キャノン砲は魔力壁にものすごい勢いで衝突、キャノン砲自身のものすごい轟音が周囲に響き渡る!
「ぐっ!? おっ、重い――」
ティレックスはレバーがいきなり押し戻されたような感じでびっくりした。
「なっ、なんですかこれは――つまりこれが彼女らの魔力とこの船のパワー、そしてレーザー・キャノンの圧力ということですかっ……」
それと同時に制御室内もけたたましいアラートがあちこちから発生していた。
「わぁ! 滅茶苦茶だよう!」
ユーシェリアは端末と制御盤のパネルを操作しながら物事をこなしていた。
「予想以上の負荷だ! ユーシィ! 圧力弁エラーの対処を優先してくれ! 放置すると後ろの2人が持たないぞ!」
ヒュウガが慌てながらそう言うと自分はまた別の端末を持ちながら制御パネルに接続していた。
「わぁん! ティレックス! ディア様! 頑張って!」
ユーシェリアは必死になってコマンドを打ち続けながらそう叫んでいた。
一方の4人、ものすごい負荷に対して一言も発することなくひたすら集中していた。
だが、4人ともとてもつらそうにしていた。
キャノン砲は4人の魔力壁を貫こうとずっとそのままデュロンド方面への推進力を維持していた。
「くっそ、これじゃあきりがないな、それどころか船がまず持たない――」
ヒュウガは何とか対処しているが焦りを感じていた。
「なんかエラーの数が増えてきたよ! それにずっと圧力弁エラー出っぱなしだし! こんなんじゃあほかのエラーの対処は無理だよ!」
そう言われたヒュウガ、少し考えると意を決してリリアリスのもとに行って話をした。
「このままじゃあデュロンドに直撃以前に船が持たない! だからドロップは諦めてデフレクトするからな!」
そしてヒュウガは戻るとユーシェリアに何かを指示し始めていた。
話を訊いていたリリアリスはなにやらため息をついたような面持ちのまま顔をゆがませていた――
レーザー・キャノンが魔力壁と衝突し始めてから2分、完全に押し戻されていたティレックスとディスティアだが――
「ユーシィ、後は頼むな。エラーはこの際無視でいい。
とにかく徹底的にエネルギーを送ってくれ、それしかない!」
そう言われたユーシェリアは「ラジャー!」と言いながら事に当たっていた。そしてヒュウガは――
「2人とも大丈夫かっ――」
ディスティアとティレックスに加わってレバーの操作に加わっていた。
「このレバーびくともしないんですよ……」
ディスティアがそう言うとヒュウガが話をした。
「大丈夫だ、勝手だがモード・チェンジしたからこれからだいぶ楽になるぞ……!
とにかく、こいつを押し戻さないと話にならないから――いくぞ、せーの……っ!」
3人は力を振り絞り、勢いをつけてレバーを押し返した! すると――
「うわわっ!? なんだ!?」
急にレバーが緩くなり、あっという間に押し込んでしまった!
「いいからこのまま抑えてろ――」
ヒュウガはそう言いながら2人に促すと、ユーシェリアから――
「ヒュウガさん! 圧力エラーが死にました!」
なんと! システムが1つロストしてしまったようだった。しかし――
「ああ、想定内だ。今しがたこっちの手応えのほうも死んだしな。
圧力制御がぶっ壊れたせいで船のエネルギーも暴走するだろうが、
エネルギーをエクステンショナブルに回してくれていればその心配もない。
ユーシィもその作業が終わったらこっちを手伝ってくれ――」
そう言われたユーシェリアはティレックスの隣に行ってレバーをつかもうとした、すると――
「ユーシィは俺の背中を押し込んでくれ、そのほうがいい――」
ティレックスにそう言われると「わかった!」と言って頷いた。
「私もそうしてもらえると助かります。ヒュウガさん、力仕事は得意ではないでしょう?」
ディスティアにそう言われたヒュウガは頭を掻きながら言われたとおりにした。
「でも、制御がぶっ壊れてレバーを押す意味ってあるのか?」
ティレックスがそう言うとヒュウガは答えた。
「自動修復機能があるからな、
アラートシステムのほうは手動レバーの場合は邪魔になるから修復しないようにしたが圧力のほうだけはそのうち復旧する」
なるほど、抜かりはないというわけか。
魔力壁で受け止められているレーザー・キャノン、その下でリリアリスは考えていた。
「ドロップは諦めてデフレクト……確かにこのままだとこっちの身が危ないわね。
それだけならまだしも、デュロンドにこいつが直撃することは確実、
つまりは――私らがやっている行為そのものが無意味ってわけか――」
するとそれに対してアリエーラが考えた。
「ドロップは諦めてデフレクト? ドロップということは……捨てるのは諦めてってことですか?
デフレクトというのは方向をそらすつもりでしょうか?
その場合は他の場所に被害が出るような気がしますが――」
「あら、アリ――そっか、共有しているから聞いていたのね。
そう、ドロップは単にこいつをかき消してしまいましょうってこと。
でも予想以上のエネルギー持っているみたいだから多分それはうまくいかないわね。
で、デフレクトなんだけど――これだけのエネルギーを持っているからそらすのも容易ではないわ。
だから私たちがたどる道はただ一つ、それは――」
「それは――そうですね、それしかないと思います。
それにこんなものを打ち込んでくる兵器が目の前にありますから、
もし次が来るという場合はその対処が難しくなるだけだと思います、ですから――」
リリアリスはそう言われ……たわけではないが、そのアリエーラの意思に対して考えた。
「そうね、この際だからそれもやむなしってところか。
そうと決まったらアリ、そっちでやってくれる?」
「はい! 任せてください!」
すると魔力壁の形状が変わった! 先ほどまで魔力壁はただの一枚壁のような形状だったが、
それが円形に変化していった!
「よーし、私の魔力もそっちに合わせていくよ!
他2人で壁の基礎を作ってくれている状況だから私たちだけデフレクト側に魔法を展開すればいいわよね?」
「ええ、2人に対して2人で構成するのでバランスもとれていて原理的にはそれでいいと思います。あとは――」
「あとは――このままやっていくだけね!」
するとレーザー・キャノンはさらに深く魔力壁へと突き刺さっていった! それと同時に――
「圧力が復旧しました! ヒュウガさんお願いします!」
ディスティアにそう言われたヒュウガ、ディスティアの背中を自分の背中を使って思いっきり押し込んでいた。
「ティレックス、頑張れ――」
「このぉっ!」
ティレックスとユーシェリアも同じような形でレバーを押し込んでいた――
制御室内はけたたましいアラートを立てている中、4人がかりでレバーに奮闘していた。
そして――レーザー・キャノンはさらに魔力壁を貫こうと前進していた!
だがそれは予定変更のデフレクト作戦としては影響のないことであった、
それもそのハズ魔力壁は4人の頭上に展開されているが、壁は非常にしなっていた。
それはまさしく、ちょうどトランポリンの真ん中に物体が落ちてきている状態であり、
トランポリンは今にもその物体を押し返そうとしている――つまり、これはデフレクトではなく――
「とりあえず魔力4人組も予定変更が伝わったみたいだな。
打ってきたやつには悪いがこいつは打ってきたやつらの責任ということでその代償を払ってもらうことにするぞ。
そう、これはデフレクトではなくリフレクト……跳ね返しだ!」
徐々にレーザー・キャノンの推進力は衰えていくと、
今度はその推進力は180度反転しロサピアーナ艦側めがけて放たれた!
だが、それと同時に魔力4人組は力尽き、その場で倒れこんだ――
マダム・ダルジャンが跳ね返したレーザー・キャノンはそのままロサピアーナ艦に吸い込まれるかのように向かうと、その船に被弾、
その後ものすごい勢いで大爆発を起こした!