った。
「大事な大事なクラウディアスさんの特別執行官様の船ですからねぇ、喜んで補給させていただきますよ。
これまでずっと断られていたのですがようやくそれがかないました!」
そう言われたヒュウガ、不思議そうに言った。
「ずっと断っていたって――今まで何を入れていたんだ?
まさか自分の魔力だけで賄っていたわけじゃあないだろうな……」
そしてヒュウガはそのままマダム・ダルジャンをメンテナンスしながら言った。
「金とるんじゃなければ入れてくれ」
しかし――
「大丈夫ですよ、請求はティルア軍になっていますから――」
ヒュウガは再び止めた。
「それが断っていた一番の原因だな、ティルア軍の計らいなんだろうが……。
だったらいい、持ち主の意思を尊重して今回も遠慮しておく」
スタッフはしょんぼりしていた。
「とにかく他の燃料の補給方法を探しておかないと。
まあ一晩経てばクラウディアスに帰れるぐらいにはなっているから、それから考えるか」
そもそもクリーンエネルギーで動いているエコシップである。